人間なら100歳 森きららのライオン「アサヒ」21歳 長寿の秘訣は?

展示場で、走るトレーニングをするアサヒ

 佐世保市船越町の九十九島動植物園(森きらら)の雄ライオン、アサヒは、21歳になった。人間でいうと100歳に近いが、元気な姿を見せる人気者だ。長寿の秘訣(ひけつ)を知りたくて一日の生活に密着してみると、飼育員の工夫や努力が垣間見えた。

 午前9時。「おはよう」。担当飼育員の高尾久美子さん(25)が、おりの前で声を掛けると、「ガウ」と小さくほえる。展示場に出るのは午後から。午前中は獣舎で過ごす。
 アサヒは、朝食に出た牛肉をぺろりとたいらげた。牛肉と鳥肉を1日当たり計4.7キロ食べるほど、食欲は旺盛だ。
 水分は多めに与えなければならない。昨年、尿を調べたところ、結石の疑いが判明。当初はミルクを与えたが、口にしなかった。試行錯誤の末、今は水に加え、肉汁や血液を混ぜた「特製ジュース」を飲ませている。
 最も気を付けているのは、骨折などのけがだ。治療するためには麻酔が欠かせないが、高齢のため麻酔の使用にはリスクが高い。このため予防を徹底している。
 獣舎には高さ約1.3メートルの木製の台があり、アサヒはここに寝転ぶことが多い。台の表面を見てみると、碁盤の目のように切り込みが細かく入っている。爪が引っかかり、落下を防ぐ仕組みだ。
 正午すぎ。いよいよ外に出る。展示場までの二重扉を順に開き、足元の通路を進ませる。「アサヒ、ゴー」。高尾さんの声で勢いよく飛び出した。
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 アサヒは1998年10月10日に森きららで生まれた。家族で暮らしていたが、2016年に母親ダイが死んでから、1頭で過ごしている。
 夜行性のため昼間は寝ていることが多い上、園では単調な生活になりがちだ。動かずに筋力が落ちると、食欲がなくなり、足腰も弱って動けなくなってしまう。そこで、飼育員はなるべく刺激を与えている。
 高尾さんが展示場に姿を見せると、アサヒはすぐに立ち上がって興味を示した。外ではほぼ毎日、走るトレーニングをしている。笛や腕の合図で左右に走り回る。今は並走しなくても自ら駆けだすようになった。強制にならないよう、状態を見ながら進める。「もっと速く走れるはず」。高尾さんは期待を寄せている。
 一日の世話を終えた高尾さんに、アサヒの魅力をあらためて聞いた。「普通にイケメンだと思う」。運動の効果が出ているのか、園でも最近「若々しくなった」と評判らしい。高尾さんは「初めてライオンを見る子どもも訪れる。よぼよぼだったら嫌でしょう。まだ『若い』今のうちに、できることは何でもやってあげたい」と笑顔を見せた。

アサヒの「特製ジュース」を用意する高尾さん
獣舎にある木製の台。アサヒの落下防止のため切り込みが入っている

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