風水害対策を強化 台風教訓に神奈川県、住宅再建制度を恒久化

神奈川県庁

 昨秋の台風で神奈川県内各地が甚大な被害に見舞われた教訓を踏まえ、県は7日、風水害対策に重点を置いた新戦略を打ち出した。国支援の対象外となる住宅被害に対する県独自の支援策を恒久化するほか、水害や土砂災害の軽減に向けたハード面の整備も加速させる。黒岩祐治知事は「かながわ気候非常事態宣言」を掲げ、2020年度一般会計当初予算案に総額398億円を計上した。

 県内で観測史上最多を記録するなど各地に豪雨をもたらした台風で、国は県内の一部自治体で被災者生活再建支援法を適用。しかし、適用外の地域では同程度の住宅被害があっても支援を受けられない「地域格差」が生じていた。

 この状況を受け、県は国と同等の支援金を独自に支給。20年度以降も同制度を恒久化し、法のセーフティーネットから漏れる被災者を救済することを決めた。認定世帯には最大300万円が支給される。

 また、情報伝達が遅れるなどの課題を残した城山ダムの緊急放流を踏まえ、新たな仕組みを構築する。瞬時に一斉送信できるビジネス向けLINE「ラインワークス」の導入に向け市町村と調整を進める。

 一方、ハード対策は、大雨による氾濫の危険がある河川で、かさ上げコンクリート工事を実施。20年度は山王川と目久尻川、境川に施工する。

 急傾斜地の土砂災害警戒区域では、社会福祉施設の所在地や過去に崖崩れがあった場所などを中心に、従来の5割増に当たる年間15カ所程度で擁壁などを整備する。倒木などが相次いだ鎌倉市内で、危険性を踏まえた木の伐採などの緊急対策も実施する。

 黒岩知事は「世界でも災害が頻発し、昨年のような巨大な台風が毎年襲ってきてもおかしくない」と指摘。「水防災戦略」を最優先に位置付けたと説明した。

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