子供が非行に走る原因は?親や周囲にできる心がけについても紹介

子供が非行に走る原因は一様ではありません。家庭環境、学校での居場所のなさ、周囲の無理解など、さまざまな理由が考えられます。これらの要素が複雑に絡み合っていることも少なくありません。当記事では、非行の定義から子供が非行に至る背景、子供が非行に走ったときの対処法まで解説しています。参考になれば幸いです。

非行に走るとは?

「非行に走る」とはそもそも何を意味するのでしょうか。まずは、非行の定義を確認しておきましょう。

少年法における非行少年の定義

少年法では、以下の行為を総称して「非行」と呼んでいます。

  • 犯罪行為(14歳以上20歳未満の青少年による刑事法令に違反する行為)
  • 触法行為(刑事責任を問えない14歳未満の少年が行う刑事法令に触れる行為)
  • 虞犯(ぐはん、将来的な犯罪行為につながるおそれ)

これらを行う少年のことを、それぞれ「犯罪少年」「触法少年」「虞犯少年」と呼びます。これら3種類の非行の中で、多くの人にとってなじみがないのは「虞犯」という言葉の概念ではないでしょうか。

少年法第3条第3項で、虞犯は次のように説明されています。

三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年

イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。

ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。

ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。

ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。

(引用元:少年法|e-Gov法令検索, 第三条第三項)

犯罪や触法と異なり、虞犯は法律に触れる行為ではないため定義をあいまいに感じるかもしれません。法文の中にある「不道徳な人」「いかがわしい場所」などは、人によって捉え方が異なってきます。とはいえ、少年法で説明されている虞犯の概念は、世間一般における「非行」または「非行に走る」という言葉の持つイメージから大きく解離したものではないでしょう。

少年警察活動規則における不良行為少年

少年の非行の防止や保護のために「少年警察活動規則」という規則が定められています。この中で、少年法に定められた非行少年(犯罪少年・触法少年・虞犯少年の総称)とは別に不良行為少年という言葉が出てきます。

不良行為少年とは、少年警察活動規則において以下のように説明されています。

非行少年には該当しないが、飲酒、喫煙、深夜はいかいその他自己又は他人の徳性を害する行為(以下「不良行為」という。)をしている少年をいう

(引用元:少年警察活動規則|e-Gov法令検索, 第二条六項)

少年警察活動規則では、上記の行為を非行と分けて定義していますが、一般的には、飲酒や喫煙、深夜徘徊なども非行の範ちゅうに含めて理解している人が多いでしょう。

※当記事で説明する「非行」は、先述の「犯罪行為」「触法行為」「虞犯」および「不良行為」を指すものとします。

非行に走る原因は?

子供が非行に走る原因にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、非行に悩む保護者の支援や本人の立ち直りをサポートする「非行克服支援センター」による「非行に走った少年をめぐる諸問題とそこからの立ち直りに関する調査研究」を参照しつつ、非行の背景について見ていきます。

家庭環境

子供が非行に走る要因の一つ家庭環境が挙げられます。非行克服支援センターの調査における元非行当事者へのインタビューでは、家庭環境・親・家族が非行に与えた影響について、本人たちの口から以下のような事柄が語られました。

①親の多忙による孤独、②親の病気・死、③親の浮気・離婚、④親の厳しいしつけ・支配、⑤家族からの虐待・ネグレクト、⑥親への反抗、⑦親からの期待に対する負担感、⑧きょうだいに対する劣等感。また、各項目を横断してその背景に貧困といった問題もあるものもあった。

(引用元:非行に走った少年をめぐる諸問題とそこからの立ち直りに関する調査研究|特定非営利活動法人非行克服支援センター ,P12)

これらの問題が直接的に非行の原因になったと断定できるものではありませんが、他のさまざまな事柄と複雑に絡み合うことで非行につながったと推察されます。また、上記の複数の項目を横断して貧困の問題が見られたことから、家庭の経済的な困窮が非行に影響を及ぼしている可能性もあります。

学校生活

学校で居場所を見つけられず、非行の世界に進んでしまうこともあるようです。非行克服支援センターのインタビュー調査では、授業が理解できないことや部活での挫折をきっかけとして学校に居場所をなくしてしまい、学校外の似た境遇の仲間とともに非行に進んでいった例が挙げられています。

