「桜よりコロナをやれ!」は正しい? 野党の役割とは? 予算委員会ってそもそもどんな位置づけ? 選挙ドットコムちゃんねるダイジェスト

「国民が新型コロナウイルスでこんなに危機感を募らせているのに、野党は桜の会の件ばかり追及している」という声がある一方で、「そもそも安倍総理の説明が不十分だ」という声も。与野党支持者を巻き込んだ国会内外での応酬に「結局与野党どっちも、テレビの国会中継で自分たちがどう見えるのかを気にしているだけでしょ」という冷めた声も……。

そもそも「予算委員会」って予算の話をする場所じゃないの? 今回の選挙ドットコムちゃんねるは、国会における予算委員会の位置づけや、与党を追及してばかりいる野党のスタンスの是非などについて、鋭く迫ります!

ではその内容をダイジェストでご紹介しましょう。

「桜よりもコロナをやれ!」は正しい? Twitterで支持された意見を別角度から分析

乙武 「今回のテーマは『桜よりもコロナをやれ、は正しいの?』ということですけれども」

千葉 「タレントのフィフィさんがTwitterでしたあるツイートに、3万件以上の『いいね』がついたそうなんです。それがこちらです」

「国会中継見てたら、桜を見る会で安倍総理を追及してた。今追及すべきは新型コロナウイルスへの危機管理じゃないのかな…こちらは国民の命を脅かす深刻な問題だからね。呑気なもんだ、と思ってしまった。」(タレント フィフィさん)

千葉 「さらに自民党の世耕さんも指摘していますね」

「今、参議院内の幹事長室で予算委員会を見ています。野党の質問が始まって40分経過しましたが、先刻武漢からの飛行機が到着し、目の前に総理や厚労大臣等、新型コロナウイルス感染症に対応している責任者が列席している。このシチュエーションで感染症について質問をしない感覚に驚いています。」

(世耕弘成 自民党参議院幹事長)

千葉 「ネット上では野党は安倍叩きばかりでどうなの? みたいな意見があふれかえっていたりするんですけども、この手の議論はよくあって『今、●●の問題があるのに、野党は与党の不祥事なんか追及している場合じゃないでしょ』という声について、その考え方の是非を、今回は話していけたらなあと思っています。ちなみにおふたりは、今回のTwitterなどを見てどうお考えでしょうか?」

乙武 「これとは別に、加藤勝信厚労大臣が緊急事態に対応していろいろ動けるように、野党側が配慮して、加藤大臣に対する質問を40分でとどめたのはいいことだっていう声なんかもあがってるわけですよね?」

松田 「そうですね。野党は加藤大臣への質問を40分あまりにとどめて、それ以外は新型コロナウイルスへの対応などで大臣が予算委員会を離席することも認めると。それは細野豪志さんも『グッジョブ!』と評価していましたね」

乙武 「こうした文脈からいくとね、新型コロナウイルスの質問ばっかりが相次いでしまうと、大臣だけじゃなくてその答弁を作る厚労省の官僚のみなさんにも負担がかかってしまうわけですよね。もちろんある程度の質問は必要だと思いますけど、そこに集中しすぎて厚労省の役人が実際のウイルス対策のために動くべき時間を、答弁書作成のために奪ってしまうのもどうかなと思うんですよね」

松田 「その視点もありますね」

千葉 「難しいですね。こうした指摘に対する野党側の反応はこうなっています」

 

「コロナウイルスについて野党は質問もしていないという大量のデマ。予算委員会、我が会派の質問者は5人。役割分担をして1人が質問予定でしたが、更新された情報を得て更に杉尾議員も。2人が予算委員会で取り上げています。答弁で『政府対策本部の設置』を明らかにもしています。」(立憲民主党 塩村あやか参議院議員)

「(野党が質問テーマに費やした時間の割合をグラフ化したデータを公表し「野党は桜を見る会追及ばかりに質問の時間をかけており、桜の会のほうが重要だと思っているのは明らか」としたツイートに対して)データを整然と出す。ある意味立派だが広告代理店が後ろにいるの?それにしても危機管理事態に何を言いたいのだろう? 危機管理に追われている部署への配慮も考え質疑を分担している。国会答弁には、膨大な労力も必要だからだ。質疑をするなと言うなら事態が落ち着くまで予算審議を中断する事も。」(国民民主党 原口一博国会対策委員長)

乙武 「立憲は5人が質問していて、うち1人が役割分担として質問予定だった。ただ新しい情報が出たので結果、2人が質問してますよということをおっしゃってるわけですね」

松田 「全く質問してないというのはデマであると。トップで質問に立った蓮舫さんが質問していないのが驚きだったとしても、バランスを考えて役割分担をしているのでその批判の指摘はおかしいという塩村さんの反論ですね。

