仮設住宅で暮らす被災者、心理的苦痛に「相談相手の有無」関係 東北大学が調査

東北大学では、2012年時点で約3万世帯の宮城県内の応急仮設住宅(プレハブ・民間賃貸借上住宅)入居者を対象に、5~6年間の繰り返し測定の健康調査を実施したところ、震災から6年経過(分析時点)で心理的苦痛のスコアが有意に高いのは女性や相談者がいない者などであることがわかった。

震災経験は被災者の心理状態に負の影響を与えるが、この心理的苦痛は経年的に軽減してくると報告されている。変化に影響する要因として、社会参加や相談相手の有無が関わると先行研究で示されてきた。しかし先行研究の追跡期間は2~3年間と短期間で、同一対象者を対象とすることや、マルチレベル分析を行った研究はほとんどなかった。

そこで今回、宮城県の同調査に繰り返し全て回答した18歳以上の者を対象に、民間賃貸借上住宅・プレハブ住宅別に、時間・個人レベルの因子・地域レベルの因子の影響を考慮したマルチレベル分析を用いて、心理的苦痛の変化に関わる要因を明らかにした。

その結果、対象者の心理的苦痛は経年的にスコアが低下していたものの、女性・精神科疾患の既往歴のある者・東日本大震災後に運動習慣が減った者・相談者がいない者で有意に高いことが分かった。また追加分析では、相談相手が配偶者および友人であるとスコアの低下に影響することも示された。

これにより、震災から6年経過した分析時点でも、特にこうした対象者に対する、自治体および近隣の継続的な支援が必要であることが示唆された。

論文情報:【The British Journal of Psychiatry】Psychological distress after the Great East Japan Earthquake: two multilevel 6-year prospective analyses

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