心当たりある?大企業病の特徴と原因を解説!6つの改善予防策を提唱

大企業病とは、非効率的な企業体質や社員の思い込み行動を言います。主に組織規模が大きく、業績の安定している大企業に起こりやすいため「大企業病」と呼ばれますが、具体的にはどのような現象を指すのでしょうか。当記事では、大企業の特徴から大企業病が起こる原因を説明します。そして、大企業病を改善・予防する具体的な対策例をご紹介します。

大企業病とは?中小・ベンチャー企業なら大丈夫?

大企業病とは、主に大企業で見られる非効率的な企業体質や社員の思い込み行動のことを言いますが、大企業にのみ起こるという明確な定義はありません。

つまり、組織内の意思疎通が悪く、それが結果として組織や社員の業務を阻害する場合、企業規模に関わらず「大企業病」と言われます。そのため、中小企業やベンチャー企業だからといって大企業病にならないわけではなく、どの組織にも起こりうる現象です。

大企業病の特徴ー「官僚制」と「セクショナリズム」

大企業病の企業体質には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。よく見られる典型的な特徴を挙げてみましょう。

指揮命令系統は絶対的な「トップダウン」

企業経営の意思決定は上司から部下へと伝達され、その決定に社員が従うという組織管理が行われます。このトップダウンの指揮命令系統は絶対的で、たとえ顧客ニーズがあったとしても、上司の許可なく部下が臨機応変に対応することは難しいです。

形式を重んじるため、意思決定に時間がかかる

指揮命令系統が絶対的なトップダウンという縦割りの組織形態によって、形式を重んじる企業風土が出来上がっていきます。そのため、一つの事業プランを決済するのに意思決定プロセスが無駄に多く、時間がかかります。

従来の規則に固執するあまり、適応力やチャレンジ精神に乏しい

形式的で、古くからの規則に基づいて組織を運営することにこだわり、新しい時代の流れに適応するような変革を好みません。そのため、これまで試したことのない事業プランを実行しようというチャレンジ精神に乏しく、現状維持を求める安定指向が強いのが特徴です。

失敗に対する許容範囲が狭い

業務プロセスが固定化されていることによって、失敗する可能性が極めて低い状況にあるため、些細なミスでも社内評価が下がってしまいがちです。また、失敗した責任を自分より下の社員に押し付ける風潮が見られます。

学閥や派閥があり、肩書きや資格にこだわる

組織内に学閥や派閥があり、長年にわたって維持・強化されています。それが意思決定に影響力を持つこともあり、有力な学閥や派閥に所属している社員が人事で優遇される傾向があります。

また、社内での肩書や資格にこだわる社員が多く、職位順のカーストを絶対視するような組織制度が守られています。

成功者を妬む風潮がある

学閥や派閥の概念が根強く、社内政治を重視した行動を行うため、成功者を妬み、隙があれば足を引っ張ろうとする風潮が残っているところもあります。

また、一定の有資格者や役職につく社員のみを重宝したり、企業の儲けへの貢献度のみを判断材料として昇給や昇進を決定することがあります。

縄張り意識が強く、外部からの干渉を排除する

業務が細分化されており、そのために、社員は自分の割り当てられた仕事にしか目を向けなくなる傾向にあります。

また、自分たちの持っている利権にこだわるあまり、各部署が協力して全社的な運営をすることに反発することも……。そのため、自部署の情報を他部署に漏らすことを禁じる暗黙の了解があり、他部署からの干渉を排除することがあります。

大企業病が起こる5つの原因

大企業病という非効率的な企業体質や社員の思い込み行動は、どうして起きてしまうのでしょうか。大企業病が起こる原因をご説明しましょう。

事業や業績が安定している

事業や業績が安定しているため、リスクを負ってまで新しい事業プランにチャレンジする必要がありません。また、安定を脅かすような失敗に対する許容範囲が狭いため、社員が萎縮してしまい、通常業務以外に手をつけたがらない傾向も見られます。すると、現状維持しようとするこだわりが一層強くなり、組織力が停滞してしまいます。

このほか、事業や業績が安定した企業は、波風を起こさない社員を高く評価し、チャレンジしようとする社員を問題視して排除しようとする人事傾向があります。そのため、優秀な人材ほど実力を発揮できずに離職していき、結果として創造性や自主性の乏しい人材しか残らなくなるため、長い目で見ると組織力が徐々に低下していきます。

