広がる「ソーシャルサーカス」 スクールで共演、相互理解

市職員ら健常者に皿回しを伝授するけんごさん(左端)=1日、横浜市港南区のラポール上大岡

 障害者と健常者がともに曲芸を楽しむ「ソーシャルサーカス」が、広がりを見せている。ラポール上大岡(横浜市港南区)で初めて開かれたサーカススクールには、市職員も含めた約20人が参加。主催したのは、障害者とアーティストによるイベントを手掛けるNPO法人「スローレーベル」(同市神奈川区)で「障害者と健常者の間にある垣根を取り払いたい」と期待を寄せている。

 2014年に開かれた障害者アートの祭典「ヨコハマ・パラトリエンナーレ(パラトリ)」をきっかけに、同法人がスクールを立ち上げた。障害者がコミュニケーションを取る機会をつくり、社会参加につなげたいとの思いからだった。

 1日に開催されたスクールでは、サーカスアーティストの金井ケイスケさんが講師となり、障害者のほか、市の五輪・パラリンピック担当部局や健康福祉局などの職員6人も加わった。つま先に乗せた帽子をひょいと蹴り上げて頭に乗せたり、タップダンスを踊ってみたり。サーカスを体験したことがある障害者たちが職員らにコツを伝授した。

 発達障害のある「けんご」さんの十八番は皿回し。細い棒の先端でプラスチック製の皿を器用に回し、上手にできない職員に「棒をまっすぐ立てて」「お皿の縁をなぞるといいですよ」とアドバイス。その甲斐あって成功すると、会場は拍手と笑顔に包まれた。

 数年前からパフォーマンスを始めた小川香織さん(25)は「もっとうまくなりたい」と意気込み、母親の浩子さん(58)は「サーカスにのめり込んでから、物事に取り組む集中力が身に付いた」と娘の成長を感じ取る。市職員も「みんなうまくて驚いた。サーカスには一緒に楽しめる魅力がある」と話した。

 スクールは月1回で3月は15人の定員が既にいっぱい。4月以降も都内や横浜市内で開かれる。同法人理事長で、パラリンピックの開閉会式を手掛けるクリエーティブディレクターの栗栖良依さん(42)は「障害者のことを学ぶ機会は座学が多いが、なかなか壁を取り払えない。一緒に体を動かしたほうが理解を深められる」との思いを込める。

 22日には、11月のパラトリに向けたキックオフイベントも象の鼻テラス(同市中区)で開催。歌や弦楽器の体験、特殊な糸から手編みのキノコを作るワークショップが楽しめる。午前11時半~午後4時。入場無料、申し込み不要。問い合わせはパラトリ事務局電話045(661)0602。

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