日本農業賞 松﨑さん夫妻 大賞 小値賀の肉牛繁殖農家 「個人経営の部」低コスト、省力化達成

日本農業賞「個別経営の部」で大賞に輝いた松﨑秀利さん(左)、弘子さん夫妻=小値賀町前方郷

 第49回日本農業賞(全国農業協同組合中央会など主催)の「個別経営の部」で、長崎県北松小値賀町前方郷の肉牛繁殖農家、松﨑秀利さん(63)、弘子さん(58)夫妻が最上位の大賞に輝いた。遊休地での放牧やITの活用に取り組み、低コスト、省力化を達成したことが評価された。

 日本農業賞は、経営や技術の改善に意欲的に取り組み、地域発展に貢献した農業者らを三つの部門で表彰している。「個別経営の部」には全国92件の応募があり、書類審査や現地調査を経て大賞3件、特別賞1件などを選んだ。県内の大賞は3部門を合わせて8件目となった。
 秀利さんは小値賀町出身。県立北松西高を卒業後、福岡市で就職。家業の肉牛繁殖業を継ぐために2007年に帰郷した。当初は牛舎で飼う20頭だけだったが、近隣の農家から借りた遊休地を活用した放牧に取り組み、現在は繁殖雌牛を75頭まで増やした。
 約6ヘクタールの土地に放牧することで牛舎建設など設備投資費を抑えた。飼料作物はほぼ自家製でまかないコスト減を実現。子牛を生後3日で母牛から離して母牛の産後回復を早め、分娩(ぶんべん)間隔を短縮している。分娩時の事故を防ぐため、監視カメラの映像をスマートフォンで確認できる機能を利用し、分娩室の様子を自宅や出先で確認する。
 夫妻は新規就農者の支援にも尽力。秀利さんは「小さな島で大きな賞をいただき光栄だ。農業の担い手が増えるように今後もお手伝いしたい」と受賞を喜んだ。弘子さんは「わが子のように牛に愛情を注ぐことが、注意深い観察につながると思う」と語った。
 表彰式は3月7日、東京都内である。

牛の分娩室の様子を確認するスマートフォンの画面

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