JAL・ANA客室乗務員が全路線でマスク着用!機内での感染リスクと対策を元国際線CAが解説

JAL・ANAの客室乗務員が全路線でマスク着用

深刻さを増すばかりの新型コロナウイルス。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」内での集団感染も、感染者がどんどん増えていて心配ですよね。

 

日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)は、客室乗務員が国内線、国際線全路線でマスクを着用してサービスすると公式HPで発表。異例の事態になっています。

 

ここでは、機内の感染症リスクについてと機内で行われている対策について、感染症流行時に乗務経験のある元国際線CAの筆者が、体験談を含めお話いたします。

 

 

飛行機内は感染しやすい?

機内は空気循環と気圧を調整する与圧システム上、湿度が低く保たれていることから、ウィルスが空気中に漂いやすい環境です。そのうえ、鼻や口の粘膜が乾燥することにより免疫力が弱まり、呼吸器系のウイルスに感染しやすいとも言われています。

 

また、機内の気圧は地上よりも低いため、内臓や血液循環にも影響を及ぼし体調を崩しやすいという見解もあります。軽い体調不良だから大丈夫だと思って飛行機に乗ったら、症状が悪化してしまったという経験のある人も多いのではないでしょうか。

 

まずは、機内は特殊な環境であるという事を十分に理解することが大切です。

 

とはいえ、仕事などやむを得ない事情で飛行機に乗らなければいけないこともありますよね。

 

次は機内での感染症対策についてお話いたします。

 

 

機内ではどのような感染症対策が取られている?

まず大前提として、感染症の流行有無に関わらず、乗務員は常日頃から徹底した衛生管理を行っています。

 

機内には消毒スプレーが常備されていて、特にお食事サービスの間は、こまめな手指の消毒を必ず行っています。

 

また、座席での食べこぼし跡がひどい時や、嘔吐したお客様がいた場合には、地上係員と連携をとって徹底的に清掃をします。シートカバーやクッション、シートベルトを丸ごと交換する時もあります。

 

化粧室を清潔に保つことも予防策とされ、客室乗務員はフライト中に手袋をしたうえで定期的なチェック、清掃も行っています。

 

このように、機内の衛生管理には、感染症の流行時だけではなく日頃から目を光らせているのです。

 

それに加え、先述した通り今は客室乗務員がマスクや手袋をしてサービスを行うなどの対策が取られているようです。

 

 

万が一感染の恐れがある乗客がいたらどんな対応をするの?

乗務員は、搭乗時やお食事サービス中でも、体調の悪いお客様がいらっしゃらないか、常に気に掛けながら巡回しています。

 

万が一体調の悪いお客様がいた場合には、症状を伺い経過状況を担当エリアの乗務員で情報共有します。

 

症状が深刻な場合には、周囲のお客様への二次感染防止の観点から、なるべく他の乗客から離れた席に移動をさせる、対応する乗務員を限定する、使用する化粧室を限定する等の対応も取ることがあります。

 

また、乗務員自身への感染を防止する為に、乗務前、乗務中、乗務後の、手洗いうがいの実施を徹底しています。

 

体調に不安を感じるときは自主的に乗務を控えるなど、客室乗務員は常に高い自己管理意識を持って働いています。

 

次のページ:機内で体温検査。高熱のお客様がいたときの対応とは 

 

 

機内で体温検査。高熱のお客様がいたときの対応とは?

私が過去に経験した、ある国際的なウイルスの感染が流行した際のお話です。

 

あるフライトで、到着地空港の要請があり、乗客全員の体温検査を実施してから降機を許可するというケースがありました。

 

その際、熱の高い乗客がいることが判明し、そのお客様と、周辺に座っていた数人の方々だけを残して再検査を実施する事が決定。他の乗客が飛行機を降りた後、真っ白な全身防護服に身を包んだ数人の検査官が機内に入り、ものものしい雰囲気のなか検査が実施されました。

 

そのお客様は機内では特に変わった様子もなく過ごしていたので、乗務員としても症状に気が付く事が出来ませんでした。

 

お客様の「実は少しだけ熱っぽいかなと思って家を出たのですが......もしかして私はこのまま降りられず強制送還でしょうか」と不安げなお言葉が、より緊張感を高めました。

 

結果、ウイルス感染の恐れはないと判断され、お客様も乗務員も無事に降機することができましたが、降機までの数十分間の緊迫した時間は今も忘れることが出来ません。

 

客室乗務員も全員マスクを着用して降機することを命じられ、制服にマスク姿で空港を歩いたのは、当時としては異様な光景だったかもしれません。

 

乗務員として健康には自信もあり、お客様の様子もしっかり見ていたつもりでも、どこに潜むかわからない感染症のリスクを身近に感じたフライトでした。

 

 

機内での感染症リスクを理解したうえで、しっかりと感染症対策を

国際的な感染症が流行している時には、飛行機での移動に不安を覚える方も多いと思います。

 

しかし、機内という特殊な環境下におけるリスクを理解したうえで、自己管理をしっかり行うことで、機内での感染症リスクを最小限に抑えることはできます。

 

・渡航前後の入念な手洗いうがい、鼻うがい

・マスクやハンカチでウイルス接触・飛散の防止

・機内の乾燥に備えて水分をこまめに摂る

・自分自身の免疫力をしっかり高める

・体調が不安な場合には渡航を控える選択肢を持つ

 

私自身がもし今飛行機に乗らなければならない状況だとしたら、上記のことを心がけます。

 

皆様が慎重な対策を取り快適なフライトを過ごせますよう、そして一日も早く新型コロナウイルスが終息しますようお祈りいたします。

© シーエーメディアエージェンシー/ハニーコミュニケーションズ