「暴行していない」 厚木乳児死亡事件の公判、父親が否認

横浜地裁小田原支部

 厚木市内のアパートで2016年12月、生後1カ月の乳児が揺さぶられて頭部に重傷を負い、半年後に死亡した事件で、傷害の罪に問われた父親の被告(27)の初公判が31日、横浜地裁小田原支部(西野牧子裁判官)であった。被告は「暴行していない」と述べ、起訴内容を否認。弁護側は、乳児が負傷した原因は別にあるとして無罪を主張した。

 検察側は冒頭陳述で、乳児に先天性の疾患がなく、1カ月健診でも異常は認められなかったと指摘。受傷後の脳の状態や症状から、「大人が脇を持って1秒間に3、4回以上往復させる程度に激しく揺さぶるなど暴行されたことで脳が損傷を受けた」と述べた。

 弁護側は「被告が寝返りを打った際に肘が頭に当たって傷害が生じた可能性がある」と反論。乳児の顔色が悪くなるなどしたため被告が揺さぶると、乳児は目を開けたとした。

 証人尋問で被告の妻は、肘が当たった後に乳児の顔が青白くなり息をしなくなったと証言。被告の揺さぶり行為には、「助けるためなので危ない感じはなかった」と振り返った。被告人質問も行われ、被告は肘が当たった際に衝撃を感じたとし、揺さぶり行為に関しても「強くはない」と暴行を否定した。

 起訴状などによると、被告は16年12月17日ごろ、自宅で生後1カ月の長男を両手で激しく揺さぶるなどの暴行を加え、脳機能障害を伴う硬膜下血腫などのけがを負わせた、とされる。長男は脳が萎縮するなど重篤な状態に陥った。一時退院したものの、半年後に死亡した。県警は19年1月に傷害致死容疑で被告を逮捕したが、横浜地検小田原支部は揺さぶり行為と死の因果関係を証明できないとして、傷害致死罪の適用を見送った。

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