企業内の規律を守るための規則が多い

社員の統率を図るためには、一定の企業内規律が必要です。しかし、規律に縛られすぎると社員は自由を失ってしまいます。そうすると、規律を理由に、自分で考えて働くことをやめてしまいます。

これは、業務を他社員に引き継ぐときにも影響することがあります。例えば改善した方が良いと気づいた問題点があっても、それを告げずに放置したまま職を離れてしまいます。すると、問題発見に時間がかかる上、引き継ぎを受けた社員も「自分の代で責任を負いたくない」と目を背けるようになり、大企業病の蔓延が加速する原因になってしまいます。

上層部が現場の状況を把握していない

企業上層部の経営陣が、現場を担当する社員の状況を把握していない場合があります。また、上層部が抱いている経営理念や企業方針を、一般の社員たちは理解していないことも考えられます。上層部と現場の意識が乖離すればするほど、それぞれが思い込みで行動をすることになるので、業務を修正するのに時間がかかり、大企業病が悪化する原因となります。

また一般的に、上層部の方が一般の社員よりも安定志向が強いと言われます。上層部に属する人は、自身のキャリアや実績に自信があるため責任意識が強く、自部署に関する問題を表面化して全社の共通項に挙げることを避ける傾向があります。自部署の情報を出さないのと同時に、他部署の問題にも口を挟まないという牽制関係が築かれており、それが大企業病の原因の一つとなっています。

組織風土が閉鎖的で自由に意見交換ができない

同じ部署内でしかコミュニケーションがない場合、他部署の社員と関係を築くきっかけを見つけられないことがあるでしょう。また、失敗をしたくない、上司の機嫌を損ねたくないと考える社員が多くいると、現場の状況を上司に伝えるのを躊躇うことも考えられます。

このように社員間の縦と横のつながりが円滑でない場合、閉鎖的な組織風土が出来上がってしまい、自由なコミュニケーションを図ることができません。すると、問題が起きたときに人脈や情報がないため、解決策を講じるのに時間がかかってしまう原因となります。

顧客よりも社内での評価を重視する

一般的に企業とは営利社団法人のことを言い、対外的な経済活動によって利益を上げることを目的としています。つまり、企業の目的は「顧客のニーズに応えることで企業利益を上げること」と言えるでしょう。

しかし、絶対的なトップダウンの指揮命令系統に縛られると、業務を進めるには直属の上司の許可がなければ行動できなくなります。そのため、一般の社員たちは直属の上司が気に入るような業務のみを選んで仕事をしたり、社内での評判を気にして行動を選択するようになります。

このような社内ニーズに応える仕事は、「いかに企業が儲かるか」という内向的な視点のみに照準を当てることになり、「いかに顧客を喜ばせるか」という外向的な視点を見失ってしまいます。長期的に見ると、これが企業の業績を左右する深刻な問題を引き起こす原因になるのです。

大企業病を改善・予防する6つの対策

大企業病に陥いらない企業体質を築くためには、どのような対策を練れば良いのでしょうか。具体的な対策例とともに、大企業病を改善・予防する方法をご紹介します。

失敗を恐れず挑戦することを奨励する人事制度を取り入れる

経営環境は、時代とともに変化します。顧客ニーズだけではなく、働く社員の労働価値観も変化要因の一つで、その変化を先取りして企業利益を上げる事業プランや、それを実行する社員の人事制度の見直しが常に必要なのです。

そのため、現状に安定を求めず、常に問題意識を持ち、最善の方法を模索する働き方を推奨する対策を立てましょう。

【チャレンジできる人事風土を築くための具体的な対策例】

チャレンジを奨励する加点主義人事制度を導入する。チャレンジしたことを賃金に反映する報酬制度を導入する。自分の資格・スキル・実績を希望部署に売り込んで転籍・異動をする社内フリーエージェント(FA)制度を導入する。会社が必要とする役職・職種要件を社員に公開し、応募者の中から必要な人材を選抜登用する社内公募制度を導入する。新規増員または欠員が出た職種に対して社員自らが応募でき、社外からの応募者と同様の選考を行うジョブリクエスト制度を導入する。昇進要件に一定のキャリアのみでなく、異職種経験回数を含めるシステムを構築する。など

