出てきた! 731部隊に関する公文書 初めて国が認めた実態解明に繋がる資料 彼らは本当に人体実験を繰り返していたのか!?

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日本のみならず、マンガ・アニメファンの間で世界的な人気を誇る「僕のヒーローアカデミア」(通称・ヒロアカ)によもやのスキャンダル。版元の集英社が謝罪に追い込まれ、ファンに衝撃を与えた。

この“事件”を取り上げるのが本稿の趣旨ではないので、かいつまんで説明すると、『週刊少年ジャンプ』2020年10号にて登場した「志賀丸太(しがまるた)」という名前の悪の医者が、「過去の悲惨な歴史の記憶を想起させる」(集英社のお詫び文より)として、中国をはじめとする読者に謝罪をした……というものだ。要するに旧日本軍731部隊の人体実験説でいう「マルタ」(人体実験する人間)を思い起こさせるということ。

今回の件では(おそらく)中国発の抗議と思われること、集英社の早々の全面降伏についてなど、議論すべきことは多々ある。しかし、やはり根底にあるのは肯定派・否定派の間でいまだ議論が続いていることに尽きる。その大きな要因として、日本政府が731部隊について閂をしたままであることもあげられよう。

そんななか、2月11日の京都新聞に注目すべき記事が掲載された。終戦後の時期、731部隊(関東軍防疫給水部)について、日本政府が作成した公文書が開示されたのである。西山勝男滋賀大学名誉教授が開示を求めていたもので、昨年11月に開示決定を受けたという。同紙によると文書は4ページだが、もとはもっと長い文書の可能性もあるそうだ。

詳しい内容については京都新聞で確認して欲しいが、戦後731部隊の人員が中国とソ連に取り残され、その彼らがどのようにして帰国したか……というものだ。図などでどの部隊がどのように、とわかるようになっており、当時の混乱ぶりも推測できる。もっともこの公文書で、いわゆる731部隊の“疑惑”が垣間見えるものではない。だが問題なのは、731部隊に関する文書に対して(今回のような文書も含めて)日本政府は「見当たらない」という答弁を繰り返してきたことだ。

今回、西山名誉教授が開示を求めてこのような公文書が出てきた意味は大きく、普通に考えればまだほかにもある、と考えるだろう。731部隊が人体実験をしていたという根拠は、戦後中国で裁かれた「戦犯裁判」での旧部隊員の証言がもとになっており、日本側からはほぼでていない。

もし政府が本腰を入れて、今回のような公文書の掘り起こしに力をいれれば、闇に包まれた731部隊の実態解明に繋がる可能性は十分ある。その結果、万が一、人体実験にかかわる資料が出てくれば、罪を認めてなんらかのアクションを起こすしかないだろう。逆に精査に精査を重ねて一切資料が出てこなければ、それをファクトとして、世界に向けて名誉回復をアピールできる。

しかし、である。このニュースも全国的には関心が高いといえず、また政府も戦後からの「731部隊については語らず」というスタンスを崩す様子はない。いずれにしても、右派・左派など思想信条の問題ではなく、これは日本人の名誉の問題である。個人の学者に出来たことが出来ないワケはない。少なくとも、シュレッダーにかけられた、などということが起こる前に動くべきだ。(文◎堂本清太)

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