裁判所事務官の倍率や試験科目・ボーダーは?難関と言われる訳

裁判所で司法に関わる事務作業を行う「裁判所事務官」ですが、受験資格は高卒から大卒、院卒までと、さまざまな学歴の方がチャレンジすることができます。裁判所事務官になるためには採用試験に合格する必要がありますが、倍率が高く難関試験の部類に入ります。今回は裁判所事務官の倍率や試験科目などについて紹介します。

裁判所事務官の試験倍率は?

裁判所事務官は裁判が円滑に進むようサポートする仕事ですが、裁判所事務官の採用試験は受験者数が多く、さらに試験の難易度が高いため、難関といわれています。採用試験は総合職試験と一般職試験の2つに分かれており、それぞれ一次試験と二次試験が、総合職試験の場合は三次試験も実施されます。

採用試験は院卒区分・大卒区分・高卒区分などに分かれていることから、試験倍率もそれぞれ異なります。ここでは、総合職試験の院卒者区分と大卒程度区分、一般職試験の大卒程度区分と高卒者区分の試験倍率について紹介します。

総合職試験(院卒者区分)

総合職試験は、政策の企画立案に関わる能力があるかを重視しています。一般職試験では主に事務処理能力を確かめますが、総合職試験は試験内容も専門性が高く、難易度も一般職試験よりも高くなっています。総合職試験の院卒区分は、30歳未満で大学院修了、もしくは修了見込みの方が受験できる試験です。

2019年の試験結果によると、申込者数は149名で、第一次試験の合格者は75名、第二次試験の合格者は24名、第三次試験後の最終的な合格者は10名という結果となっています。倍率は約10倍と、難易度が高いことが分かります。

参考

2019年度実施結果 総合職試験(裁判所事務官,院卒者区分)|裁判所

総合職試験(大卒程度区分)

大卒程度区分は、21歳以上30歳未満の方や、21歳未満でも大学卒業及び卒業見込みの方が受験できる試験です。2019年の大卒程度区分の試験結果は、申込者数が611名、第一次試験の合格者が145名、第二次試験の合格者が16名、最終的な合格者は7名となっています。倍率は53.7倍となっており、難易度が非常に高いことが分かります。

勤務地は札幌から福岡まで、全国8ヶ所の高等裁判所の管轄区域となりますが、東京高等裁判所の申込者数が最も多い262名となっており、試験倍率は51倍という結果となりました。一方で、一番高い倍率となったのが大阪高等裁判所で、申込者数が99名に対し、最終的に合格したのは1名のみ、倍率は62倍となっています。仙台、広島、高松、福岡では最終合格者は出ませんでした。勤務地によっても倍率が異なることを覚えておきましょう。

参考

2019年度実施結果 総合職試験(裁判所事務官,大卒程度区分)|裁判所

一般職試験(大卒程度区分)

総務・会計・人事などの事務作業を担当する一般職試験ですが、2019年度の結果によると、大卒程度区分の申込者数は12,202名、第一次試験合格者は3,732名、第二次試験後の最終合格者数は1,255名、倍率は7.1倍という結果となっています。申込者数は総合職試験の大卒程度区分よりも2倍以上となっており、多くの方が受験しています。

参考

2019年度実施結果 一般職試験(裁判所事務官,大卒程度区分)|裁判所

一般職試験(高卒者区分)

高卒者区分では、高等学校卒業見込み及び卒業後2年以内の方が受験することができます。学歴が高卒でも裁判所事務官として働くことができるため、申込者数も多い傾向があります。2019年度の結果によると、申込者数は4,020名、第一次試験の合格者は352名、第二次試験後の最終合格者数は122名、倍率は25.3倍となっています。

試験の難易度は高い傾向にありますが、裁判所では成績主義・能力主義に基づいて人事管理がされているといい、採用試験の種類にかかわらず能力や勤務成績では昇進の道が開かれます。高卒者区分では、「学歴の差を克服したい」という方にとってもチャレンジしがいがあるのではないでしょうか。

