YSCの貢献

 東京の市民団体カネミ油症被害者支援センター(YSC)による次世代被害調査が今月、五島市を皮切りに始まった。主に対面での聞き取りという▲52年前、有害化学物質汚染の食用油を使った料理を食べた人々の子や孫の症状などを把握し、救済策を国などに求めていく考えだ▲次世代被害は、母体からの影響などが指摘されているが、未解明な部分が多い。重大問題でありながら、国は本気で実態把握などに取り組んでこなかった。救済策もない。放置された課題にYSCが本格的に着手したことで、カネミ油症は新たな段階に入ったと言える▲YSCの前身は、関東でダイオキシン問題に取り組んでいた市民団体。油症がダイオキシン・PCB複合汚染と知り、救済のため2002年に結成した。メンバーは元公務員や主婦らさまざま▲首都圏から五島市などに手弁当で幾度も来訪。口を閉ざす被害者を訪ね回り、信頼関係を築きながら実態を探った。患者会や弁護士との連携、署名活動、国会議員へのロビー活動などを展開し、救済関連の法律成立につなげた▲YSCの尽力がなければ、油症事件が改めてこれほど認知されることもなかっただろう。地道な活動姿勢には頭が下がる。今回の調査が、次世代の全体像をとらえ、救済への一歩となることを期待したい。(貴)

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