衛生用品の品薄続く 長崎県内経済にも影響 宿泊や飲食 不振

マスクや消毒液を買い求める人が相次ぎ、完売状態が続く売り場。花粉症の季節も控えるが入荷の見通しが立っていない=長崎市内(写真は一部加工)

 新型コロナウイルスの感染が広がる中、その影響は長崎県内経済にも及んでいる。街中でマスクなど衛生用品の売り切れが続き、従業員用の確保に頭を悩ます事業所も。長崎ランタンフェスティバルの集客が落ち込み、宿泊施設や飲食店の売り上げは低迷。一方、中国に進出している県内企業は現地拠点の一時休業を迫られている。

 長崎市浜町のドラッグストアには9日、1箱50枚入りマスクが70箱入荷。1人1箱限定で販売したが、開店後10分足らずで完売した。開店前に客が並ぶので、在庫切れの紙を張って知らせている。除菌シートやアルコール消毒液まで品薄になり、店長は「こんな状態は初めて。これから花粉症やインフルエンザ予防でマスクが必要な人が増えてくる。安定して仕入れたいが先が読めない」と嘆く。
 同市新地町の薬局はランタンフェス開始直後からマスクの欠品が続き、多い日で50件の問い合わせがあった。ある観光施設は備蓄していた従業員用マスクが底をつきかけ、担当者は「店を回って探しているが見つからない」と話す。
 ランタンフェスは新地中華街にとって書き入れ時だったが、地元ホテルの一つは東京、大阪からの個人客の解約が相次ぎ、担当者は「『中国人が多い』という風評被害があるようだ」。例年より客足が3割減ったという中華料理店は「本来なら一番忙しい時期だったのに残念。今後の卒業旅行シーズンも控える動きが続かないか」と気をもむ。
 日銀長崎支店の聞き取りに対し、小売事業者は「地元客が人混みを避けて減った」と分析。クルーズ船の団体客送迎をキャンセルされた運輸事業者は「先行きも一部の予約が保留になっている」という。
 中国に展開する企業も対応を迫られている。水処理プラントメーカー協和機電工業(長崎市)は、中国・深セン市で設計や工事を担う現地法人事務所を当局の指示に従い閉鎖中。防疫の指定条件をクリアして許可を得なければ再開できない。日本人出向者4人は春節(旧正月)を機に帰国させたが、うち1人は再開準備のため戻った。担当者は「再開の見通しは立っていない。社員を守るためにもしっかり情報収集する」と話した。
 同じ深セン市に工場がある半導体メーカーのイサハヤ電子(諫早市)も再開手続きを急ぐ。「現地の状況は刻々と変わっている」として駐在者への注意喚起を徹底し、出張も必要最小限に抑える。
 日銀長崎支店によると、中国から原材料を輸入している食料品製造事業者は「1カ月分の在庫を確保しているが、現地の生産や物流が滞れば影響が生じかねない」と懸念。下田尚人支店長は「中国での生産活動、消費活動で制約が長引いた場合、本県の製造業に影響が出る可能性は否定できない」と事態の行方を注視する。

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