参考

平成30年度実施結果 一般職試験(裁判所事務官,高卒者区分)|裁判所

試験科目について

裁判所事務官の試験科目ですが、総合職試験・一般職試験によって内容が異なり、さらに区分によっても違いがあるようです。過去の試験問題については公式ホームページでも公開されているため、試験対策として役立てるのがいいでしょう。ここでは、一次試験と二次試験の主な試験科目や内容について詳しく紹介します。

一次試験

一次試験では、多肢選択式の基礎能力試験と専門試験が行われます。高卒区分では専門試験はなく、代わりに作文が試験内容に含まれています。専門試験では、法の知識や判例を基にした問題が多いため、あらかじめ過去問に目を通しながら試験の出題傾向を把握するのがいいでしょう。

問題の例としては、過去に以下のものが出題されました。

思想・良心の自由に関する次のア~ウの記述の正誤の組合せとして最も妥当なものはどれか(争いのあるときは,判例の見解による。)。

(引用元:2019年度裁判所職員採用総合職試験(裁判所事務官)・一般職試験(大卒程度区分)第1次試験専門試験,p1|裁判所)

二次試験

二次試験では、区分によって試験内容が異なります。院卒者区分では記述式の政策論文試験、憲法・民法・刑法・訴訟法などの試験科目が出題されています。また、大卒程度区分では憲法などの専門試験と論文試験、高卒者区分では専門試験はなく作文試験があります。論文試験では、「良い職場とは何か?それを実現するための方法は?」といった個人の論理的思考や価値観、知識を問われる内容となっているため、普段から情報収集する必要があるでしょう。

作文試験では「人と接する上で大切にすること」など、個人の価値観や論理について問う内容が出題されています。論文や作文は文章を書く最低限のスキルが求められるため、あらかじめ文章の書き方や構成の立て方について考えておくといいでしょう。

各科目のボーダーは?

前述した通り、裁判所事務官の試験は倍率が高く、難易度が非常に高い試験となっています。まずは1次試験に合格するためにも、筆記試験では高いスコアを獲得することが求められます。例えば、院卒者区分の第一次試験の平均点は、基礎能力試験が30点中16.37点、専門試験が30点中24.35点となっています。択一試験については、裁判所が公表している「下限の得点」よりも下回る場合は不合格となってしまうため、注意が必要です。半数以下、すなわち15点以下のスコアの場合は、不合格となる可能性があるため、一次試験では平均点以上を取ることが必須となるでしょう。

過去の試験の下限の得点は公開されており、院卒者区分は12~14点、大卒程度区分は総合職、一般職ともに12~15点、高卒者区分は45点中約19~20点と、5割以下は不合格となる可能性が大きいことが分かります。

参考

2019年度実施結果 総合職試験(裁判所事務官,院卒者区分)|裁判所

2019年度実施結果 総合職試験(裁判所事務官,大卒程度区分)|裁判所

2019年度実施結果 一般職試験(裁判所事務官,大卒程度区分)|裁判所

平成30年度実施結果 一般職試験(裁判所事務官,高卒者区分)|裁判所

裁判所事務官の試験は難関!早めの試験対策が必要

裁判所事務官として働きたいという方は、難関試験といわれている採用試験に合格する必要があります。裁判所事務官の倍率は約7~53倍と、区分や受ける試験によっては非常に高いレベルが求められます。試験対策としては過去問の復習をする方が多いといわれているため、これから採用試験を検討している方は、まずは公式ホームページの情報を基に試験対策について考えるのがいいでしょう。

参考

試験の実施結果|裁判所

受験案内|裁判所

裁判所事務官採用試験の難易度・合格率・倍率 | 裁判所事務官の仕事・なり方・給料・資格を紹介 | Career Garden

裁判所事務官(一般職)のボーダーについて知っておこう|ASK公務員

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