「平等」へ環境整備を 視覚障害児の支援訴え、専門家が講演

視覚障害のある子どもへの社会の在り方について講演する慶応大の中野教授=川崎市高津区

 視覚障害のある子どもへの向き合い方を主なテーマとした講演会が2日、川崎市高津区の小黒恵子童謡記念館で開かれた。視覚障害やバリアフリーの研究を手掛ける慶応大の中野泰志教授が、「障害の有無に関係なく、誰もが夢を実現できる世の中になってほしい」と訴えた。

 「子どもの視覚発達と適切な環境づくり」と題して登壇した中野教授は、教育現場で実際に使われている視覚障害者用の教科書を紹介。弱視の子どものために文字を大きくし、白黒を反転させた教材を見せ、「(弱視は)白い紙がまぶしく感じる。勉強嫌いだと思っていた子どもが、これで勉強ができるようになったケースもある」と説明した。

 タブレット端末で文章を読み上げるデジタル教科書の導入事例を示す一方、「1人だけタブレットを持ってきてずるいなどと言われる現状もある」と指摘。「全ての子どもを均一に扱うことが平等ではない。(環境整備などを通じて)他の子と同じ状態にすることが本当の平等」と話した。

 参加者は、視界が悪くなるゴーグルを体験。周囲がぼやけたり、視野が極端に狭くなったりと、さまざまな見え方があることを学んだ。

 中野教授は「全盲が重くて弱視が軽い、ではなく、いろいろな困り方の違いがある。どう理解し配慮できるか、普段から考えてほしい」と呼び掛けた。

 講演は、よりよい共生社会の実現を目指そうと、同館が初めて企画した。

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