業務スーパー、タピオカブームが終わっても絶好調が続く理由

2019年のタピオカブームで、自宅でタピオカミルクティーを楽しめる「冷凍インスタントタピオカ」がヒットした、食材販売の「業務スーパー」。タピオカブームも一巡し、一時の勢いにも陰りがみえているかと思いきや、冬に入っても絶好調が続いています。

業務スーパーを展開する神戸物産の月次売上高は、2019年11月、12月ともに前年同月を10%以上も上回って着地。取材をすると、タピオカ以外にも息の長いヒット商品が好業績を支えていることがわかってきました。


タピオカヒットで学生にも客層拡大

業務スーパーの2019年12月末時点の店舗数は851店舗。このうち、849店舗がフランチャイズ経営です。神戸物産の2019年11月の月次売上高は前年同月比14.8%増の251億円、12月も同14.3%増の274億円で、業務スーパー各店への商品出荷実績は57ヵ月連続で前年同月を上回りました。

好業績の背景としては、「冷凍インスタントタピオカ」のヒットでメディアの露出が増え、集客につながったことが挙げられます。

広報担当者は「タピオカのヒットで、これまで来店することが少なかった学生など、若い客層が広がりました」と驚きます。新しい顧客がタピオカだけではなく、店内の別のスイーツにも興味を持ち、SNSで発信したことで売り上げが伸びたといいます。

同社は、利益率の高いPB(プライベートブランド)商品を増やすことで、売り上げを伸ばしてきました。現在、売り上げに占めるPB商品の割合は約3割となっています。それでは、実際にどのような商品が売れているのでしょうか。

冬場はどんな商品が売れているのか

2月上旬、都内の店舗に行ってみると、平日の午前中にもかかわらず、女性客を中心に多くの人で混み合っていました。レジ前には7、8人が並んでいます。

店内を歩くと、「海外直輸入」と書かれた冷凍食品コーナーが目に飛び込んできました。スペイン直輸入の冷凍ラザニア(218円、税抜き、以下同)の隣には、米国産の6個入りプレーンベーグル(368円)、韓国の菓子「ホットク」などが並び、世界の食が集結している印象です。

海外から直輸入しているラザニアやタピオカ。「冷凍さぬきうどん」は国内工場で製造する

何と言ってもコスパの良さに目を奪われます。商社などを通さずに直輸入することで、コストを抑えています。「外国籍の社員も多く、母国に買い付けに行くこともあります」(広報担当者)。

輸入品の中で冷凍タピオカと並び人気なのが、ベルギーから直輸入する「ベルギーワッフル」です。10個入り348円で、アイスクリームやフルーツなどとのアレンジのしやすさが、SNS映えを意識する女性に受けています。

人気スイーツは豆腐と同じラインで生産

国内の工場で製造するPB商品にも、工夫を凝らしています。

2013年に発売した「リッチチーズケーキ」(348円)は、ボリューム感と濃厚な味わいが特徴です。リッチチーズケーキをよく見ると、何かに似ているような気がします。

自宅で、のんびりとカフェ気分が味わえる?

同社の広報担当者は「実は豆腐を製造するラインで作っています」と明かします。同じ容器を使って、豆腐とリッチチーズケーキを交互に生産することで、設備の稼働率を上げて、生産にかかるコストを抑えます。

ちなみに、1キログラムの水ようかん(248円)は牛乳を製造していたラインで作っていて、牛乳パックと同じ容器に入っています。店舗に行った日は、冷凍チーズケーキは買えましたが、水ようかんとベルギーワッフルは完売していました。

同社は国内に21工場を展開します。「多くは稼働中の食品工場をM&Aで取得しています。製造商品の数を絞り込み、効率化することで、商品の低価格につなげています」(広報担当者)。

都心ではコンパクトな店舗を模索

共働き世帯の増加や家族構成が変わる中、中食事業も始めています。業務スーパーの店内の一角で展開する「馳走菜(ちそうな)」は、兵庫県や横浜市、さいたま市などで総菜を販売しており、今後は全国に拡大する予定です。

2019年10月期の神戸物産の売上高は、前期比12.1%増の2,996億円で、2020年10月期は同4.1%増の3,118億円を計画します。店舗数は、2020年10月までに875店舗まで増やすことを計画しています。

「冷凍さぬきうどん」を製造する、滋賀県の工場(神戸物産提供)

今後は首都圏でも店舗を増やす計画。業務スーパーの売り場面積は約330平方メートルが基本ですが、都心部はまとまった面積の土地の取得が難しいため、担当者は「人気商品に絞り込むなどした『コンパクト型』の店舗も検討しています」と説明します。

B to BからB to C向けにターゲットを広げ、独自開発した利益率の高いPB商品を低コストで売る構図は、作業服チェーンのワークマンと共通しています。同社とも1,000店舗超えが当面の目標。独自路線を走る地方発の企業の快進撃は、とどまる気配をみせていません。

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