スーパーGT:FCY導入、ウエイトハンデ制……。2020年スポーティングレギュレーションの変更点は

 いよいよ2020年の開幕に向け、各メーカー、チームから体制発表が行われているスーパーGT。すでに今季参戦チームには概要説明会も行われているが、2020年のスポーティングレギュレーションがメディア向けにも公開された。2020年に変更された主な部分を一部抜粋して紹介しよう。

■ついにスーパーGTにFCY導入。その方式は

 最大のポイントと言えるのが、すでに2019年最終戦でGTアソシエイションの坂東正明代表から明言されていたフルコースイエロー(FCY)の導入だ。これがスポーティングレギュレーションに記載された。

 まず導入の手順については、コースサイドに車両がストップして処理作業が行われている等、決勝レース中に安全上の理由が発生したときに、競技長がフルコースイエローを宣言する。すると、タイミングモニター、およびレースコントロール無線、さらに各マシンのコクピット内に備え付けられたディスプレイにFCY導入までの10秒のカウントダウンがスタートする。

 宣言後、すぐにコース内の全ポストでFCYボードが提示され、この時点からオーバーテイクは禁止。ドライバーは、周囲の安全を確認しながらレーシングスピードから減速の準備を始める。ボード提示から10秒後には、全ポストでイエローフラッグが提示され、この時点からコース上での走行速度は上限80km/hとなり、速度は監視される。

 また、FCYボードが提示されてからは、ピットレーンに進入することはできない。ただピットレーン出口は開放されており、ピットアウトは可能となる。なおホームストレート上を走行中の車両は、コースインする車両がピットレーン出口の第2セーフティーカーラインに到達するまでは追い越すことが認められる。

 さらにFCY導入中は、ペナルティを消化することも不可。ただし、FCYボード提示以前に車両が第1セーフティカーラインを通過していれば、この限りではないとされる。つまりFCYボード提示直前にピットインしていれば、ペナルティを消化しピットアウトができるということだ。

 FCYについては、今後公式テストで練習が行われていくことになりそうだ。

※注 第1セーフティカーライン/第2セーフティカーラインとは

─第1セーフティカーライン:ピットに進入しようとしている車両に、セーフティカーまたはトラック上を走行する他の競技車両の追い越しを許可するのが妥当と思われる位置。また、セーフティカーが介入終了時にピットに入った時に、競技車両がセーフティカーを追い越すことができる位置でもあること。

─第2セーフティカーライン:ピットを離れようとする車両が、トラック上を走行している競技車両と同等の速度に加速すると思われる位置。従って、トラック上の車両は、このラインに到着する前であればピットを離れる他の車両を追い越すことができるが、ラインを超えてからの追い越しは許されない。

FIA国際モータースポーツ競技規則/付則H項(2019.4.5付)日本語版より
http://jaf-sports.jp/assets/img/regulation/fiaMSreg-hja.pdf

■セーフティカー導入時のピットインは

 FCYが導入されるスーパーGTだが、FCYで「安全上の問題が解決しない場合」にセーフティカーが運用される。2019年までと規定上大きな部分での変更はなく、SCボードが提示され、SCが退去してグリーンフラッグが振られるまではピットレーンへの進入が禁じられているのは基本的に変わっていない。

 ただし、下記の場合にピット作業が許されることになった。

(1)先頭車両がSCの後方につき、残りの全車両がさらにその後方に整列しモニター上に「ピットレーンオープン」のメッセージが表示された周回からピットインができる。この際ドライバー交代を除くピット作業が許される。

(2)SCボード提示時点でピット入口またはピットレーンに入っていた車両については、すべてのピット作業が許される。

 なお、セーフティカー先導による決勝レーススタート時の場合、ピットレーンへの進入が許可され、ドライバー交代をのぞくピット作業が許可されることになった。(2)以外はドライバー交代はできないが、戦略上の柔軟性はありそうだ。

スーパーGTのセーフティカー

■GT300クラスのウエイトハンデ制が変更に

 また特徴的なのは、ウエイトハンデ制の変更だ。2020年までは、参戦6戦目までは獲得ポイント1点あたり2kgを、参戦7戦目は1点当たり1kgを搭載しなければならず、参戦8戦目は0kgになるウエイトハンデ制だった。

 2020年からは、GT500クラスでは変更はないが、GT300クラスでは参戦6戦目までは1点あたり3kgのウエイトを積むことになった。参戦7戦目からは1点あたり1.5kgに。参戦8戦目は0kgとなるのは変わらない。もし仮に、2020年第1戦でGT300クラスの優勝を飾ると、20点×3kgで一気に60kgを積むことになる。上限100kgは変わらないが、序盤で早々に結果を残すと中盤戦が苦しくなるかもしれない。

 得点については、チームポイントについて変更が加えられている。GT300クラスでは、これまで(1)トップ車両、トップ車両と同一周回またはトップ車両に1ラップ遅れの完走車:3点、(2)トップ車両に2ラップ以上遅れの完走車:1点とされていたが、2020年からは2ラップ遅れが2点、そして新たに3ラップ遅れが1点と変更されており、加点のチャンスが増えている。

■GT500マシンのフロントウインドウが変わる

 競技自体とは直接関係ないが、2020年からはGT500クラスにおいて、車両に貼られる共通ステッカーにも変化が見られることになった。2020年からGT500クラスに参戦する全車に対し共通コンポーネントを提供するほか、オフィシャルスポンサー契約を締結することになったボッシュのステッカーがフロントウインドウ、リヤウインドウ部分に貼られる。

 フロントウインドウ部分については、高さ20cmの白地にボッシュのロゴが入るが、これまではGT500クラスを表す白地の上は、各メーカーごとにバラつきがあった(レクサス、ニッサンはメーカー共通、ホンダは各チームごとのロゴが入っていた)。これが2020年からは各メーカーの統一ロゴ表記となる。ホンダ勢も2020年からは統一したロゴが入ることになった。

 GT300クラスについては、2019年までと同様にフロントウインドウに高さ10cmの黄色地の帯が入り、『ニッポンを元気に!』のスローガンが入ることになる。

セパンでのウインターテストで平手と千代がドライブしたニッサン開発車両の230号車GT-R
東京オートサロンでお披露目された2020年モデルのグッドスマイル 初音ミク AMG

■その他にも変更が

 その他にも細かい部分に変更があるが、まず、年間の公式登録基準は、2019年までは総台数として『48台』と記載されていたが、2020年からは『45台』と明記された。スーパーGTに参加するためのAシード権やBシード権、インターナショナル・チームといった枠は変更されていない。

 また、今季から新たに追加された項目としては、(1)走路外走行による追い越し、(2)接触を伴う追い越しというふたつに対し、レースディレクターはいかなる特別な手順にも従わず黒白旗提示を伴う次の行為に対し、走行の順番を戻す指示をすることができることになった。

 他にも細かな部分で変更が加えられた2020年のスーパーGTスポーティングレギュレーション。2020年はGT500クラスのニューマシン登場をはじめ、数多くの話題があるが、どんなシーズンになるのか今から待ちきれないところだ。

© 株式会社三栄