大切な友人との交際費は必要経費、“細く長い人間関係”を維持する方法

今回は、生活が苦しいからといって、若いうちから社交性を失うことの危険性について述べます。社交性というと軽く感じられるかもしれませんが、「縁を続ける」ことの重要性についてです。私自身、過去に様々な連載で「小中学生の人間関係は不要」「学生時代の人間関係よりも今の仕事関係者の方が重要」といったことは述べてきました。


旧友の関係だからこそ

この考えはあまり変わらないものの、一切の過去の人間関係を否定するわけではなく「細く長い人間関係」というものは維持した方がいいと考えています。いちいち人間関係を損得で考えるわけではないのですが、過去の知り合いというのは、今の自分の人間関係では知り合えないようなことをやっていることが案外あるのです。

たとえば小学校時代の同級生は今は工務店の2代目として活躍しています。私の実家がリフォームをしたのですが、その時はそのH君に依頼をしました。するとものすごく丁寧な仕事ぶりをし、懐かしそうに昔のことも話してくれ、今では何か家のことで困ったらH君に頼るようになっています。

あと、学生時代の知り合いが何人か弁護士になっています。彼らとは時々メールを書いたり、フェイスブックで「いいね」がついたりするような関係です。当然40代となった今は働き盛りだし、子育ても大変なため、おいそれと会うことはできません。しかし、「いつでも連絡できる」という状況にありますし、何かきっかけがあれば集合し旧交を温め合うことはできるでしょう。

自分だっていつ弁護士のお世話になるか分かりません。そんな時に弁護士の友人がいれば実に心強いです。言い方はなんですが、人間関係というものは日々のメンテナンスが必要で、それはメールやSNSでのやり取りに加え、時には実際に飲み会をする、といったことも必要になってきます。

さすがに20年間一度も飲んでいない人を誘うのはためらってしまうものの、10年に1回ぐらいは会っておいた方が人間関係は維持できます。そんな人が何人かいる場合は、7,000円~1万円ほどはかかるかもしれませんが、きっちりとその会合には行った方がいいです。

しばらく会っていない人というのは、意外な金脈を持っていたり、自分の仕事に役立つことを知っていたりするものです。2月の下旬に、ゼミの会合があります。ここには3代にわたる元ゼミ生が参加するのですが、出世した人もいますし、自分とは異世界で生きている人の話を聞くのも楽しい。

「カネがもったいない」という理由で参加を拒否する経済状況でなくて良かったです。もしかしたら、お子さんが私立に通って習い事や塾にもお金がかかっているような方はこの会合に支払う1万円はキツいかもしれません。

でも、こうした大切な人間関係用の予算は年間12万円は必要経費として取っておいた方がいいと思います。1ヶ月に1回あるというのはさすがに頻度が高いかもしれませんが、そのくらいの余裕資金は用意しておく。そして少しでも「この人間関係は必要だ」と思ったらそのお金に手をつける。一度参加を拒否すると、以後誘われなくなりがちです。

交際費ではなく、販促費

今回のゼミの集まりについては卒業以来2年に1回ほど同じメンバーでやっているのですが、結局同じメンバーになりがちです。それは、「この人間関係は大切だ」と考えている人々の集まりなわけで、先生を中心とし、毎回有益な会となります。今回は先生が秋の叙勲を受章したお祝いを兼ねていることもあり、何があろうともこれは参加せねば、と考えています。

お金の専門家は、無駄遣いを減らすためにいわゆる「交際費」はまず削るよう指導しますが、月に1万円の交際費を減らすとその後得られるものはガクンと減ると私自身は自分の人生を振り返ると実感します。結局、様々な仕事は「交際」によって得られたわけですから、むしろ「販促費」といった考えをすべきです。

もちろんこれは個人事業主としての感覚ではありますが、サラリーマンであってもスーツ代が仕事のために必要な経費と捉えるのと同様に、仕事とは関係のない人々との交流にも例えば月1万円を強制的に使用する、といった習慣を身につけても良いのではないでしょうか。

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