【MLB】レイズ筒香を支える横浜高時代の同級生、佐野誓耶氏 父は元近鉄&巨人の元国氏

打撃投手も務めた佐野誓耶氏【写真:木崎英夫】

佐野誓耶氏は米大学へコーチ留学、帰国後は「堺ビッグボーイズ」で指導

 レイズの筒香嘉智外野手が約2時間半のメニューをこなし、爽快な汗を流したキャンプ2日目の19日(日本時間20日)、フリー打撃練習で米デビューを果たしたのが、横浜高校野球部出身で筒香と同期である佐野誓耶(せいや)氏だ。

 明治学院大学を卒業後、日本の独立リーグを経て、2015年にかつて巨人軍の在米スカウトを担当していたリチャード・瀬古氏の紹介でロス郊外のカリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校大学野球部に1シーズンのコーチ留学の機会を得る。プロ野球選手への夢をあきらめ、指導者への道を模索していた佐野氏は、筒香が2015年に参加したドミニカ共和国のウインター・リーグでの話に感銘を受け、筒香が語気を強めた「行ってみなけりゃわからんぞ」の言葉に、現地視察に踏み切った。

「大人が押し付ける練習は一切なく、皆楽しそうに野球をしている。それがとても印象的でしたね」

 過酷な練習の繰り返しで潰れていく子供も多い日本の指導現場を少しでも変えたいという思いを汲み取った筒香は迷うことなく、勝利至上主義から脱却した指導法を実践する少年時代の恩師であり、レイズ入りに深くかかわった大阪「堺ビッグボーイズ」代表の瀬野竜之介氏を推した。

「そこでは小学部もあり、3年間いろいろと勉強をさせてもらいました」

 オフになると筒香は大阪で自主トレを行うため、少年野球と筒香の練習パートナーで1年が暮れていった。

筒香はレイズに「佐野氏の帯同許可」を希望、打撃練習の投球で採用決定

 昨年12月にポスティングでレイズ入りを決めた筒香が、希望として出したのが、「佐野氏の帯同許可」だった。ただ、挑戦する身であるため「主張は避けました」と瀬野氏。ところが、米国から筒香の練習を視察に来たレイズのニアンダーGMとキャッシュ監督は打撃練習で筒香に投げ込む佐野氏を見てその要望を快諾したという。

 理由は、「うちには左投げの打撃投手が必要なんだ」だった。佐野氏曰く、「アメリカって面白いですね! 僕がそんな目で見られていたんですからね。それで決まっちゃうんですから」。

 佐野氏の父親は近鉄、巨人で捕手としてプレーした佐野元国氏である。ギリシャ人を父に持つ元国氏は、横浜高校時代には帰化する前の「佐野クリスト」の名で、1970年代半ばに神奈川ナンバー1の捕手としてその名を全国に轟かせていた。この頃、記者も東海大相模高で野球に勤しみ、強肩強打の元国氏の凄さを目の当たりにしていたのだった。

 フロリダの取材地で元国氏の愛息と邂逅することになるとは――。なんとも不思議な縁を感じる。

 26年ぶりに電話で話す元国氏は感慨深げに言った。

「巨人のコーチ時代、僕は木田優夫(現日本ハム投手コーチ)君らを連れて当時ヤンキース傘下1Aのマイアミ・マーリンズで学ばせてもらったんですよ。思いでの地フロリダで今度は自分の息子が、これからたくさんの貴重な体験をさせてもらうことになるとはね」

 フロリダ半島西岸の町ポートシャーロットで、人知れず紡がれた親子の相関の糸は蒼天に浮かび上がってくるようだった。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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