お笑い芸人のテルが都会暮らしをやめたわけとは?「地域おこし協力隊」制度の魅力に迫る

総務省が主催する『地域おこし協力隊全国サミット』が2日、東京ミッドタウン ホール&カンファレンスで開催され、ロバート・デ・ニーロなどのものまねで知られるタレントのテルが登壇。自身も参加する「地域おこし協力隊」の参加経緯や、そのメリットなどをユーモアたっぷりのトークで語った。

2009年にスタートした「地域おこし協力隊」の制度は、地域の活性化を目指して作られたもの。都市から地方へ移住して地域活動に従事する隊員を全国から募集し、地域活性化を図る。テルはこの制度を利用して、1年3ヶ月前から栃木県佐野市へ移住し、「地域おこし協力隊」のメンバーとして地元での地域おこし活動に従事している。

テルはイベントの終盤にサプライズで会場に現れると、「自分は実は愛媛出身。全然関係ないけど、栃木県佐野市の『地域おこし協力隊』に参加しています」と照れくさそうに自己紹介。参加の経緯については同じサンミュージック所属のダイアモンド☆ユカイが子育てのために佐野市に住んでいて、事務所と佐野市の交流が深まっていたことを挙げ、「『地域おこし協力隊』で芸人さんを使ってみたい。芸人さんで暇な人はいないですか」と佐野市から事務所に打診があったのを聞いて、「自分も当時はちょっと暇になっていて目標を定めきれない時期だった。この後どうしようかって中で、行きたいって思った」と自ら名乗りを上げたという。

佐野市に対する知識は当初ほとんどなかったといい、「佐野ラーメンは聞いたことがあったけどそれしか知らなかった」と明かしたが、「住んでみると、東京に住んでいた時の家賃相場と比べて、家賃が半分。広さも三倍になった」と住環境の良さに感動したことを紹介。「駐車場も2、3台置けるようなところばかり。東京まで車で一時間くらいで行けるし、家を買うなら佐野はいいなって自分でも思いました」と地方暮らしのメリットを語った。

地元の人の印象についても「みんないい人。わりと控えめで、そんなに積極的にこっちに向かって来る人はいない。でも、話しかけると優しく協力してくれる人ばかり」と癒しの存在になっているとのこと。佐野ではお笑いに加え、歌の活動にも重点を置いて取り組むようになったといい、「歌をチョイスしてよかった。こっちへ来て佐野を盛り上げようって明確なイメージ、目標を持って活動できるようになり、それがやる気にも繋がった。佐野のあるあるを盛り込んだ歌を作ったらそれがウケて……」と嬉しそうに話す。

「向こうでは佐野ケーブルテレビにお世話になるようになって認知度も高まり、幼稚園のイベントに行っても『テルさん!』って」と手応えも掴んだという。また、佐野を盛り上げるだけなく、佐野の魅力を全国に発信することにも力を入れているというテルは、SNSを通じて佐野の魅力を日々紹介している。地元にちなんだグッズも考案して販売しはじめたといい、「佐野市のマークを考えて手土産として持っていったんです。帽子も作りました。みなさんに来ていただきたいなって」とにっこり。

「地域おこし隊」についても「環境を変えたいという人にはすごくいい精度。ただ闇雲にそこに行って住みはじめるよりも、この制度を利用して一回やってみるというのはすごくいい選択肢だと思います」と話す。「国から給料も入りますし、興味がある場所があるならこの制度を使っていくといいと思います。僕ももっと早く知っていれば良かったと思っているくらい。後2年ほどの任期があるけど、一年住んだらすごくいい環境で、このまま家を買えるくらい稼いでここに住んで仕事を続けられたら素敵だなって思います」としみじみ。

「仕事自体は東京のほうが量は多いけど、何か自分で将来お店をやりたいとか、会社を起こしてやりたいという人には地方に行った方がいろいろメリットは多いと思います。みんなで協力してもっと日本を楽しくしていきましょう」と会場に集まった若者たちに呼びかけた。

イベント後、佐野市の関係者に話を聞くと、「テルさんは佐野市への移住定住者促進のイベントにも協力してくださり、とても貢献していただいています。芸人さんということで我々職員がやるより、企画力もあるし、話も上手。効果も全然違います」とテル効果を絶賛する。テルの帽子やTシャツなどの佐野グッズも地元の人たちや職員に大好評だという。

イベントではテルのほか、アートディレクターの北川フラム氏による基調講演『アートによる地域づくりの実践』が行われたほか、総務大臣の高市早苗氏も登壇。高市氏は「総務省にとっても自慢のプロジェクト。地方へ人が流れ新しい仕事が生まれていく。『地域おこし協力隊』を通じて様々な人たちが多様な分野で活躍し、地域に貢献してくださっています」と本プロジェクトの成果を強調。

「3年という任期終了後の隊員の方のその後を調べると、約6割が地域に残ってくださっています。そこで事業を起こしてくれた方の数も2倍に増えています。飲食業、宿泊業など、そういった方々が活躍される分野も広がり、皆様で素晴らしい流れを作ってくれているなと実感しています」とコメント。「令和6年には地域おこし協力隊の数を8千人にしたいと思っています。OBの方の連携を強固にして、PRも促進していきたい」と将来の構想も話していた。

(取材・文:名鹿祥史)

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