また、いじめや子供の間のトラブルへの教師の不適切な対応、教師による否定的な言動や体罰が非行に向かわせる引き金になった例もあります。

周囲の無理解と不適切な対応

周囲の無理解や不適切な対応も非行につながる要因の一つです。

先の調査では、問題行動を起こした子供に対して、周囲が力で押さえ込んだり排除したりしたことが非行の原因となった可能性が示唆されています。このような対応の背景には、非行に走る子供の気持ちへの無理解があると言えるでしょう。体罰・暴力を用いて問題行動を改めさせようとすることには効果がありませんし、なにより倫理的に許されることではありません。力による対処は、問題行動をエスカレートさせる危険性すらあります。

また、問題行動を起こした生徒の登校を学校側が拒否・制限したことで、当事者が屈辱や被差別感情を抱き、行動を悪化させたケースも報告されています。

子供の非行への対処法と注意点

続いて、子供が非行に走ったときの対処法・注意点について見ていきましょう。

話をよく聞く

前述の通り、子供の気持ちや問題行動の背景を理解しようとせず、体罰や罰を与えることで行動を改めさせようとすることは非行の改善につながりません。

まずは、子供の話をよく聞くことが大切です。子供が自分の気持ちをうまく表現できなくても、言葉の端々に本音が隠れていることもあります。子供に寄り添い、話を聞くことで解決の糸口が見えてくるかもしれません。こちらから一方的に話して聞かせるのではなく、子供の話にじっくりと耳を傾けましょう。

自己肯定感を感じさせる

非行に走る子供は、他の子供に比べて自己肯定感が低いケースが少なくありません。幼い頃に受けた否定的な言葉や学校などでの挫折の経験が、自分という存在を否定的に捉えてしまう要因になっている可能性が考えられます。

非行克服支援センターの調査では、社会や他の人の役に立つ経験が非行から立ち直るきっかけになると示唆されています。

多くの事例で、自分自身が、社会や他の人(自分の子どもなど家族を含む)との関係で役に立つ機会を得るということが、立ち直りのプロセスの中で重要になっていた。

(引用元:非行に走った少年をめぐる諸問題とそこからの立ち直りに関する調査研究|特定非営利活動法人非行克服支援センター ,P24)

自分が誰かの役に立つ存在であると思える感覚は、自己有用感とも呼ばれます。成長の過程で自己肯定感・自己有用感を育むことができなかった場合でも、これらは家庭内における身近な手伝いやボランティアへの参加、就労の経験などによって獲得できるものです。保護者としては、子供が自分自身を肯定的に捉えることができるような機会を提供し、サポートすることが重要と言えるでしょう。もちろん、他者や社会の役に立つかは関係なく、子供自身が自分の存在そのものに対して、無条件に肯定的な気持ちを抱けるような言葉がけや関わり方も大切です。

専門家のサポートを受ける

非行の問題は、家庭内の問題に還元されがちです。非行に走る子供を持つ保護者が、「親のせいだ」「しつけがなっていない」「子育てに失敗した」などと糾弾されることも少なくありません。しかし、ここまで見てきたように子供の非行の背景には、家庭以外の大人や社会、学校での友人関係などに起因する事柄も多くあります。家庭環境が非行のきっかけになる場合であっても、貧困や公的サポートの不足といった社会的問題が背後に隠れていることがほとんどです。

大切なのは、子供の責任を全部、保護者自身が背追い込んで孤立してしまわないことです。非行からの立ち直りのためには、専門家や公的機関から適切なサポートを受けることも必要となります。また、非行に走る子を持つ親の会などの自助グループに参加し、悩みを打ち明けたりアドバイスを受けたりすることも保護者の心理的負担の軽減や子供の立ち直りの助けとなるでしょう。

おわりに

子供の非行の原因は一つとは限りません。これが原因だと簡単に判断できるものでもありません。立ち直りの糸口を見つけるためには、なにより子供の話に耳を傾けることが大切です。また、親・保護者自身が責任のすべてを背追い込まず、身近な人や公的な相談機関、自助グループに助けを求めることも必要となってきます。当記事が子供の非行を理解する上で少しでもお役に立てれば幸いです。

参考

非行・逸脱における格差(貧困)問題|教育社会学研究第80集

第4回 非行原因に関する総合的研究調査の概要|内閣府

抱え込まないですぐ相談!子どもが非行に走る主な原因と対処法|ひだかあさんの犯罪心理学

令和元年版 子供・若者白書(全体版)|内閣府

少年法|e-Gov法令検索

少年警察活動規則|e-Gov法令検索

「自尊感情」?それとも、「自己有用感」 ?|国立教育政策研究所

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