「熱狂なき高騰」によりゆがむマンション市場。デベロッパーは物件に付加価値を与え、独自色を打ち出す。それぞれの戦略を追った。
目の前の光景が瞬時に切り替わった。「11階のバルコニーにお連れしました」。抜けるような青空の下に横浜の街並みが広がる。「周囲に高層の建物が少ないので『抜け感』を存分に味わえます」。営業スタッフの言葉が自信にあふれる。
三井不動産レジデンシャル(東京都)が横浜市保土ケ谷区で分譲中の「パークホームズ横濱星川」。完成前の物件近くに販売拠点を構え、バーチャル・リアリティー(VR)で「実物」を体感できるコーナーを設けた。
「マンションギャラリーの役割は大きく変わった」
同社の宮本一仁所長はそう話す。昨今は来場者の多くがインターネットで情報を入手してから足を運んでくる。
「求められているポイントに絞り、技術を駆使して簡潔にご案内している」。かゆいところに手が届く営業スタイルが、成約に至るまでの期間を縮めているという。
「近未来の晴海へようこそ」
販売センターの一角に、23棟ものマンション群を再現した巨大模型が現れた。タブレット型端末をかざすと、街中に飛行機が降り立つ動画が流れる。「道幅の広さを視覚的に表現しています」。隣に立つ営業担当者が説明を加える。
昨年分譲が始まり、業界の話題をさらった「晴海フラッグ」。東京五輪・パラリンピック期間中に選手が滞在する東京・晴海の施設をそのまま残し、5千戸以上の住宅に衣替えする壮大な計画だ。
大手不動産デベロッパーがそろって名を連ねる一大プロジェクト。関係者は胸を張る。
「最先端の技術が詰まった過去に例のないギャラリーです」
来場者の心をつかんで離さないマンションの販売現場。だが、足元の市場では「異変」が起きている。