被告の精神鑑定した医師が証言、事件への大麻の影響否定 やまゆり園公判

横浜地裁

 県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)で2016年7月、入所者ら45人が殺傷された事件で、殺人などの罪に問われた元職員植松聖被告(30)の裁判員裁判の第12回公判が7日、横浜地裁(青沼潔裁判長)であり、被告の精神鑑定を行った男性医師が証人として出廷した。医師は「『意思疎通の出来ない障害者を殺す』という動機は被告個人の強い考えに基づくもので、妄想ではない」と証言し、被告が常用していた大麻が事件に与えた影響を否定した。

 医師は、被告の起訴後、弁護側の請求を認めた地裁からの依頼で鑑定人を務めた。検察側はこれまでの公判で「被告の精神状態は正常だった」としており、医師の証言は検察側の主張を追認する形となった。

 公判で医師は鑑定結果を報告し、被告についてパーソナリティー障害と大麻使用障害と診断したと説明。一方で、被告が事前に計画した内容通りに襲撃を決行し、殺傷方法を犯行中に変更するなど計画的かつ合理的な行動が一貫している点などから、「大麻の影響は行動に影響を与えないほど小さい」と述べた。

 被告の犯行動機については「病気による発想ではなく、園での勤務経験や世界・社会情勢を見聞きしたことにより形成されていった」と指摘した。

 起訴状によると、被告は16年7月26日未明、やまゆり園に侵入し、包丁で突き刺すなどして入所者19人を殺害したほか、職員2人を含む26人に重軽傷を負わせた、とされる。公判は被告の刑事責任能力の有無と程度が争点。弁護側は被告は大麻など薬物の乱用による精神障害の影響で、善悪の判断や行動をコントロールする能力を失った心神喪失状態だったとして、無罪を主張している。

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