「プロ入りしてから一番振った」 “定位置”返り咲きを狙う燕・坂口の18年目の挑戦

18年目のシーズンを迎え精力的にバットを振るヤクルト・坂口智隆【写真:津高良和】

昨年は開幕3戦目で左手親指を骨折、復帰してからも「ずっと痛みが取れなかった」

 高津新監督を迎え最下位からの巻き返しを狙うヤクルト。青木宣親、山田哲人、昨季、新人王の若き大砲・村上宗隆の強力ラインナップに繋ぐ1番打者を虎視眈々と狙う男がいる。18年目のシーズンを迎えた坂口智隆だ。

「キャンプインから全ての面で全力でアピールしかない。18年目ですけど一番、体の状態がいい。バットも振れてる。これまで“はったり”もあったけど冗談抜きで一番、自分自身に期待してる年だと思います」

 第2クール初日となった5日も5日連続でランチ特打、そして室内ではマシンを相手にバットを振り込んだ。美しい打撃フォームで広角に打ち分ける打撃技術は36歳を迎える今季も健在だ。

 昨季は開幕3戦目に左手親指に死球を受け骨折。その後は復帰を果たしたが「去年はずっと痛みが取れなかった。バットを振っても守備でも違和感があった。自分の打撃はできてなかったですね」と22試合の出場に終わり悔しいシーズンを過ごした。

恒例となっている神戸自主トレでは「プロ入りしてから一番バットを振った」

 オフは恒例となっている神戸での自主トレで「プロ入りしてから一番バットを振った」と野球漬けの毎日を送り、休みの日は東京にトンボ帰りし骨折した患部のリハビリを行った。神戸と東京を往復する日を繰り返しトレーニングとケアに専念した。

 オリックス時代は不動の1番として2011年には175安打で最多安打のタイトルを獲得。ヤクルト移籍の2016年から3年連続で150安打以上をマークするなど年齢の衰えを感じさせない活躍を見せている。年男として迎える2020年シーズンも期待感しか持っていない。

「何番を打っても自分のできること、役割は変わらないんですけどね。出塁して後ろに繋いで活気、勇気を与えていく。このチームはいいバッターがたくさん揃っているから。“脇”の人間が持ち場をしっかりすれば凄い打線になる。1番……そういう姿であり続けたい」

 昨年の雪辱を晴らすため。オフにやってきた“野球漬け”の日々。自信と誇りは充実した表情が物語っている。

「どの球団も今は世代交代の流れが来てる。でも体の衰えを感じていない。年を感じるのは夜中に起きるぐらい(笑)。『あの年で坂口、こんな凄いの?』って見せたいし、全国の年男の人に希望と勇気を与えたい。もう1度、守備でも打撃でもタイトル、キャリアハイを。目標はでっかく持たんとね!」

 プロ18年目、36歳を迎える背番号「42」。長年、慣れ親しんだ“定位置”に返り咲くため死に物狂いでバットを振り続ける。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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