新幹線長崎ルート 「見守るだけでいいのか」 国と佐賀県、協議入り見通せず 新鳥栖-武雄温泉

意見書案提出を決めた県議会特別委員会=県庁

 九州新幹線長崎ルート未着工区間の新鳥栖-武雄温泉(佐賀県)の整備の在り方を巡る国土交通省と佐賀県の協議入りが見通せない。国交省はフル規格前提での話し合いに反発する同県に譲歩する形で、5案での協議を提案。だが、山口祥義知事は国の姿勢を確認する必要があるとして、国が求めた1月中の協議入りは実現しなかった。全線フル規格化を求めている長崎県の県議会からは「見守るだけでいいのか」と事態打開へ行動を求める声も高まっている。

 「どういう展開になるのかますます不透明になってきた」。1月22日の県議会九州新幹線西九州ルート・交通対策特別委員会。国交省がその6日前、与党検討委が「適当」としたフル規格だけでなく、ミニ新幹線などほかの4方式も含めて協議することを佐賀県に提案したことに、委員からは懸念の声が相次いだ。
 議会内にはこれまで佐賀県を刺激しない方がいいとの空気もあったが、「長崎県も言うべきことは言う。しっかりものを申す時期に来ている」。委員の一人はこう強調。特別委は、未着工区間をフル規格で早期整備するよう求める意見書案を今月開会予定の定例県議会に提出することを決めた。
 もっとも、先が見通せないのは国も同じ。国の提案に対し、佐賀県側は慎重な姿勢を崩していない。「協議に入る前の段階で時間を要するとは考えていなかった」。赤羽一嘉国交相は24日の記者会見で戸惑いを口にした。
 新幹線開通を見据えた町づくりを進める沿線自治体も気をもんでいる。大村市の園田裕史市長は「佐賀県がどういうゴールを求めているのか早急に出してほしい。はっきりしないと解決策の協議に入っていけない」と佐賀県側の対応に不満をにじませ、「長崎市や諫早市と連携し、県とも一緒になって佐賀県に要望していくことが必要だ」と訴える。
 こうした声の一方で、昨年まで佐賀県経済界にフル規格実現を働き掛けてきた長崎県の経済団体は慎重な動きを見せる。長崎商工会議所の宮脇雅俊会頭は「佐賀経済界の方々はフル規格の必要性を理解していただいている。ただ、今は動けない状況。国や与党も何とか同じ方向に進めようと動いている中、佐賀県をあまり刺激するのはよくない」と事態を見守る構えだ。
 機運醸成などを目的に、県内経済団体でつくる整備推進協議会は昨年末までに県民大会を開く方向で調整していたが、延期することにした。ある関係者は「全線フル以外の趣旨なら佐賀県も反対しないはず。フォーラムや講演会など別の形で(開催を)実現できれば」と話す。
 新鳥栖-武雄温泉の整備を巡っては、佐賀県内のフル規格推進派による意見交換会が1月、佐賀市内で開かれ、国会議員や沿線自治体首長、市民ら約130人が参加した。「佐賀県(のフル規格推進派)も活発に動いてきた」。意見書案提出を決めた県議会特別委の八江利春委員長は「積極的にやれることと、やれないことを見極め、長崎からも行動を起こすべきだ」と力を込める。

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