「守りの名手」巨人キャンプ人気の新アトラクション 仕掛け人は元巨人投手

読売巨人軍ファン事業部に所属する小山雄輝さん【写真:荒川祐史】

巨人と楽天でプレーした長身右腕・小山雄輝さん、2012年は日本一に貢献

 2020年の巨人の春季キャンプ。土日祝になると“インスタ映え”スポットに行列ができる。中でも注目されているのが体験型新アトラクション『飛んでチャレンジ!守りの名手 supported by セノン』だ。

 昨年の7月5日のDeNA戦で、巨人・丸佳浩外野手が東京ドームの左中間フェンスの広告「守りの名手セノン」前でスーパーキャッチを披露した。その写真が各メディアで報じられて話題を呼んだのだが、小山さんはそこに目を付けた。特設ブースを作り、同じようなイメージのフェンスを設置。グラブにボールをセットしてからファンがダイビングキャッチに挑戦する。それを写真に収め、写真投稿アプリ「インスタグラム」にハッシュタグ「#守りの名手」を付けて投稿。その中から丸が優秀な作品を選び、サイングッズをプレゼントする。

 合同自主トレ中には実際に丸も挑戦。地点には衝撃を和らげるためのクッションを設置しており、安全性も確保されている。インスタグラムではたくさん“ファインプレー”が投稿されている。このアイディアを実現させたのが巨人、楽天でプレーした現・読売巨人軍ファン事業部に所属する小山雄輝さんだ。

 小山さんは2010年ドラフト4位で天理大から入団した投手。190センチ近い長身から150キロの直球とカーブやフォークを武器にした好投手だった。1年目から1軍に登板し、2012年にはプロ初勝利を挙げるなど、チームのリーグV、日本一を経験。アジアシリーズの初戦の先発を任された。2016年に楽天へトレード移籍。2018年に現役を引退し、昨年から巨人の職員としてファンとチームを繋いでいる。今キャンプでもファンからサインを求められることも多い。

 昨年7月、球団内のMLB視察のメンバーに選ばれ、小山さんは渡米。クリーブランドで行われたオールスターや、ニューヨークでヤンキース戦などを観戦した。球場内のファンサービスイベントで参考になるものはないかと見て回った。

選手、ファン双方の気持ちに寄り添う小山さん「両者の満足度をもっと高めていきたい」

「(アメリカのファンサービスなどは)スケールが大きかったですね。中でも日本でもできるものがないかと思って探しました」

 そこで、ダイビングキャッチをした写真を撮って、SNSにアップするというアトラクションを目にした。その光景と、丸のスーパーキャッチとセノンの看板広告が小山さんの頭の中で1本につながった。「ぜひ、これを日本でやりたい」――。

 帰国後、営業担当と組んで、今キャンプの実施に向けて動いた。セノンへの協賛を得られた後は、ファンの安全性を守ることを第一に考えて、設営をした。丸へは、サイングッズの提供も依頼。「いいですね、楽しそう」と快諾してくれた。

 宮崎では11日(休養日の5日、10日は実施なし)まで実施され、15日から25日はセルラースタジアム那覇の前にも設営される。中学生以下の参加者先着700人には、丸のスーパーキャッチ場面のベースボールカードをプレゼントしている。写真を撮り、カードを受け取った子供たちの嬉しそうな顔が印象的だった。

 ファン事業部で仕事をする小山さんは、選手の気持ちもファンの気持ちも分かるため、試行錯誤しながら、イベントを考えている。「両方が『やってよかった』と納得してくれることをやりたいんです。ファンが良くても選手が2度とやらないとなっては意味がないですし、選手が『これくらいの簡単なものならいい』と言っても、ファンが『つまらない』ではいけません。難しいですけど、両者の満足度をもっと高めていきたいですね」

 現役時代から意見、考えはしっかりしていた小山さん。球場にファンが足を運んでくれるための努力は続く。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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