TCR規定ツーリングカー・シリーズの最高峰に位置づけられるWTCR世界ツーリングカー・カップは、2020年開幕戦に予定されていたモロッコ・マラケシュでの市街地戦をキャンセルすると発表した。シリーズを運営するユーロスポーツ・イベント代表はモロッコを代表するドライバーのひとり、メディ・ベナーニのシート喪失が開催中止の要因となったと説明している。
2月5日にフランス・パリで開催されたFIAツーリングカー・コミッションの会議では、長年開幕戦を務め、シリーズの前身であるWTCC世界ツーリングカー選手権時代から10年以上に渡りツーリングカーレースを開催してきたマラケシュでの開催中止という苦渋の決断がなされた。
これに伴い、シリーズの開幕戦は4月26〜28日のハンガリー・ハンガロリンクが務める。また代替レースは7月にオーストリア・ザルツブルクで開催されることも決定された。
モロッコ戦中止の要因に挙げれられたベナーニは、当初セバスチャン・ローブ・レーシング(SLR)から2020年もWTCRへ参戦するとみられていた。
しかし、SLRは2月に入ってから使用するマニュファクチャラーであるフォルクスワーゲン・グループの示した「内燃機関を使用するモータースポーツ・カテゴリーの活動には関与しない」との方針に従い、「2020年のグリッドにマシンを並べることはないだろう」との意向を示していた。
リベイロ代表は「残念ながら、モロッコのトップ・レーシングドライバーであるメディ・ベナーニが、WTCRでレースを戦う機会を失ってしまった」と説明する。
「彼の参加とサポートなしでイベントを運営することは現実的に不可能で、これまでのマラケシュ戦と同じ水準を保つことが難しくなったことがキャンセルの要因だ」
ベナーニはモロッコ政府から手厚い支援を得てキャリアを積んできたこともあり、ベナーニがシリーズから去ることでマラケシュのムーレイ・エル・ハッサンに設けられた市街地サーキットも、その姿を消すこととなった。
これによりWTCRの2020年シーズンは開幕が3週間ほど遅れる形となったほか、モロッコ戦の代替レースとして7月24〜26日にはオーストリアの高速サーキットがシリーズに復帰する。
「ザルツブルクリンクは、まるでツーリングカーレースのために作られたようなトラックで、WTCCではいつもシーズンのハイライトに位置付けられるラウンドとなった。欧州の中央に位置するロケーションも参戦チームにとっては理想的で、トラックとのパートナーシップを更新し、オーストリアのファンにWTCRの興奮を提供できることにワクワクしている」と続けたリベイロ。
7月にザルツブルクが追加されたことでカレンダー全体のロジスティクスにも変更が加えられ、寧波での中国ラウンドは欧州中部からの陸送に対応するため9月4〜6日開催から9月18〜20日に変更された。
なお、この中国ラウンドについては新型肺炎の状況を注視しながら、開催可否が決定されるとのこと。
2020年のWTCR開催スケジュール改訂版は、WMSC世界モータースポーツ評議会(ワールド・モータースポーツ・カウンシル)で承認を受けた後、確定する。
Round Day Circuit
1 4月24〜26日 ハンガロリンク(ハンガリー)
2 5月20〜23日 ニュルブルクリンク北コース(ドイツ)
3 6月5〜7日 スロバキアリンク(スロバキア)
4 6月19〜21日 ビジャレアル(ポルトガル)
5 7月3〜5日 アラゴン・モーターランド(スペイン)
6 7月24〜26日 ザルツブルグリンク(オーストラリア)
7 9月18〜20日 寧波国際サーキット(中国)
8 10月16〜18日 インジェ・スピーディウム(韓国)
9 11月19〜22日 ギア・サーキット(マカオ)
10 12月10〜13日 セパン・インターナショナル・サーキット(マレーシア)