節分の食文化

 バレンタインデーにチョコを贈るといった、食品・流通業界が仕掛けて定着した食関連のイベントは数多い。ここ20年ぐらいで広まったものと言えば、2月3日の節分に食す恵方巻きがある▲恵方(幸運を招く方角)を向き、無言で巻きずしを1本丸ごと食べると願い事がかなう-。大阪の一部に伝わる風習だったとされるが、大手コンビニやスーパーが大々的に売り出したことで全国区の行事となった▲ところが業者側の大量生産・発注が加速し、店によっては売れ残りが大量に発生し廃棄する事態に。食べ物が無駄に捨てられるのを減らす食品ロス削減推進法が昨年10月に施行される契機ともなった▲恵方巻きは、験担ぎが好きな日本人の消費者心理を刺激して人気となったが、よその風習が広まる陰で、地域の食文化が廃れていないかとも心配する▲長崎市では節分に「カナガシラ」という赤い魚の煮付けと「紅(あか)大根」のなますを食べる風習がある。赤鬼に見立てた食品を食べて「鬼退治」、厄払いをするというわけだ。子どもたちに話して聞かせるには、なかなか面白い話ではないだろうか▲一年に一度の機会である。恵方巻きもあっていいが、その横に大量生産ではない、手作りの伝統料理が並べられると、節分の食卓はよりにぎやかなものとなるにちがいない。(久)

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