​​「marimekko」「iittala」「Arabia」…...デザイン大国フィンランドに学ぶ「教育のデザイン」

フィンランドでは至るところでデザインによる課題解決を見かけます。教育現場でもそれは同じ。学校の中でいったいどこに、デザイン思考が取り入れられているのでしょうか。つい先日フィンランドの学校を訪れた筆者が、そこで気づいたデザイン思考に迫ります。

  • 課題解決も行うフィンランドのデザイン
  • フィンランドの学校のデザイン
  • 教育に「デザイン」の概念を

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課題解決も行うフィンランドのデザイン

「marimekko」「iittala」「Arabia」……など、フィンランドにはデザイン性の高いブランドがたくさんあります。フィンランドの数あるデザインの中でも日本で一番有名なのは、マリメッコのウニッコ柄でしょう。

ウニッコ(UNIKKO)とは、フィンランド語で「ケシの花」という意味です。女性に人気の高いウニッコ柄ですが、実は男性である私も大好き。その背景として、ウニッコ柄が生まれたストーリーが気に入っているからです。

最近ではシックなカラーもよく見かけますが、初期のマリメッコの代表的なデザインと言えば、やはり青や赤のウニッコ柄。私はフィンランドの家庭でもホームステイしましたが、家庭の中でも、とくにキッチンなどでよく見かけるデザインです。なぜフィンランドで、このような鮮やかな色のデザインが好まれるのか、現地に住むフィンランド人に教えてもらったのですが、その理由がとても興味深かったのです。

フィンランドで鮮やかな色やデザインが好まれる理由。それは「寒くて暗い冬の中、家の中に彩りを加えるため」だそう。フィンランドの冬は-10度や-20度になることも珍しくありません。北部のラップランド地方では、一日中太陽が昇らない時期もあります。「寒くて暗い」という課題を解決するために、「家庭内に鮮やかな色やデザイン」を加える。「自然をありのままに受け止めて、自分たちで変えられるところを工夫する」という考え方が、私は大好きです。

年齢や障害の有無、国籍や性別に関わらず利用しやすいデザインのことを「ユニバーサルデザイン」と呼ぶように、デザインとは単に「模様を作る」だけではなく「課題を解決する」という役割もあります。フィンランドにいると、至るところでデザインによる課題解決を見かけます。教育でも有名なフィンランドでは、学校の中でもこのデザイン思考が取り入れられているのです。

私はまさにこの記事を書いている2020年の2月にフィンランドを訪れて、複数の小学校を見学してきました。そこで見つけた「学校の中でのデザイン」をいくつか紹介します。

フィンランドの学校のデザイン

1. 教員同士のコミュニケーション不足を解消する教員室

日本とフィンランドの学校において、もっとも特徴的な違いがあるのは職員室です。日本では机がたくさんありますが、フィンランドにはソファーがたくさんあり、必ずコーヒーメーカーがあります。

これだけおしゃれでゆとりのある教員室では、質の高い休憩がとれそうです。しかし現地の先生が言うには、「教員同士のコミュニケーション不足を解消する」という目的が大きいとのこと。たしかに、机は個人用ではなく大勢の人が座れる形をしていますし、ソファーはたくさんの人が会話しやすいような配置になっています。

フィンランドにおいて、コミュニケーションをするうえで欠かせないのが、コーヒーです。国民1人当たりのコーヒー消費量が世界一。先日会ったある先生は「私は1日にコーヒー10杯は飲むわよ」と話していました。休み時間はコーヒー片手にお菓子をつまみながら、ソファーに座って同僚の先生とコミュニケーションをとる光景がよく見られます。それは、たまたまではなく、意図をもってデザインされているからです。

2. 教室の中のデザイン

フィンランドの学校は、一人一人の生徒の特徴に合わせて、「最大限に集中力を引き出せるようなデザイン」が意識されており、そのためのグッズがたくさんあります。たとえば周囲の音に敏感で、静かな環境のほうが集中しやすい子は、集中するときに「耳あて」を使用できるように用意されています。

他にも、周囲の視覚情報に敏感で、視野の範囲が制限されたほうが集中しやすい子は、集中するときにこのような仕切り板を使えます。また先日訪れた教室の中には、「砂時計」が置かれていました。視覚的に残り時間がわかったほうが集中しやすい子どももいるためだそうです。

3. 教室の外のデザイン

フィンランドの小学校では、「集中するときは集中しやすい場所で」という考え方が大切にされています。そのため廊下に、自習スペースやパーソナルスペースがたくさん設けられており、ドリルや課題をするときは、授業中でも廊下に出てくる子どもがたくさんいます。

パーソナルスペースには、隠れ家のようなデザインのものも。ここで1人の時間を過ごしたり、本を読んだりする子もいるのだとか。私は大学生になってから、「1人のほうが集中しやすい」という自分の特徴に気づき、集中するときは1人になれる環境を探すようになりました。フィンランドのこのような環境があれば、もっと早くにそこのことに気づいたかもしれません。

教育に「デザイン」の概念を

「デザイン」は、ファッションやインテリア業界だけでなく、教育業界でも非常に重要な考え方です。日本でも学校やクラスによっては、このようなデザイン思考は教育現場の中で見かけます。海外の教育システムを個人の力だけで導入することは、簡単ではありません。しかし砂時計や耳あてのように、わずかな予算でもできる工夫はたくさんあるはずです。

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