あと原口さんは、危機管理に追われている部署への配慮も考えていると。答弁のためには膨大な労力が必要だから、と書いていますね」

乙武 「私も原口さんのご指摘、同感です。ちょっと1回話を戻してしまいますけど、フィフィさんのTwitterについて、ちょっと危ういなぁと思った点があって。国会中継を見てたらって、フィフィさんが見てた場面がちょうど桜を見る会についてだったわけで、違う場面を見てたらコロナウイルスの質問をやってたかもしれないわけじゃないですか。

何時間もある国会中継をずーっと最初から最後まで全部見て、そのバランスがおかしいんじゃないかっていうご指摘なら、まぁわかるんですけど、たまたま見てた場面がコロナウイルスじゃなくて桜だったから、その印象で『野党は桜しかやっていない』ってバイアスがかかってこのツイートしているんだとしたら、ちょっと危ういなあと思うんです」

松田 「そうですね。昨年からずっと桜を見る会の問題を野党が追及し続けているので、若干『もういい加減にしろよ』と思っている方たちも一定数いて、そうした思いを抱いている人がたまたまた国会中継で桜を見る会への質問をやってる場面を見てしまうと『まだやってんのか!』っていう印象になってしまいがちだと思います」

乙武 「これはどうとらえたらいいんですか?与党支持者がまだ質問やってんのかよっていう気持ちもわかる。でもこれ野党支持者からしたら『いや説明をちゃんとしないから、まだやらざるを得ないんじゃないか』って話ですよね。むしろ『違う質問をさせたいなら、ちゃんとみんなの理解が得られる答えを出せよ!』って」

松田 「ありますね。『募集しているんじゃなくて、募ってるんです』とかね」

乙武 「ちょっと聞いていい? あの発言、うちのマネージャーと僕で大激論になったんですけど。(笑)

あれはもちろん『募る』と『募集』が同じ意味だってことは当然、わかったうえで『こいつ何言ってんだ?』という風に煙に巻く作戦なんじゃないかって考えるべきなのか、本当に同じ意味だと知らないんじゃねえかってとるべきなのか、どっちなんですかね?」

松田 「どっちなんでしょうね。安倍総理の答弁を聞いてると『募集』っていうのは、幅広く新聞広告を出すとかどなたでもどうぞって感じで『募る』よりもさらに広く告知をするイメージ? 『募る』というのは『募集』よりも範囲が狭いというニュアンスでおっしゃっているのかなという風に、一生懸命理解しようとすると、そんな感じに受け取れたんですが。

ただ実際のところはね、はっきり言って『募集』だろうが『募る』だろうがどっちにしろダメだろ、ってレベルの話なんですけども。(笑)

自民党を支持している方と野党支持の方で、どうしてもひとつの事象に対して、見え方が大きく変わってしまうんですよね。スポーツでいうと、ピッチャーが投げてバッターが打ったとき『打たれた』になるか『打った』になるか、というように双方で受け止め方が違う。勢力同士がしのぎを削っているので、どうしてもそうなっちゃうんですよね。

ただ、一見正しそうな筋論とか、こうあるべきだっているものをにおわせながら批判をすると、変なことになっちゃうなとは思います。それぞれの立場で、批判すべきところは批判し、逆にもっとこうするべきでしょっていう風に提案する。

批判されている側が切り返すのも、それはそれでやればいいと思うけど、あんまりこういう形で揚げ足を取るような攻め方はしない方がいいと思いますけどね」

乙武 「あと1つ気になっているのは、世耕さんのツイートについて。与党支持者からしたら『そらそうだ』と思えるツイートだからこそ、5万件超のいいねがついているわけですが、意外にも与党内からはこのツイートを批判する声があるという報道があったんですが、これどうしてなんですか?」

*編集部注 世耕氏のツイートに対して、自民党の参議院幹部らも『委員会中に野党の質問に干渉するようなツイートは軽率だ』と批判。

松田 「ひとつは塩村さんが反論されているように、仕組みとして質問の分担をして、それぞれテーマごとに質問していることは、知ってるはずでしょと。その一部分を切り取って、こういう批判をするっていうのはお作法的によくないんじゃないか、という批判ですよね。

あとは自民党側も、当然追及されるべき『桜を見る会』の名簿が出てこない問題とか、突かれると痛いところがある中で、こういう世耕氏のような切り返しはいかがなものか、というのもあると思いますよ」

与党も野党も自分たちの「見え方」ばかり気にしすぎでは?

乙武 「なるほどね。千葉ちゃんはなんか気になることありますか?」

千葉 「わりと私、どっちでもいいんじゃないの?って思っちゃうんですけど」

松田 「追及してもしなくてもいい?」

千葉 「いや、桜を見る会について質問しても、新型コロナウイルスについて質問しても、どっちでもいいのでは、という意味で。

国会の質問は、各議員さんがこれを聞こう、聞きたいって事前に決めてると思うんですよね。ちょうど自分の質問の番が回ってきた時点で、たとえば次はインフルエンザが流行ってるかもしれないし、ノロウイルスが大流行中かもしれないから、その手の質問も頑張って入れていこうとするとは思うんだけど、それまでに自分がある程度決めていた言いたいこととか質問したいことがあるわけですよね。