参考

“チャレンジできる” 人事制度のすすめ 齋藤清一|株式会社人事賃金管理センター Ns日本病院人事開発研究所

形骸化した規則や業務をなくし、業務効率を向上させる

グローバル化が進む現代にあって、社内で情報が共有できなかったり、自由なコミュニケーションの場がないことで意思決定に時間がかかっていては、国際社会から取り残されることになってしまいます。

そこで、スピード感をもって業務を遂行するために、「今のやり方に問題ない」という固定観念を捨て、業務内容の効率化を推進する改善策を積極的に採用していきましょう。

【業務を効率化する具体的な対策例】

恒常化している業務を洗い出すために、アンケートなどを用いて業務分析を行う。各部署の業務特性に合わせた業務の棚卸しを行う。不要になった業務が惰性で行われていないか確認する。社内資料や書類の必要最低限の情報を記載するフォーマットを作り、資料作成の手間を減らす。ルーティンワークとなっている会議の意義を見直す。また、会議の到達目標を明確化することで、会議の量と質を双方から改善する。形骸化している業務だが廃止できない場合は、外部委託する。業務の優先順位をつける。「誰が」「いつまでに」「何を行うのか」という業務の進捗状況を共有管理し、業務分担を適正化する。一般の社員が主たる担当業務の専門的知識やスキルを持っている場合は、権限を委譲する。誰もが使いやすいオフィス環境へと整備する。ホワイトカラーの場合、ほかの社員からの連絡などを遮断して1人で集中して仕事に取り組む時間をつくる。最新の連絡ツールを活用する。など

参考

3.「めりはりのある働き方」の前提となる「仕事の進め方の効率化」 |内閣府

上層部の意識改革や人員刷新を行う

社員の意識を改革したい場合は、上層部の意識を変えるのが最も効果的です。なぜなら、上層部の意識を変えるということは、一般の社員に意識改革の本気度を示すことができるからです。

例えば、上層部が互いに管轄する部署への干渉を行わないという相互不可侵のもと経営を行うと、部下である社員も他部署と協力関係を築くことができません。また、上層部が現場の社員の状況を把握せずに忖度仕事を無駄に増やしていることに気づけていない場合も、業務の非効率を生んでしまいます。

しかし、上層部の意識を変える場合は、従来の権限や責任関係が大きく動くことになるため、全社をあげた改革を行わなければなりません。その一つとして、大企業病を改善する具体的な対策に反発する人たちを説得したり、刷新するのも一つの方法でしょう。

上層部から意識を変えていくという強い姿勢を、ほかの社員に示せるような思い切った対策を講じましょう。

【上層部の意識改革を行う具体的な対策例】

上司の言動や無意識の指示について、部下の社員にアンケートを実施する上層部の意識改革に対する考えをヒアリングする。職位順に関わらず組織理念やビジョンを浸透させる。など

参考

上司がムダを生む「働かせ方」の大間違い 忖度仕事に振り回される部下たち|PRESIDENT Online、P4

意識改革アプローチ選びと実現に向けた提案(2017.10.31)|グローバルリーダーシップ研究所beyond

職場コミュニケーションを活性化させる

職場のコミュニケーション不全は、個々の社員レベルで解決できる問題ではありません。コミュニケーションをとるということは、「コミュニケーションの場を作ること」なのです。

コミュニケーション不全を解消するコツは、社員同士が互いに共感を持って支え合うことと、社員個人が自分の発言に自信を持つことにあります。この2つは互いに共存している問題で、他者に共感を持たれることで自分に自信が持て、自分に自信を持つことで他者に共感を求める意見を発信することができるようになります。

そのため、社員が部署や職位順などのしがらみに囚われずに、自分の意見を自信を持って発表できる職場づくりを心がけましょう。

【コミュニケーションを活性化させる具体的な対策例】

送信したら完結するメールではなく、新しいチャットツールを活用し、要件にかける熱意を伝えきる。フォーラムを開催し、一般の社員が上層部の経営陣に直接質問できる場をつくる。社内報を発行し、どんな社員がいるか、他部署の状況、経営理念などの情報を共有する。社員食堂をつくり、同じ企業で働く社員が出会う場を設ける。社員研修や面談を行い、問題意識や目標達成状況などを共有する。社内レクリエーションを開催し、コミュニケーションの共通項を増やす。社内通貨を取り入れる。部署を越えて連携するプロジェクトを発足する。社外の意見も取り入れたり、新しいマネジメント手法を試す。など

