カネミ油症次世代座談会<1>常に恐怖感ある 悔しいが諦めも

©株式会社長崎新聞社

左からAさん、三苫壮さん、中内孝一さん、下田恵さん

 1968年に発覚したカネミ油症事件で、次世代被害者は認定、未認定にかかわらず心身の不調や周囲からの偏見に苦しんでいるが、救済は進んでいない。長崎県などに暮らす2世の男女4人による座談会を福岡市内で開き、体験や思いを語ってもらった。

カネミ油症次世代座談会<1>

 -健康面の不安や悩みは。
 中内 現在は高知市内でアルバイトをしながら生活しているが、昨年、めちゃくちゃ体調が悪かった。口内炎が頻繁にできて、寝たり起きたりで気持ちも優れずにイライラする時が多かった。子どもの頃から毎年1~5月に体調が良くなくて、風邪や気管支炎を患っているのが悩みの種。この冬から春を、いかに乗り切ろうかと思っている。
 下田 私も昔から体調面が悪く、全身倦怠(けんたい)感が抜けない。上から重りを押しつけられている感じ。昔、小児ぜんそくになったが、今になってぜんそくが出始めた。この先、体調がどう変わるのか不安がある。

 -倦怠感の話が出た時、中内さんもうなずいていた。
 中内 自分も特に天気が悪い場合は、ものすごく朝に起きづらいというか、起きても体がドーンと重いというか、一日気分がブルーになる感じがある。
 A 7、8年ほど前に脳梗塞になり、それからずっと病院にかかっている。脳血管の疾患は高齢者に出やすいと思っていたら、自分は40代で出た。普段は全身倦怠感、膝や肘など関節にときどき痛みがある。倦怠感は2人の兄も同じようで、休日も活動的ではなく休んでばかり。先日、兄が帰省した時、ずっと実家で寝転んで過ごしていた。あまりきょうだいで擦り合わせることはないが、母を介して聞くと、(子どもの時に汚染油を直接摂取した兄と直接摂取ではない自分は)似たような症状が出ているのかなと思う。
 三苫 僕と兄は2世での認定だが、兄は生まれた時から「心室中隔欠損」で心臓の左心室と右心室の壁に穴が開いていた。大手術をして二十歳まで生きられないと言われたが、今は乗り越えている。母いわく、僕も生まれた時から他の子どもに比べて病気が多く、かなり大変だったという話だ。月の周期で、ひどい倦怠感。朝から何もしたくない日が時折ドスンとくる。体にはすごい毒が入っているわけで、とても不安はある。僕は救済運動や裁判に子どもの頃から関わってきて、そこに来ていた被害者が次々に亡くなっていくのを目の当たりにしてきた。大病に襲われる危険性を常にはらんでいる恐怖感はすごくある。

 -倦怠感のつらさは他人に分かりにくいが、具体的な症状や生活への影響は。
 三苫 酒も飲んでいないのに、二日酔いのように朝から起きるのもしんどくて、とにかく体が動かないという時がある。月に1、2回、長い時は1週間ほど続き、鬱(うつ)になったと思ったことも。決して怠けているのではなく、自分ではどうしようもない状況になるところが、やはりカネミ油症なのかなと思う。
 A 子どもの頃、よく「きつい、きつい」と言っては、叱られた覚えがある。子どものくせになぜきついのかと、怠け者のように言われた。(倦怠感は)大人になっても変わらない。自分の場合は後ろに取りつかれているような、何か重たいものを背負っているような感じ。どうしても仕事に行かないといけない時は、市販の栄養ドリンクなどでごまかしている。

 -病院では、カネミ油症や自分の症状についてどう説明しているか。
 三苫 小さい時からの行きつけのお医者さんは分かってくれている。たまに飛び込みで入った病院で、「治療費の請求をカネミ倉庫にお願いします」と言った時に、「うちではやってない」と言われ、説明も面倒なので実費で払って後で(カネミ倉庫に)請求することも多い。
 下田 私はかかりつけの先生のところで、油症検診の再検査を受けた時、「カネミ油症とは関係ないだろう」と言われた。「食べたのは親なのだから、その後に生まれた子どもには影響ないよ」と。医者に言われるとこちらから説明しにくかった。

 -次世代被害者は体に多くの不調があっても、診断基準が厳しく油症認定されない人も多い。不満や悔しさは。
 中内 もちろん悔しさもあるが、半分は諦めというか、割り切るというか、そういう感じ。
 下田 病院の先生から(油症と関係がないと)言われると、けっこうつらい。じゃあ自分はどうなんだと思う時もあるし、気持ちが落ち込んでいくが、やはりそこを理解してもらわなければいけないと思う。もうちょっと自分が先生に「いや違う、こういうこともある」と話していかなくてはと思う。 <2>に続く

 【略歴】しもだ・めぐみさん 1989年生まれ。未認定。長崎本土地区油症被害者の会。認定患者の母、順子さん(58)は五島市で汚染油を摂取した。
 【略歴】なかうち・こういちさん 1971年生まれ。未認定。カネミ油症被害者高知連絡会。母親は認定されている。
 【略歴】みとま・そうさん 1976年生まれ。カネミ油症被害者福岡地区の会。兄の哲也さん(50)と共に2世の認定患者。
 Aさん 長崎県内在住の40代男性。0歳で認定されている。

●座談会内容

・カネミ油症次世代座談会<2>結婚や子ども 名乗り出られない人もたくさん

・カネミ油症次世代座談会<3>誤解から偏見に くぎ打ち続ける

【キーワード】●カネミ油症 ●次世代被害 ●油症検診と認定 ●YSCによる次世代被害者の健康実態調査