これだけ知っていれば、もう戸惑うことなし/F1基礎用語辞典(6)

 F速やF1中継でよく目に&耳にする用語を総括。まだまだ紹介しきれなかったペナルティ(違反と罰則)関連をピックアップ。

■車検不合格
全車ともフリー走行が行われる日の10時から16時までの間に車検を受けなければならず、フリー走行、予選、決勝後にはそれぞれ無作為に選ばれたマシンに対してボディワーク寸法や剛性、燃料、車重などの検査が行われる。

ここで違反が発見されれば車検不合格となり、失格扱いで正式結果からは除外されることになる。チームには抗議の権利があるが、裁定が覆ることは少ない。なお車検は全車に対して全項目を調べるわけではないが、ランダムチェックを課すことで全車が規定を守っているという前提に立っている。

■車検無視
FIAはフリー走行や予選・決勝の終了後だけでなく、予選Q1やQ2セッション中に車検場のあるピットレーン入口でランダムにマシンを止めて車重計測を行っている(Q1とQ2で脱落したマシンはすぐにパルクフェルメに入らないため)。専用のシグナルで指示されたドライバーは速やかに減速して計測台上にマシンを止めなければならない。

ドライバーの見落としなどでこれを無視したかたちになった場合、罰則についてはスチュワードに委ねられているため明確な基準はないが、グリッド降格や失格などの重い罰則が待っている(※2019年F1第19戦アメリカGPのフリー走行2回目では、レーシングポイントのセルジオ・ペレスがFIAの車両重量測定の要求に応じなかったため、ピットレーンスタートのペナルティが科されている)。すぐに気付いてメカニックがマシンを車検場まで押していって計測した場合は容認されることもある。

■ピットレーン速度違反
ピットレーンは80km/h(一部は60km/h)の速度制限が設けられており、ピット入口と出口の速度計でだけでなく、一定間隔ごとに設置されたセンサー間の通過時間から平均速度を割り出されて監視されている。

各車ともピットリミッターを押すことで自動的にその速度になるが、ピット入口や出口で攻めすぎるとオーバーしてしまうこともある。違反した場合は1km/hにつき100ユーロの罰金が科されるが、決勝の場合はその度合いによってタイム加算ペナルティやドライブスルーペナルティが科されることになる。

■ジャンプスタート(フライング)
各グリッドに埋め込まれたセンサーで各車の動作が自動的に検知される。ただし2017年オーストリアGPで問題になったように、ギヤを1速に入れるなどでマシンが微妙に動いてしまうことに対応するため、ある程度の動きまでは誤差として認識されており、実際には0.2秒弱は早く動き出してもジャンプスタートと判断されない。

しかしシグナル消灯のタイミングはコンピュータによってランダム制御されているため、スタートのタイミングを予測することは不可能。ジャンプスタートを犯した場合はドライブスルーペナルティなど勝負権を失ってしまうほど重い罰則が待っている。

■ドライビング違反
故意に事故を引き起こすような危険なドライビングは違反行為とみなされる。インターナショナルスポーティングコードで規定され、具体的には接触、コースアウトを強いるもの、不当な追い越し妨害がこれに当たる。違反した場合はタイム加算、ドライブスルー、ストップ&ゴー、戒告、失格などあらゆるペナルティが対象となる。

ひとつのガイドラインとして、バトルの際に2回以上ラインを変更することは許されていない。しかし今年からバトル奨励の意味からブレーキング時のライン変更などは大きな事故につながらない限り、厳しくペナルティを科さないことになった。

■パルクフェルメルール違反
土曜の予選後はマシンのセッティングを変更することが許されておらず、予選と同じ状態で決勝に臨むことができないマシンはピットレーンスタートが義務づけられる。ただしパーツの整備や交換は認められており、FIAに申請して行うことが可能。だが同じスペックのパーツがなかった場合は、古い仕様への交換でもパルクフェルメ規定違反となってしまう。

■パワーユニット基数制限超え
パワーユニットは主要6コンポーネント:ICE(エンジン)、TC(ターボチャージャー)、MGU-H(熱エネルギー回生システム)、MGU-K(運動エネルギー回生システム)、ES(エネルギー貯蔵装置)、CE(制御ユニット)が各ドライバー年間で規定の基数までしか使うことが許されていない。この制限を超えた場合、コンポーネントごとに5グリッド降格ペナルティが科される。20年はICE、TC、MGU-H、MGU-Kがが年間3基、ES、CE、年間2基までに制限されている。

規定数を上回る最初のパーツ投入時には10グリッド降格、それ以降は5グリッド降格が加算される。計15グリッド降格以上のペナルティとなる場合は、グリッド最後尾スタートとなる。

なお、1グランプリ週末に投入できるコンポーネント数に制限はないが、その週末の最後に使用したもの以外は翌戦以降の使用は禁止(2017年より)。これによってペナルティ消化による『ストック』の蓄積は制限されている。

■ギヤボックス交換
ギヤボックスは6戦連続使用が義務づけられており、これに違反した場合は5グリッド降格ペナルティが科される。ただし対象となるのは予選・決勝のみで、金曜フリー走行には専用のギヤボックスを使用することができる。また前戦でリタイアした場合は次戦に新品を投入することが可能。ギヤボックス内のギヤやドッグリングなど、内部パーツに損傷があった場合、FIAが承認すればそれ単位の交換はペナルティなしで可能。

■サバイバルセル交換
サバイバルセルつまりモノコックの交換に規制はないが、予選後のパルクフェルメ管理下ではモノコック交換を行うと別の車体と見なされるためピットレーンスタートが義務づけられる。

© 株式会社三栄