スバルの稼ぎ頭「XV」の新型、コンパクトSUVの競合車に勝る点は?

スバルのラインナップにあって、すっかり稼ぎ頭に成長したコンパクトSUVのXV。昨年後半に、マイナーチェンジが施されました。いったいどこがどう変わったのでしょうか? さっそく新型で街に乗り出してみました。


ハイブリッドとガソリンの2本立て

最初にお断りしておきますが、スバルのマイナーチェンジです。見た目に変化はあまりないのです。表の外観に大きく手を加えることなどスバルの頭の中にはないのでしょうし、それが災いすることさえあると、考えているのでしょうか。スバルのマイナーチェンジは中身の充実がこれまでの定石といっていいでしょう。

ヘッドライトやリアランプに少し変更があるので外観では変わったことが見分けづらいかもしれません

そんなスバルの、地味だけど堅実な姿勢が世界中に“スバリスト”というコアなファンを生み出しているのかもしれません。

そこで今回の変更点ですが、ざっくり言って2リットルの直噴ガソリンエンジンを搭載するモデルがラインナップから消え、1.6リットルのガソリンエンジンモデルと、そして2018年に追加された2リットルハイブリッドの「e-BOXER」の2タイプへと車種整理がされました。

この辺はマーケティング上の都合ですから、なんとも言えませんが、ガソリンエンジン派の人にはパワフルなモデルが選べなくなり、少しばかり残念なことだと思います。でも1.6リットルモデル、これがけっこう軽快感があり、さらにエコノミーなので、それほど悲観的にならなくても……。

このラインナップの見直しの他にも、というか最も大切な中身の改良点ですが、スバルご自慢の運転支援装置「アイサイト・ツーリングアシスト」が全車標準装備となりました。これはとても重要なことで、安全においては価格によって差があってはならない、というのが原則論です。

最新の運転支援システム、アイサイトが標準です

プレミアムと呼ばれるブランドなら、価格に吸収できますが、やはり200~300万円台の車では高価な装備を廉価なモデルにまで装備することは現実的になかなか難しい。それを今回、XVではしっかりと装備してくれたのです。

そして次は4WDシステムに悪路走行などで威力を発揮するX-MODEを採用していたのですが、今回の変更によって1モードのみだったものから、雪道や砂利道などタイヤが空転しやすい状況で有効な「SNOW・DIRT」モード、そしてさらに厳しい深雪やぬかるみ、言わばタイヤが直径の5分の1ぐらいまで埋まってしまうような状況で役立つ「DEEP SNOW・MUD」モードを選ぶことができるようなったのです。言ってみれば、よりオフロード性能を高めたということになります。日常的には雪国などでない限り、あまりお目にかかれない状況ですが、より心強い車になったことだけは確かです。

4WDが2モード選べるようになって、より厳しい条件でも走れるようになりました。XVの最低地上高は、200mmです

この他にもアクセスキー対応の運転シートポジションメモリー機能の採用や、前後のライト類の小変更など細かな変更点はあります。では、試乗チェックに移りましょう。

上質な乗り心地に磨きがかかった

走り出してまず感じるのは、相変わらずの走りの上質感です。4輪でしっかりと路面を捉えながら、どっしりとした安定感はなんなんでしょうか? 新しい世代のプラットフォームのお陰、専用にチューニングされたサスペンションのお陰、そして4WDのお陰、そのすべてが混ざり合って、なんとも穏やかでしなやかで、まったくドタバタしない乗り心地を実現しているのです。

この辺の走りの味わい、安定の信頼感も老舗の味わいとでも言いますか、なにも不安になる部分がないのです。実は試乗車が季節柄スタッドレスを装着していたこともあるのでしょうが、路面からの突き上げなどはかなりソフトに感じます。このマイナーチェンジモデルが登場した直後にも試乗しているのですが、その時はサマータイヤでしたが、措置の時よりさらに衝撃が柔らかく感じました。

シートの座り心地やホールド性は良好。居住性もいいです

何よりもサスペンションのチューニングがこのXVにピッタリです。上下動のストロークがゆとりを持って確保されていますから、うねりなどもフワ~ッという感じでクリアしていってくれます。

もちろんコーナリングでもドタバタした感じはありません。一度、ステアリングをコーナーに合わせて切り込んでいけば、素直にボディが傾き、外側のタイヤでコーナーのRをなぞるようにうねりや衝撃をいなしながら曲がっていきます。ぜんぜん、ドタバタしたところがないんです。正直に言えば、もう1台の大黒柱的存在、インプレッサよりも個人的にはこちらの乗り心地の方が好きです。

そしてこの上質感のもう一つの要因と言えばスバルのハイブリッドシステム、e-BOXERの仕上げの良さだと思います。とにかく走り出しからモーターのアシストを得ながらスムーズな制御によって、スルスルッと加速していくのです。

そのフィーリングは無理矢理感もなければ、ましてや息切れ感とか、そういう感じがほとんどなく、レスポンスよく、しかしジェントリーに速度を上げていく、ハイブリッドの制御は何ともいい味付けだと感じます。確かにハイブリッドシステムを搭載することで150㎏ほど重くなっているのですが、それがいい方向に作用している部分だと思います。

燃費とバランスがいい

高速道路でツーリングアシスト機能も試しました。XVに搭載されているのは0km/hから、日本では違法ですが135km/hまでの間で、つまり完全停止から高速まで制御してくれます。おまけにレーンキープもより安定感のある制御をしてくれますから走行車線の中央をしっかりとキープしながら走れるのです。さすがに運転支援機能においてはパイオニア的存在だけに、なんとも安心できる機能といえます。

こうして市街地から首都高速に乗り、さらに高速を走り、ちょっぴりスポーティな走りを繰り返しながら走行した距離が150kmほど。そこで燃費が15.4km/リットル。さてこれはどうなんでしょうか? カタログ値の15.0km/リットル(ELTCモード)はちゃんとクリアしているのだから上出来なのですが、ライバルのSUVのハイブリッドと比較すると、燃費だけを見ればちょっぴり物足りないかもしれない。この点はやっぱり車重の重さが響いたのでしょうか?

当然、なにがなんでも燃費最優先という方にはトヨタのCH-RやホンダのCR-Vのハイブリッドモデル、さらに2WDモデルなどを選べばいいので、無理強いはしません。ですが、最先端の運転支援や、なんと言っても上質な走りの味わいと、4WDによる行動範囲の広がりを求めるなら、一度乗り比べてみてもいいと思います。とはいってもスバリストたちは、まったく動じずに、走りの質感とか走りの軽快さとかスポーティ感を取るでしょうね。走りにおいては、XVにアドバンテージがあると思いますから、それも頷けます。

それでは皆さんはどんな選択になるのでしょうか? 走りの良さと燃費のバランスがとれているクルマだと思います。

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