県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)で2016年7月、入所者ら45人が殺傷された事件で、殺人などの罪に問われた元職員植松聖被告(30)の裁判員裁判の論告求刑公判が17日、横浜地裁(青沼潔裁判長)であった。検察側は「被害結果は類例を見ず極めて重大。冷酷かつ残虐で、卑劣な犯行だ」として死刑を求刑した。
公判では被告が入所者らを殺傷したという事実関係に争いはなく、争点は被告の刑事責任能力の有無と程度に絞られている。
弁護側は、被告が事件の約1年前から大麻を乱用するようになり本来とは別人格になっていたと主張。事件当時は妄想に支配され、幻聴が聞こえるなど「大麻精神病」の症状が出ており、心神喪失か心神耗弱の状態だったとして無罪か減軽を求めていた。
検察側は、被告が事前に凶器や拘束具を準備するなど犯行に計画性があり、「意思疎通がとれない障害者を殺害する」という一貫した意思に基づいて襲撃を進めた点を指摘。事件後に自ら警察署に出頭したことも違法性の認識があったことを示しているとし、薬物による病的な妄想を否定して被告に完全責任能力が認められると主張していた。
起訴状によると、被告は16年7月26日未明、やまゆり園に侵入し、包丁で突き刺すなどして入所者19人を殺害したほか、職員2人を含む26人に重軽傷を負わせた、とされる。