衝撃的なタイトル! ジョージ・マイケル「アイ・ウォント・ユア・セックス」 1987年 8月8日 ジョージ・マイケルのシングル「アイ・ウォント・ユア・セックス」がビルボードHOT100で最高位(2位)を記録した日

共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.68

I Want Your Sex / George Michael

ワム! 第2次ブリティッシュ・インベイジョンで世界的ブレイク!

80年代の洋楽シーンを振り返ってみると、それはそれは様々なジャンル/事象が次から次へと生まれて、メインストリームのトレンドセッターになっていたのがわかる。中でも80年代前半から中盤にかけて世界を席巻した “第2次ブリティッシュ・インベイジョン” は、ここ日本でも大きなセールスをあげるスターたちが輩出された、結構なお茶の間感を伴った現象であった。

ゲイリー・ニューマン、ソフト・セル、そしてヒューマン・リーグといった、ニュー・ウェーブ出自の新進アーティストたちが土壌を耕し(80~82年)、デュラン・デュラン、カルチャー・クラブのブレイク(およそ82年終盤以降)で一気に世界のトップ・トレンドとなった第2次ブリティッシュ・インベイジョン。

このトレンドを形成した3大スター(勝手にそう呼んでます!)を挙げるならば、前述のカルチャー・クラブ、デュラン・デュラン、そして彼らより少し遅れて世界的ブレイクを果たしたワム!だろう。

ワム!はジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーの二人組。82年にはデビューしていたが、その時点では主に日英での人気に留まっていた。アメリカを含む世界的ブレイクを果たしたのが84年後半以降で、86年までのおよそ2年間という短い期間ながらメガヒットを連発する(かの「ラスト・クリスマス」もこの期間)。ほぼすべての楽曲のソングライティング / プロデュースを担っていたジョージ・マイケルが実質上のソロデビュー曲を世に送り出したのは87年後半のことだった。

ジョージ・マイケル、実質上のソロデビュー曲「アイ・ウォント・ユア・セックス」

ワム!時代にもジョージ名義のヒットソングを放ったり、大御所アレサ・フランクリンとのデュエット「愛のおとずれ(I Know You’re Waiting)」(87年1位)を全米ナンバーワンにしたりしていたが、初ソロアルバムからの先行シングルとして満を持してリリースされたのが実質上のソロデビュー曲、それが80年代66番目に誕生したナンバー2ソング「アイ・ウォント・ユア・セックス」(87年8月2位)だ。

これはよく覚えているという方も多いのではないでしょうか。なんといってもこの衝撃的なタイトル…。哲学的な言い回しが含まれながらも、“君とヤリたい…” 的な直接的表現が大半を占める当曲。当然と言えば当然のように地区によっては(特に英語圏)放送禁止になっていた。

しかしジョージ人気は放送禁止程度では揺るぐことはなく、見事各国における大ヒットをモノにしている。エディ・マーフィー主演の鉄板映画『ビバリーヒルズ・コップ2』のサントラに収録するという、盤石のプロモーションも功を奏していたようだ。

その後のシングルカットはすべてがヒットし、アルバムは全世界で2000万枚超のメガセールスを記録するなど、ジョージ・マイケルのソロデビューはワム!を凌ぐ成功を収めた。ワム!時代のアイドル人気を払しょくする意図で「アイ・ウォント・ユア・セックス」を第1弾シングルに据えたのならば、結果としてそれはもう慧眼としか言いようがない。

ブラックミュージックの伝統を正しく継承したジョージ流 R&B

さらには「アイ・ウォント・ユア・セックス」はもちろん、その後のシングルヒット、

■ フェイス(1位)
■ ファザー・フィギュア(1位)
■ ワン・モア・トライ(1位)
■ モンキー(1位)
■ キッシング・ア・フール(5位)

…等は、ブラックミュージックの伝統を正しく継承する意匠が纏われている。直近のプリンス、果てはマイケル・ジャクソン越えを実現することで、ジョージ流 R&B を表現していたのかもしれない。

そしてこの米ブラックミュージックへの憧憬表現こそ、ビートルズやローリング・ストーンズを中心とした60年代の新進英国勢が米ロックンロール(R&B)への憧憬表現した元祖ブリティッシュ・インベイジョンとぴったり合致するではないか。しっかりと英国の先達へのリスペクトを盛り込んでいたジョージ・マイケルは恐るべし存在だったのだ。しかし、享年53(2016年没)、彼の死は本当に早すぎた。

※ KARL南澤の連載「共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味」
ジャンル、洋邦、老若男女を問わないヒットソングにある ‟共有感”。米ビルボードのチャートがほぼそのまま日本における洋楽ヒットだった80年代。ナンバーワンヒットにも負けず劣らずの魅力と共有感が満載の時代に生まれたビルボードHOT100 2位ソングを紐解く大好評連載。

■ ジョディ・ワトリー、来るべき R&B ブームの先陣を切ったポップアイコン
■ イマジンにも匹敵!クラウデッド・ハウスが80年代に刻んだ永遠のナンバー
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etc…

カタリベ: KARL南澤

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