長男を私立中学に入れたい40代夫婦「塾代が高額で貯金ができない」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、長男を私立中学に進学させたいという40代の共働き夫婦。貯金は110万円ほど。毎月の塾代が高額で貯金ができないといいます。FPの横山光昭氏がお答えします。

長男を私立中学校に行かせたいと考えています。今は受験で合格するために塾に通っています。かなり授業料が高額な塾なので、貯金ができない状況になってしまいました。

もちろん合格後は塾を辞めるつもりですし、次男は受験をする予定はありません。次男が小さいので今は時短勤務をしていますが、あと4年ほどして小学生に上がったら、フルタイムに復帰しようと思っています。また、次男の教育費については、大学進学費用になればと思い、18歳になると200万円になる学資保険に入っています。

また昨年、親が所有する中古物件を譲り受け、700万円ほどかけてリノベーションしました。その費用は親から借りているので、毎月5万円を返済している状況です。今のところ、家計のやりくりはなんとかなっていますが、兄弟の年が離れているので、長男にどこまで教育費をかけても大丈夫なのか知りたいです。

<相談者プロフィール>

・女性、43歳、既婚(夫:44歳、会社員)

・子ども2人:長男(小5)、次男(2歳・保育園)

・職業:会社員(時短勤務中)

・毎月の手取り金額:36.2万円

(夫:25.4万円、妻:10.8万円)

・年間の手取りボーナス額:なし

・貯蓄(普通預金):約110万円

【支出の内訳(33.6万円)】

・住居費:5万円(親への返済)

・食費:4.6万円

・水道光熱費:2万円

・通信費:1.5万円

・車両費:2.1万円

・交通費:0.4万円

・日用品代:0.8万円

・被服費:0.3万円

・交際費:0.5万円

・教育費:6.7万円(給食費含む)

・保育園代:1.8万円

・お小遣い:3.5万円

・生命保険料:2.9万円

・学資保険料:1.5万円


横山:ご相談ありがとうございます。長男と次男の年の差が9歳ほどと離れているので、教育費のかけ具合が心配だと思っていらっしゃるのですね。年の差があっても基本、考え方は同じです。教育費をどのように準備していくのか、現在の家計状況を踏まえて考えてみましょう。

重い塾代、合格しても続く教育費の負担

ご自身でもおっしゃっているように、塾代は相談者さんの家計の大きな負担になっています。合格後は塾を辞めるとおっしゃっていますが、私立中学校に通われるとなると、大きく教育費がかかる時期は今だけではないと思います。

私立中学校の授業料に関しての補助は、高校に比べて手厚くはなく、補助金などは概ね期待できません。授業料の補助を受けるには、世帯年収400万円以下が条件ですし、年間の補助額も10万円ほどと少額です。

中学生が終了するまでの3年間は、授業料、学習教材費、学用品代、設備費用やPTA会費のような保護者会費用などで、年間100万円を超える費用がかかる学校が多いようです。単純に100万円の授業料を1ヵ月分にわけてみると、月約8万円かかることがわかります。

支払方法は学校によって、毎月払い、前期後期の2回払い、学期ごとの3回払いなどと異なります。支払方法がどうであれ、毎月の家計のやりくりを考えると塾代の6万円がなくなるということは考えにくく、「学校授業料」とすり替わると考えておいたほうがよいでしょう。

ということは、今の教育費が減るなどとは考えず、現状維持のまましっかりと貯金を増やしていける方法を考えていかなくてはいけません。

高校に行くと多少の授業料補助があり、支出額が減ると思いますが、さらに進学すると、大学の入学費用が必要になります。相談者さんのご家庭ではボーナスでの臨時収入がないようですから、毎月の学校授業料を支払いながら大学進学費用を貯めてなくてはいけない、少し厳しい状況かと思います。

大学は公立、私立で学費がまったく異なりますが、初年度から2年生までの授業料をまかなうことを目標に、入学前に300万円ほど貯めたいもの。入学後の不足額は、本人のアルバイトと親のやりくりからなんとか捻出できるかと思います。これができるかどうかが、長男、次男の教育費が準備できるかというところにつながってきます。

児童手当も活用し、貯蓄額をもっと増やして

今のところ、家計は収入36.2万円ほどに対して支出33.6万円。2.6万円ほどの黒字です。この2.6万円をしっかり貯められるとよいのですが、冠婚葬祭などの臨時支出があると、すぐになくなってしまいます。もう少し貯蓄可能額を増やしたいところです。

今、相談者さんのご家庭では「なんとか長男の教育費を払って、私立中学校に通わせてあげたい」ということが支出の要になっているのでしょうから、そこに重点的にお金をかけるのであれば他の支出を減らしてバランスを取るしかありません。

今の相談者さんのご家庭で減らせそうな支出はなんでしょうか。考えてみてください。

客観的に見ると通信費は見直せそうに感じますし、生命保険の保障内容を見直すことも効果があるかもしれません。次男が3歳になると幼児保育無償化の対象になるでしょうし、トイレトレーニングが進むと、おむつ代分の支出が減らせます。そういった減らせる金額をしっかり取っておいて、教育費に備えることが大切です。

また、家計の中には児童手当が含まれていませんでしたが、それは貯めているのでしょうか? 児童手当は出産後、受給を開始してからずっと貯め続けると、中学卒業までに200万円を超えるほどになります。生まれた月により合計金額は異なってしまいますが、貯めた児童手当を将来の教育費の足しにすることも、一つの案です。

次男さんは私立に行く予定はないということですので、児童手当と学資保険で大学進学の費用はある程度、目処が立つと思います。高校までの学校外活動費、つまり塾や習い事の費用を家計から払うことができれば、次男が中学生の時に長男は独り立ちする年齢となるので、次男に不足する進学費用の準備もしていけるのではないかと思います。ですから今は、授業料を支払いつつ教育費を増やせる家計作りが先決です。

夫婦の老後資金にも目を向けて

ところで、相談者さんは教育費にばかり目がいっていますが、ご夫婦の老後資金についてはどのようにお考えでしょうか。

勤め先が退職金の出る会社であれば、ご主人やご自身の退職金を老後資金にしようと考えているのかもしれません。ですが、それだけで足りるでしょうか。

老後資金としていくら準備すべきかを知るために、年金はいくらもらえるのか、生活費は子どもが巣立てばいくらほどに収まるのかなどを計算して、毎月の不足額から、90歳、100歳まで生きるとした時に必要になる金額を計算してみましょう。

計算は単純に、(収入‐支出)×12ヵ月×(生きる年齢‐65歳)=老後の加不足金額です。

加えて、もし退職金がいくら出るのかがわかれば、老後資金の不足額は退職金を当てることで足りるのか、別に貯金しなくてはいけないのかもわかります。そこから、必要に応じて積立投資などを始めることを検討してもよいかと思います。ご夫婦ともに40歳を超えていますから、そろそろしっかり考えなくてはいけませんね。

「貯金100万円」をどう捉えるのか?

このようにお伝えしていくと、教育費、老後資金とお金がたくさん必要だと焦ってしまうかもしれません。ですが今は支出を減らし、貯金額を増やすことを第一の目標にして取り組んでみてください。

現状では貯金が100万円ありますが、「100万円もあるから大丈夫」と捉えるのか、「100万円しかないからもう少し頑張って増やさなくては」と思うのかでは結果がまったく異なります。

100万円は1年間の授業料でなくなります。相談者さんは、貯金のペースを上げて、貯金額を増やしていかなくてはいけません。まずはそこからです。

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