関西財界セミナーが開幕 経営者ら経済転換期の新しい企業像模索

デジタル時代の「ウェルビーイング」社会をテーマに議論した分科会(京都市左京区・国立京都国際会館)

 国立京都国際会館(京都市左京区)で6日、「第58回関西財界セミナー」が開幕した。技術革新や人口減少がもたらす経済・社会の転換期の中で、どんな企業経営やビジネスによって成長を持続させるのかが大きなテーマとなった。参加した企業経営者や起業家は互いに意見をぶつけ、新時代の企業像と追求すべき価値を模索した。

 デジタル社会と、心身の健康などを意味する「ウェルビーイング」をテーマにした分科会では、高齢化や人手不足問題の解決につながるデジタル技術とどう向き合うかが討議の軸となった。
 野村総合研究所の桑津浩太郎研究理事は、デジタル革新のけん引役が「発想」に強みを持つ米国から、大胆な「実装」を行う中国へ変化していると指摘。「発想と実装のバランスをどう取るか。日本は第3のモデルを模索すべき」と訴えた。
 これに対し、大川昌男堀場製作所常務は「産業界として日本の大学やベンチャー企業を支援するべきだ」と語った。だが日本の現状については「民間がばらばらに行っている方式を統合しなければ試行に終わる」(東和浩りそなホールディングス社長)など厳しい意見も相次いだ。
 人工知能(AI)活用でも活発な意見が交わされ、土井伸宏京都銀行頭取は、自行での導入例を紹介した上で「事業承継などでは経営者のやる気の部分も融資判断の中に入れる必要がある。リアルとデジタルのバランスが必要だ」と話した。
  ◇   ◇
 超高齢・人口減少社会を考えた分科会では、参加者を40歳以上と以下で区分し、世代間のグループ討議を試みた。大企業の社員を起業家として育てるフェニクシー(左京区)の施設出身者らが若手側で大勢参加し、ビジネスによる課題解決の糸口を探った。
 ニッセイ基礎研究所の前田展弘主任研究員は、超高齢社会において大切となる「自助・共助・公助」に加え、ビジネス面でサポートする「商助」が必要と指摘。長寿命化による「人生100年時代」の生き方もテーマとなり、若手起業家は「自分軸でキャリアを変える『職業・自分』の時代」「血縁でないファミリーを増やすことが重要」などとそれぞれの視点で提案した。
  ◇   ◇
 政治・経済対立を背景に緊迫する国際情勢への対応は、前年に続き重要議題に。分科会で、現代中国研究家・経済評論家の津上俊哉氏が米中対立を分析した上で「米国内でも米政府の対応に不満はある。米国が軌道修正したとき、日本は取り残されないか」と懸念した。脅威や警戒だけでなく、「われわれが失いつつある自由や積極性にあふれた中国企業を見習うべきだ」などとする意見も出た。

  ◇   ◇

 ベンチャーの起業から飛躍までをサポートする「エコシステム(経済の生態系)」がテーマの分科会では、関西の強みを生かし、大企業も参画した世界的なエコシステムの形成について議論した。関西の発展に欠かせないベンチャー支援の課題や将来像を話し合った。
 医薬品メーカーの日東薬品工業(京都府向日市)の北尾哲郎社長は「微生物による新薬開発に興味を示すのは海外の研究機関や会社。そういう中小企業は多い。投資や共同研究を持ちかけてほしい」と力説。電池開発ベンチャーのコネックスシステムズ(京都府精華町)の塚本壽社長は「製品規格で大企業と連携できたら成功率が上がる。企業トップと話す機会が欲しい」と話した。
 教育界からは学校法人立命館(中京区)の志方弘樹常務理事が「学生の起業を支援する取り組みを進め、ユニークなスタートアップが出ている。企業側も受け皿を用意してほしい」と求めた。京都大が設立した投資会社京都大イノベーションキャピタル(左京区)の宝田浩司社長は「中堅若手の人材の派遣と資金について、経済界からの支援をお願いしたい」と話した。
 出席者からはJR大阪駅北の再開発「うめきた」2期や大阪・関西万博への期待の声も相次いだ。京都銀行の柏原康夫名誉顧問は「関西はばらばらという議論は終止符を打つべき」と提言。「うめきたに研究機関を集中するなど、財政支援を得て、2府4県の連携を強化すれば、さらに大きく発展できる」と説いた。
 

 

© 株式会社京都新聞社