可能性広げた出合い バスケットボール3人制(3x3)・永田萌絵 2020に懸ける長崎県勢 File.13

「応援してくれる人たちのためにも頑張りたい」と語る永田=東京都内

 東京五輪で新種目として採用されたバスケットボールの3人制「3x3(スリーエックススリー)」。スピーディーでダイナミックな攻防や個人技が観客を魅了する。5人制の大学ナンバーワンプレーヤーとなった永田萌絵が、3x3と出合ったのは2019年春。これが東京五輪出場の可能性を広げた。3月の五輪予選に挑む日本女子は現在、代表候補9人による第7次強化合宿を実施中。「評価してもらっているスピード、機動力、ディフェンスで、チームに貢献できるところを見せたい」。佳境に入ったメンバー争いを、強い覚悟で勝ち抜くつもりだ。

■充実の4年間

 小中学生のころは県大会の4強が最高成績。長崎商高時代に出場した全国大会も国体だけだったが、当時から素材の高さは評価されていた。3年でU18日本代表候補入り。卒業後は大学バスケ界で台頭してきていた東京医療保健大に進み、初めてハイレベルな“競争”に飛び込んだ。
 振り返ると、高校までは「身体能力に頼ってやっていた」。そんな天才肌のプレーヤーが「どうしたら成長できるか」を考えるようになり、行動が変わった。体のケア、自主練習、自らのプレーの分析…。「毎日積み重ねないと力にならない」。欠かさずに続けるようになった。
 努力は実を結び、2年の春から徐々に試合に出始めると、秋からはスタメンに定着。12月の全日本大学選手権(インカレ)でチームの初優勝に貢献した。そこからユニバーシアードやA代表候補の強化合宿に呼ばれるようになった。
 これでまた一つ視野が広がり、意識も上がった。3年の夏、日本B代表で臨んだジャカルタ・アジア大会に出場。4年時は主将としてチームをインカレ3連覇に導き、自らも2年連続でMVPを獲得した。「想像よりも、かなり充実した」大学4年間を過ごした。

■U23で世界一

 「3x3で五輪を目指してみないか」。大学の恩塚亨監督にそう言われたのは、東京五輪を翌年に控えた4年の春。5人制の各種代表活動を経て、おぼろげながら「五輪」を意識していたころだった。「その道もあるんだ」。3人制の代表候補合宿に初参加した。
 1回目は楽しかった。だが、2回目は実業団メンバーとの差を痛感した。以降、大学とのスケジュールが合わずに、合宿や国際大会は不参加。「これは厳しいかも…」。諦めかけていた10月、タイミングが合って、3x3のU23ワールドカップ日本代表の招集に応じることができた。
 3人制で初めての対外試合だったが「呼んでもらったからには」と懸命に順応した。鋭いドライブインなどの持ち味を存分に発揮。得点ランキング5位の活躍で世界一メンバーに輝き、3x3の“新星”として注目されるようになった。
 次のステージはWリーグのトヨタ自動車。早くチームの戦力になって、いつかは5人制で日の丸をつけたいと思う。でも、その前に果たしておきたいのが「3x3で東京五輪」。この出合いに感謝して、まずは一つ目の夢の扉を開きにいく。

 【略歴】ながた・もえ 春日小4年生でバスケットボールを始め、清水中、長崎商高を経て東京医療保健大に進学。全日本大学選手権は2年から3連覇に貢献、3年から2年連続でMVPを受賞した。2018年ジャカルタ・アジア大会銅メダル、19年ユニバーシアード4位、3x3のU23ワールドカップ優勝メンバー。ポジションはフォワード。174センチ、65キロ。22歳。実家は110年続く佐世保市の菓子店「さいかい堂」で、一番のお薦めは「苺(いちご)タルト」。

 

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