だからそれについても質問するのは、仕方がないような気がするし、その質問内容についてどうだこうだって批判しても、あんまり本質的じゃない気がするっていうか」

乙武 「ふむ、つまり質問する各政治家が本当に聞きたいことを聞くべきだと」

千葉 「ええ。なんというか質問する側も、される側も『世間から自分や自分たちがどんな風に見えるか』を気にしすぎかなって。そういうことを気にしないで、自分の政治信条にのっとって質問すればいいのにね、って」

松田 「その『見え方』っていうのは確かに非常に意識してますよね。この予算委員会っていうのは、ほかの数ある委員会の中でも非常に特別な花形的なものなんです。NHKの中継が入るから。

だからまさに千葉ちゃんが言ったように、中継を見ている有権者に対しての『見え方』を与野党ともに、すごく気にしています。たとえば質問や答えでフリップが導入されたりとかっていうのは、確実にテレビ中継向けのアピールというか演出。そういうのも含めて自分たちの主張をパフォーマンス的にアピールする場になっているという面はあります。

また予算委員会自体、総理大臣をはじめ閣僚も全員出席しなくてはならず、予算委員会にすごく長時間拘束されるわけです。これがいま国会改革の課題のひとつになっていますが、こちらもなかなか議論が深まっていかないというところはありますね。

またこれは社会学者の西田亮介さんが指摘されていたんですが、野党っていうのは本来、与党に対する批判勢力であると。政策に文句をつけるなら対案を出せと言われるのもわかるけど、実際に政権を運営している与党に対して、その政策や運営をチェックして批判すること自体が、野党の第一義的な役割ともいえるので、追及がメインの姿勢になってしまうのは、ある意味当然だと。

これは野党と与党の議会内のふるまいということで考えると、ひとつの筋だよな、と思います」

千葉 「すごく初歩的なことなんですが、予算委員会っていう名前なんだけど、予算の話をするっていうよりは、与野党がそれぞれの関心事とか自分たちの成果について、アピールしあう場、って感じなんですか?」

松田 「そうなんです。予算委員会だけテレビ中継が入るから、っていうのも理由の一つなんですが、そもそも国会中はいろんな委員会が開かれるんですよね。常任委員会と特別委員会があって、厚生労働とか安全保障とかテーマごとにもあって、それぞれの省庁が管轄してその内容に関係あることを話し合うっていう縛りが、ほかの委員会にはあるんです。

だけど予算委員会は『予算に関することについて話し合う』というものなので、すごく幅広いテーマについて質問ができるんですよ」

乙武 「そうか、たとえば『桜を見る会に予算いくら使ったんだ』みたいな文脈で質問できると」

千葉 「なんでも予算に紐づけられますね」

松田 「そう。基本的にはいろんなこと全て、当然、予算でやってるわけですから、何でも紐づけられるし、かつテレビ中継もされるので、パフォーマンスにもってこいの場となっているわけです」

千葉 「だからそれぞれの政党が大事にしていることが出やすいっていうか、何でも選べるからこうなるわけですね」

松田 「そう。その中で多くの野党のとにかく今の政権を追及するっていう形を取っていますが、維新の会なんかは『自分たちは建設的な提案をします』という姿勢をアピールをしたり、ほかの野党とはちょっと別のポジションで違うテーマの質問をしたりとか、いろいろ考えてやられていると思います」

乙武 「僕は国民民主党の今回の新型コロナウイルスに関する質問と提案はすごくよかったなあと思っているんです。まずは、武漢から連れて帰ってきた人たちに対してその費用の8万円は徴収すべきではないと。その代わりに飛行機に乗せる前に『8万円は国で持つから、検査を義務づけますよ』ってことを帰国者に同意させるべきだった、という提案ですね。

こういうのをね、もっとマスコミが取り上げるべきだと思うんです。『桜ばっかり批判して』っていう取り上げ方だけじゃなく、ちゃんと提案している場面もあるよっていうのは、もっと伝えていいのかなと思うんですけどね」

松田 「各新聞社も、なにかしら批判をする前提で紙面を作っているというところもあるからだと思います。ネットなんかだと玉木さんが一生懸命 Twitter で説明されていますから、今乙武さんがおっしゃったような内容もけっこう拡散されているんですよね。

ただ一般のマスメディアにはあまり乗っていないので、どうしても『批判ばっかりしている野党』『桜の追及ばっかりしている野党』のイメージが強い。

それでも野党支持者の方々の中にはたぶん『もっと追及しろ』思う方もいるでしょうし、逆に与党支持層の方からしたら『まだそんなことやってるのか、そんな場合じゃないだろ』って見てしまうっていうところで、なかなかここの分断が埋まらないんですよね」

乙武 「どういうスタイルを支持するのかは個々人の自由だけど、維新や国民民主はそのどちらでもない一線を画した動きをしているよっていうのは、伝わって欲しいな」

松田 「ですね」

乙武 「今回は、こちらまでとなります。チャンネル登録と高評価、よろしくお願いします」

 

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