やはり深刻だった「消費増税」の影響、日本の景気はこの先どうなる?

2019年10月に消費増税が実施されてから4ヵ月が経過しました。政府は2014年のような消費の大きな落ち込みを防ぐため、軽減税率や幼児教育の無償化などを実施しました。

麻生太郎財務大臣は増税前の9月に「今回は税制面や軽減税率などの対策が消費者を気分的に下支えし、駆け込み需要は出ていない。駆け込み需要の後にその反動が出るわけだから、駆け込みがなければ反動も出てこないだろう」と述べていました。

しかし、消費増税後の消費データは弱いままとなっています。はたして、この先の日本の景気はどうなっていきそうか、考えてみたいと思います。


駆け込み小でも落ち込みハッキリ

国内小売業の12月の売上実績は、キャッシュレス決済の比率が高いコンビニこそ前年同月比▲0.3%と小幅な減少にとどまったものの、スーパーでは同▲3.3%、百貨店では同▲5.0%と大きく落ち込みました。

自動車販売も同様の状況で、1月の新車販売台数は同▲11.1%と大きな落ち込みとなっています。増税に伴う需要減への対策として10月以降に自動車取得税の廃止などが実施されているものの、効果は上がっていないようです。

順次発表されている小売り各社の1月の既存店売上高も、マイナスが継続しているものが目立ちます。

総じてこれまでの消費は前回の増税時とほぼ同様の落ち込みとなっており、「駆け込みがなければ反動も出てこない」というよりは、「大した駆け込みがなかったにもかかわらず、落ち込みはハッキリ出ている」といった状況です。

弱り目に新型コロナ肺炎が追い打ち

指標の落ち込みは消費だけにとどまりません。景気動向指数の基調判断は4ヵ月連続の「悪化」となり、景気後退局面にかなり近い状況となっています。景況感の戻りも鈍く、景気ウォッチャー調査では先行き判断DIが前月から低下するなど、増税後のマインドの腰折れを懸念させる内容となっています。

今後も景気のリスク要因が控えています。最大のものは、新型コロナウイルスによる肺炎の拡大です。

SARSの感染が拡大した2003年には、中国からの旅客者数が一時5分の1まで減少しました。新型肺炎による死者数がすでにSARSを上回っていることを考えると、2003年を上回る落ち込みが起こる可能性があります。

中国からの訪日旅客者数は、2004年の62万人から2019年には959万人に増加しました。インバウンド需要の減退が日本の消費に及ぼす影響も、かなり大きなものになりそうです。

キャッシュレス還元終了後はどうなる?

今年6月にはキャッシュレス還元が終了します。政府は切れ目のない対策を行うとし、東京五輪が終了する2020年9月からマイナンバーカードを用いた還元策を検討しています。

ただ、マイナンバー還元は保有者1人当たり総額5,000円が上限となり、決済手段当たり月1万5,000円(例外あり)が上限となる現行のキャッシュレス還元に比べると見劣りします。また、キャッシュレス還元の開始時に見られた各社のキャンペーンが、ほぼ終了している影響も懸念されます。

日本銀行による生活意識アンケート調査によると、消費増税で支出を減らさなかった回答者のうち、29%がキャッシュレス還元を理由として挙げており、終了の影響は大きそうです。そうしたこともあり、同調査では回答者の74%が「消費増税の影響は2020年の春以降も続く」と考えています。

弱い国内消費に対して、明るい見通しが見られるのは外需です。懸案だった米中通商交渉は第1弾合意がなされ、貿易問題への懸念は後退しています。また、半導体各社の5G(第5世代移動通信システム)関連投資が本格化し、日本の半導体関連輸出も大きく伸びています。

当面は、内需の弱さを外需の強さが覆い隠す展開を想定しています。しかし、底流としての日本経済の消費の弱さは続くと考えられ、特に東京五輪が終了する夏場以降の景気動向には注意が必要です。

<文:ファンドマネージャー 山崎慧>

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