参考

コミュニケーション不全 解消のシナリオ・序章 個の自己信頼の欠如に、いかに対峙するか|リクルートワークス研究所,P32

社内コミュニケーションはなぜ重要か?メリットや取り組みシレイを紹介|ボーグル

企業の経営理念や行動指針を浸透させる

本来、経営理念とは事業を継続して発展させるための指針です。規則や業務マニュアルは、その経営理念に遵守するための手段なのです。そのため、経営理念を社員全員が徹底的に共有することによって、雑多な規則や業務マニュアルを少なくすることができます。すると、働き方についての縛りが減るため社員の自由度が増し、主体的に働くことができるようにもなります。

そこで、企業の経営理念や行動指針は、社員に分かりやすく明確に伝わるような対策をとりましょう。

【企業の経営理念や行動指針を浸透させる具体的な対策例】

共感を持てる言葉を使う。ストーリーにする、映像化するなど、具体的なイメージが湧くように工夫する。社員が経営理念を自分のこととして捉えられるように、経営理念に沿った行動をとった社員を称賛し、社員本人に再発見する機会をつくる。上層部が一般の社員の考えを敬意をもって聞くという共感プロセスを講じる。創業時の理念だけではなく、今現場で起きている新しいストーリーを共有する。経営理念を拡散する「伝道師」を各部署に配置し、語り継ぐ。経営理念を浸透させる活動を継続する。など

参考

経営理念を浸透する4つのステップ|PIS

カスタマーファーストの意思決定・行動を徹底する

企業が継続的に安定した業績を上げていくためには、顧客に選ばれ続ける多種多様な商品やサービスを提供することが必要です。そこで、「顧客を喜ばせる良いサービスを提供し続けるためにはどうしたらいいのか」というカスタマーファーストの理念を全社員で共有することが肝要です。

そのため、直属の上司という目先の目標を突破することに照準を当てた働き方を改善し、顧客について考え抜いた事業プランを実行に移せるような組織環境を整える対策をとりましょう。

【カスタマーファーストを実現する具体的な対策例】

顧客のことを考えて行動することを良しとする企業風土をつくる。顧客を優先しすぎて社員が犠牲になるようなことがないよう、働きやすい環境を整える。過大要求する顧客に対しては、全社的に厳格な措置を講じる。チーフカスタマーオフィサー(CCO)など、カスタマーファーストを実現する役職を設ける。カスタマーサポート(CS)をする担当チームを立ち上げ、全社に顧客ニーズを伝達する。カスタマーサティスファクション(顧客満足)や、カスタマーディライト(顧客感動)など、カスタマーファーストを実現するための業績評価指標を利用する。など

参考

お客様は神様?カスタマーファーストの実現に重要な3つのポイントと誤解しがちな注意点|TayoriBlog

まとめ

大企業病の特徴や原因から、大企業病を改善・予防する具体的な対策例までご紹介しました。大企業病は原因がはっきりしているわけではなく、企業ごとに異なる複数の原因が相俟って生じる現象です。そのため、大企業病の改善・予防策に正解はありません。

企業の体質、社員の特性、そして時代によって最適な打ち手はどんどん変化します。大切なのは、常に問題意識を持って最善の方法を模索する姿勢と言えるでしょう。

参考

大企業病の原因や症状。対策に必要な取り組みとは|TUNAG

社員のやる気やチャレンジ精神を奪う「大企業病」から脱出する方法は?|リクナビNEXTジャーナル

官僚制|ウィキペディア

「事なかれ主義」とは?その心理や特徴、職場での改善方法を解説|TUNAG

中小企業でも起こりうる、大企業病が蔓延する5つの原因とその対処法|BOWGL

「大企業病?それ他責じゃん!」 元意識低い系社会人が教わった、組織を動かしミッションを実現するたった1つのコツ|FASTGROW

職場コミュニケーションを改善する方法とは? 社内施策のポイントや他社事例を解説|TUNAG

大企業病|ウィキペディア

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