裁判所事務官とは?仕事内容や勤務先、キャリアアップの方法を紹介

国の秩序を守る裁判所では、主に裁判官・裁判所書記官・裁判所事務官が働いています。裁判所事務官は、裁判所運営に必要なさまざまな事務作業を担う職種であり、裁判を円滑に進め、裁判所で働く人をサポートすることが主な役割となります。今回は裁判所事務官の仕事内容や主な勤務先、キャリアアップの方法について紹介します。

裁判所事務官の主な仕事内容について

「将来は裁判所で働きたい」と考える方の中には、裁判所事務官になりたいという方もいるのではないでしょうか。法廷での審理がスムーズに進むように手助けすることが裁判所事務官の主な仕事内容となりますが、裁判所は最高裁判所と下級裁判所に分かれており、仕事内容においては主に裁判部門と司法行政部門に分けられています。

裁判部門に配属された場合と司法行政部門に配属された場合とでは、裁判所事務官の仕事内容は異なります。裁判部門では裁判所書記官の下で裁判事務を担当し、司法行政部門に配属された場合は総務課、会計課、資料課などで司法行政事務全般を担当します。裁判所事務官の主な仕事内容について、詳しく紹介します。

書記官の補助業務

裁判部門に配属された場合、裁判所事務官は裁判所書記官の補助業務を行います。裁判部門はその名の通り裁判を取り仕切る部署のことで、民事部・刑事部・家事部・少年部などに細かく分けられ、裁判官は事件内容を審理して判決を下し、裁判所書記官は判決に必要な事前調査を主業務とし、裁判所事務官はそんな裁判所書記官の仕事を補佐します。

例えば、金銭や土地のトラブルに対応すしている民事部では、法律事務所の職員や弁護士から届けられる訴状などの書面を受理し、担当書記官に引き継ぐ仕事を裁判所事務官が行います。裁判所書記官の指示に従いながら、法律で定められている手順で的確に処理することが求められます。

裁判手続き

裁判所書記官は裁判に必要な調書作成や調査を行いますが、裁判所書記官が業務に専念できるように資料を集めたり、必要な書類を準備して発送したりと、裁判手続きに関する準備を裁判所事務官が行います。訴状の受理のほか、弁護士や法律事務所の職員への対応、裁判記録の整理なども事務官の仕事です。また、裁判や調停に関わる当事者たちのケアも裁判所事務官が行います。手続きの案内をしたり、裁判・調停当日の出頭確認までの流れをサポートするほか、裁判期日の呼出状や判決書の発送準備、当事者への案内や裁判員関連の手続きも裁判所事務官が担当します。

裁判員制度のサポート

裁判員制度とは、特定の刑事事件に対し、一般市民が裁判員として裁判に参加する制度のことをいいますが、この裁判員制度に関わる業務も裁判所事務官が担当します。仕事内容としては裁判員の選任手続き、受付、説明会の運営などがあり、裁判員制度がスムーズに行われるようサポートをします。

裁判所の管理事務

これまでは主に裁判部門における仕事内容を紹介してきましたが、司法行政部門で裁判所事務官は事務局で裁判所の管理業務を行います。裁判所という組織を運営するために必要な事務を担当し、一般企業にあるような総務部・人事部・経理部のような役割を果たします。司法行政部門では、裁判に直接関わるというよりは、裁判部の職員を事務面でサポートすることで、裁判の円滑な進行に貢献していきます。

総務課・人事課・会計課など部署によって業務内容は異なりますが、総務課では物品の発注や裁判所内の設備や備品の管理・維持などの庶務全般を引き受けます。また、裁判所職員の勤怠管理や健康診断の手配、裁判所の広報活動など、仕事内容はさまざまです。人事課では人事異動や採用関連、職員研修などの事務作業を行い、会計課では裁判所職員の給与事務や、裁判官や裁判所書記官の出張・調査などにかかる経費、保釈金の処理などを担当します。

裁判所事務官の勤務先は?

裁判所事務官が働く場所は、全国各地の裁判所となります。最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所のいずれかで働くことになり、それぞれの裁判所にある裁判部門(裁判部)もしくは司法行政部門(事務局)の部署に配属されます。部門や部署間の異動は数年ごとに行われることが多いといい、総合職も一般職も採用管轄区域内での転勤の可能性があります。

裁判所事務官になって最初に所属する裁判所は、採用試験の合格後に提出する「勤務地希望」を基に、希望する勤務地を管轄する高等裁判所の管轄区域内の裁判所の中から決定されます。例えば、東京都を希望した場合でも、東京高等裁判所は東京以外にも神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県・静岡県・山梨県・長野県・新潟県の管轄となっているため、東京以外の場所に配属になる可能性があります。裁判所事務官は転勤の可能性があるということを、念頭に置いておきましょう。

裁判所事務官のやりがいとは

受験者が多く、難関試験といわれている裁判所事務官ですが、仕事のやりがいとは何なのでしょうか。

裁判所事務官は公務員ですから、民間企業よりも安定性があるといえます。しかし、裁判員制度の導入など、裁判を取り巻く状況は常に変化しているため、裁判所事務官の仕事の幅も広がってきています。民事・刑事ともに複雑な事件も増えてきていることから、社会の変化に対応しながら国の秩序を守るために貢献したいという方にとってはチャレンジしがいのあるでしょう。

裁判所事務官の残業について

裁判所事務官は忙しいというイメージを持っている方も多いことでしょう。裁判所事務官の残業については、配属される部署によっても異なりますが、裁判所事務官は裁判所に関わる仕事の中では比較的残業が少なく、勤務時間は規則的な場合が多いといわれています。しかし、担当する業務や繁忙期などもあるため、状況は異なるということを覚えておきましょう。職務を行うために必要な基礎能力を身につけるため、裁判所では採用時から職場や裁判所職員総合研修所などでさまざまな研修を行います。仕事をスムーズに進めることができるよう、常に努力する必要があるでしょう。

キャリアアップの道として裁判所書記官も

裁判所事務官の採用試験を受ける方の中には、将来は裁判所書記官として働きたいと考えている方も多いようです。裁判所書記官になるためには裁判所事務官としての経験が必須となり、試験に合格して研修を修了すれば、裁判所書記官にキャリアアップすることができます。

裁判所事務官は、基本的には裁判所書記官の指揮の下で業務を行っています。裁判所書記官は法廷に立ち合い、調書を作成するほか、法令や判例を調査するなどの役割も担っています。待遇なども裁判所事務官とは異なることから、裁判所事務官としての経験を生かしてキャリアアップしたい方にとっては目指すべき職種といえるでしょう。

裁判所事務官の仕事はやりがいがたくさん

裁判所事務官の仕事は裁判部門と司法行政部門によって内容が異なりますが、どちらも裁判所の運営や裁判に貢献する仕事です。将来は裁判所事務官として働きたいという方は、裁判所事務官の仕事内容についてしっかりと理解した上で、採用試験の受験を検討しましょう。

参考

裁判所にはどんな仕事があるの?|裁判所

裁判所事務官の仕事内容|【スタディサプリ 進路】

裁判所事務官の仕事内容 | 裁判所事務官の仕事・なり方・給料・資格を紹介 | Career Garden

裁判所事務官: 法廷での審理がスムーズに運ぶよう手助け | 職業 | みんなの専門学校 (みんせん)

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