マスクを探して25キロ、実際にどこで売られていたのか

マスクがどこにも見当たらない――。新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受けて、大手メディアを中心に、こうした報道が連日繰り広げられています。

フリマアプリでは通常の何倍もの高額でマスクを転売されるなど、パニック・バイの様相も呈し始めている現状。はたして、マスクはどこにも売られていないのでしょうか。

「MONEY PLUS」では、東京都内を(1)都心の住宅街、(2)都心の繁華街、(3)郊外の住宅地という3つのエリアに分類。4時間をかけて、約25キロメートルを移動し、実際の販売状況を調べてみました。


ビジネス街のチェーン店は品切れ

取材をスタートしたのは、2月7日の午後3時30分。ネット上には「商品が入荷した直後の午前中が狙い目」との情報もあり、もう品切れになっているのではないかという不安を抱きつつ、オフィスを出発しました。

最初の取材エリアに選んだのは、JR田町駅から東京メトロ南北線の白金高輪駅にかけてのルート。田町駅前はオフィス街ですが、慶應義塾大学に近づくと、徐々に学生街から住宅街へと移り変わっていきます。近隣で働くサラリーマンや学生向けに需要も相応にあるとみられ、大通り沿いを中心に大手ドラッグストアチェーンの店舗が点在しています。

駅前から大学に向かう商店街にあるドラッグストアでは、店頭に赤いインクで「マスク売り切れ」と書かれた黄色い貼り紙が貼り出されていました。他のドラッグストアをのぞいてみても、マスクが置かれていたであろう棚はスッカラカン。代わりに「入荷予定は未定です」というシールが貼られていました。

店頭には「マスク売り切れ」の張り紙が…

国道1号線を白金高輪方面に向かって歩くと、ホームセンターが見えてきました。こちらにも入ってみましたが、売り場の2階に向かう階段の途中に「申し訳ございません。各種マスクは品切れです」との張り紙が……。

マスク発見だが、1枚100円超

やはり、都心部は厳しいか。そんな思いを抱きながら、さらに白金高輪方面に歩を進めると、マツモトキヨシ白金高輪店にたどり着きました。期待薄で店内に入ると、入り口のすぐ脇のコーナーにマスクが売られているではありませんか。

売られていたのは、3枚入りで500円(税込み、以下同)以上という高性能マスクが2~3種類。ただし、残っていたのは小さめサイズがほとんど。「お一人様1点限り」という制限もありました。

かろうじて残っていた普通サイズを購入。それまで付けていたお徳用の箱入りマスクから高性能マスクに付け替えると、かなり厚手です。時節柄、お徳用に比べるとかなりの安心感がありました。

ただ、1枚当たりの価格は100円を超えます。しかも、購入できるのは3枚入りを1点のみ。急場をしのぐには良いですが、新型肺炎が終息するまでこの価格帯のマスクを買い続けるのは、あまり現実的ではないかもしれません。

ついに割安マスクを発見

もう少し安価な、できれば箱入りのお徳用マスクは売られていないものか。より需要のある場所であれば、商品の入荷サイクルも早いため、もしかすると売られているかもしれない。そんな考えから、次の取材場所に選んだのは、都内有数の繁華街がある新宿駅周辺。後背地に高層ビル群やホテルを抱え、ドラッグストアが集積している新宿西口へと移動しました。

白金高輪と同じマツキヨの甲州街道沿いの店舗に入ってみると、一般的なマスクは売られておらず、蒸気が出るタイプの商品が売られていました。ただ、この商品も1枚当たりの単価は100円超え。日常使いは難しいと考え、他の店舗を探してみます。

ロータリーに向かう道路沿いのダイコクドラッグに入りましたが、この店舗ではマスクは見当たらず。しかし、1区画奥まったところにある同じチェーンの店舗に向かうと、店頭に段ボール箱を積んで、マスクが売られていました。

新宿西口のドラッグストアの店頭でマスクを発見

しかも、価格は7枚入りで327円。お徳用ではなく、1人1点限りという制限はあるものの、1枚当たりだと50円以下です。これなら日常使いができそうです。商品を持ってレジに並ぶと、同じマスクを手にしたお客さんの姿がチラホラ。やはり、このくらいの価格帯の商品を探している人が多いことがうかがえます。

マスク売上額は例年の約9倍に

市場調査会社インテージの調べによると、1月27日から2月2日の1週間に全国のスーパー、コンビニ、ドラッグストアなど約4,000店で販売されたマスクの売上額は187億円。実に、例年の8.9倍に上ります。

この売上額は、インテージが1996年に週次調査を開始してから過去最高だといいます。この1週間前に当たる1月20日から26日は、例年の3.2倍の売上額でした。いずれも2009年の新型インフルエンザの流行時を上回っているそうです。

売れているのはマスクだけではありません。うがい薬や手指消毒剤、ぬれティッシュなど、他の除菌関連商材も平年を大きく上回る売り上げの伸びとなっています。特に、マスク用スプレーや手指消毒剤はもともと使う人が少なかったこともあり、例年の10倍を超える伸びがみられます。

郊外の渋滞街では?

話を再びマスク探しに戻します。比較的割安な袋入りマスクが見つかったものの、7枚入りで1人1点限り。感染予防には1日に2~3回付け替えたほうが良いとの情報もあり、やはり箱入りのお徳用が欲しいところです。

家庭での需要が多いであろう、郊外の住宅地を探してみることにしました。選んだのは、大手ドラッグストアの本社や、大手ディスカウントストアの1号店がある、東京・府中市。本社のお膝元や創業の地であれば、仕入れも強化されているのではないか、という読みです。

しかし、京王線の府中駅周辺のドラッグストアを数店探してみましたが、いずれも品切れ。1店舗だけ、蒸気マスクやガーゼマスクが売られていましたが、1人2点まで。箱入りのお徳用は見当たりませんでした。

駅を離れて、大手ディスカウントストアに向かいましたが、こちらでも売られていたのは蒸気マスクのみ。結局、今回の取材でお徳用マスクに出合うことはできませんでした。

どうすればマスクと出合えるのか

今回の取材で訪れた店舗の数は12。このうち、マスクの取り扱いがあったのは2店舗。蒸気マスクも含めると、4店舗という結果でした。

大手メディアが報じているような、どこもかしこも品切れという状況ではないことがわかりました。また、ネット上で言われているように、開店直後でないと売り切れになってしまうわけでもないようです。

取材結果を総合すると、需要の多い郊外部では争奪戦が激しそう。一方、都心部では商品仕入れのサイクルが早いため、タイミングさえ合えば、マスクに出合える可能性は高いように思われます。特に、大通り沿いなどの目立つ立地ではなく、少し奥まった店舗のほうが商品も残っていそうです。

何よりも重要なのは、雰囲気に流されてパニック・バイに陥らないこと。都心などに出かけたついでに、目についたドラッグストアをのぞいてみてマスクが見つかれば、こまめに買いだめしておく。そんな地道な対応が望ましいように感じられました。

© 株式会社マネーフォワード