読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、「結婚をあきらめた」という33歳の女性。自称ケチで結構貯めてきたといいますが、老後への備えとして問題ないか気になるといいます。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。
彼氏との同棲を解消しました。結婚をあきらめたので生涯独身で生きていこうと思います。
一生できる仕事を見つけたく、転職を繰り返し、今の職場を見つけました。契約社員で給料は少ないですが、居心地がよくストレスも少ない会社です。キャリアアップも望んでいないので、ずっとこちらで働きたいと考えています。
長く実家暮らしをしていたので、お金は結構、貯めることができています。すべて現金で持っているので、このままでいいのか不安に思って無料のセミナーを受けたところ、このままではダメだとわかったのでiDeCoとつみたてNISAを始めてみました。
住居は、もう少し安い賃料の物件に移り住み、老後も住めるといいなと思っています。かなりケチな性格で、保険や通信費はかなり削っていますし、美容院は半年に一度、化粧品はプチプラブランド、毎日自炊をしているという状況です。ただ、飲みに行くとお金を使いがちなのと、ランニングが趣味でマラソン大会などにも出るためシューズなどにお金をかけています。
このような状況で、老後への準備は大丈夫でしょうか。
〈相談者プロフィール〉
・女性、33歳、未婚
・職業:会社員(契約社員)
・毎月の手取り金額:18.2万円
・年間の手取りボーナス額:なし
・貯蓄:普通預金920万円
【支出の内訳(20.1万円)】
・住居費(家賃):6.2万円
・食費:2.3万円
・生命保険料:0.3万円
・通信費:0.3万円
・交際費:3万円
・被服・美容費:0.2万円
・娯楽費:1万円
・医療費:0.4万円
・日用品代:0.3万円
・iDeCo・つみたてNISA:5.6万円
・その他:0.5万円
FP:ご質問ありがとうございます。まだお若いのに生涯独身を決めてしまうのは早いような気もしてしまいますが、将来のお金について一緒に考えてみましょう。
今のまま60歳まで運用を続ければ、老後は問題なし
すでにiDeCoとつみたてNISAを掛け金の上限近くで始められているのですね。そのため、毎月の収支は2万円ほどの赤字です。毎月5万6000円を投資に積み立てると2万円赤字になり、その分を貯蓄から切り崩すことになるので、少しお金の流れが把握しにくくなります。
簡単にいうと、貯金の一部を投資に回すようなイメージですね。貯蓄額から考えると、今の収入を維持できれば、iDeCoに加入できる上限年齢(60歳)まで、iDeCoもつみたてNISAも継続していて問題ないと思います。
毎年24万円が貯金から減りますが、投資額が67万2000円ずつ増えます。これを60歳まで続けると、貯金は648万円減りますが、投資額だけで1814万円になります。これに運用益が付けば、十分な老後資金ができあがります。もし、平均的に3%で運用できたとしたら、2780万円ほどになる可能性があります。貯金は270万円ほど残っている見込みですから、老後資金は3050万円ほどにもなるでしょう。
相談者さんの暮らし方が変わらず、年金が月に10万円ほど貰えるとしたら、65歳以降の生活費として必要な金額は、100歳までの35年分見ても1900万円ほど。介護費用の準備なども考えても、今のままでやっていけるのなら大きな問題はないと思います。
契約社員という働き方を選ぶなら、自分磨きは必要
転職を繰り返した結果、今の職場がよいということですが、老後資金作りの計画をまっとうするには少し不安な点があります。それは「契約社員」という働き方です。
契約期間が現状無期であるのなら問題ないのですが、期間の定めがある有期契約の場合、5年経過すると無期契約に変更しなくてはいけないという決まりがあるので、雇止めにあうこともあります。雇止め自体は合理的な理由がないと認められないものではありますが、この辺りはここでは判断できません。
万が一雇用が継続されなかったとすると、前述のような資産形成の計画が難しくなる場合があります。ですから働き方はよく考えておいた方がよいかと思います。
会社が手放したくないと思えるような武器を身につけるなど、交渉材料を作っておくこともよいかもしれません。キャリアアップは望まないとおっしゃいますが、ある程度の自分磨きは必要だと思います。
また、5年が過ぎて無期契約になれるとしたら、正社員として迎えてもらえるのか、契約社員のままなのかも少し探って、知っておきたいところです。もし正社員になれるなら、収入アップにつながるかもしれませんから。
女性の場合、40歳を過ぎると年収がグッと下がる傾向にあります。その背景には、子どもが生まれて落ち着いてから復職したら収入が減ったとか、職場に求められなくなったとか、様々な理由があります。相談者さんに該当しないかもしれませんが、少し警戒しておいてもよいかもしれません。
収入を維持し、計画を遂行するためにはどうしたらいいかを考えていきましょう。
趣味のために生活費を絞るのは◎、結婚はあきらめず柔軟に
趣味がしっかりとあることはよいことですね。生活費を絞ってもそこに少しお金をかけたいというメリハリが、上手なやりくりを継続させているポイントではないかなと思います。必要なところにお金をかけ、必要と感じない部分は絞るということは、今後も継続してほしいところです。
ところで、これからは独身で暮らすということで老後資金の計画などをみてきましたが、相談者さんはまだ30代前半です。これから出会いもあるでしょうし、晩婚化が進む今、人生を決めてしまうこともないのではないかと思います。
この先も一人の場合は、今回のような老後資金を作れるかもしれませんが、もしパートナーができた場合は、またお二人の状況を合わせて計画を練り直すなど、柔軟に考えていきましょう。一人だと計画通りに貯められたのにと思うこともあるでしょうが、二人でいるからこそ精神的に乗り越えられる部分も出てくるかもしれません。
もちろん、一人でいることが悪いわけではありませんが、まだ先は長いですから、自分を磨き、楽しい時間を過ごすことを考えても悪くはないのではないかと思います。余計なことかもしれませんが、客観的にそう思いました。
今の資金計画が上手くいくことを片隅に置きつつも、楽しく人生を歩んでほしいと思います。