じゃなくて「アバルト 124スパイダー」|あえて選ぶガイシャのススメ Vol.4

アバルト 124スパイダー/マツダ ロードスター

世界累計100万台! ギネス記録を更新し続けるスポーツカー

マツダ ロードスターは1989年に初代がデビュー。軽量・コンパクトな車体と後輪駆動による小気味良い走りで世界から支持され、最も売れている2シーターオープンスポーツカーとしてギネス記録を樹立し、既に累計生産台数100万台を突破しているほどだ。

2015年に発売を開始した現行のND型で4代目。1.5リッターNAエンジンを積む幌タイプの通常モデルに加え、リトラクタブルハードトップと2.0リッターNAエンジンを組み合わせた「ロードスターRF」も設定されている。

衝突安全性の世界基準が年々厳しくなってゆき、小型なモデルの存続が困難になってきた時代の中、4代目ロードスターはあえて原点に回帰。コンパクトかつ軽量という美点はそのまま受け継ぎ、ボディサイズは全長×全幅×全高が3,915×1,735×1,235(1,245)mm、ホイールベースは2,310mm、車両重量も990kg~1,060kg(1,100~1,130kg)となっている[()内はRF]。

軽快な走りを視覚からも体感出来るロードスターの内外装デザイン

マツダ ロードスター

とことん軽量化を追求した基本設計の4代目ロードスターは、前後が絞り込まれた外形デザインが特徴。車体の先端に備わるヘッドライトユニットも小型化され、軽量化に貢献するほど涙ぐましい努力も払われている。

さらに面白いのが、乗員からの見晴らしや見切りの良さにもこだわった点。だから運転席に座った瞬間、視覚的にも軽快さや走りの良さがしっかり感じられる。軽量化を図り研ぎ澄まされた運転感覚に加え、そうしたデザイン面での仕掛けも加わることで、ドライバーはロードスター独自の“人馬一体”な走りをより深く楽しむことが出来るのだ。

ちなみにハードトップタイプのロードスターRFのほうは、少し落ち着いたオトナの仕様としてオープンモデルとの差別化を図っており、より幅広い層へアピールする。こうした様々な努力とこだわりがあったからこそ、ロードスターが世界中で愛され、4世代も継続させているのだろう。

マツダ ロードスターの価格は260万1500円~333万4,100円、ロードスターRFは343万9,700円~390万600円(各特別仕様車除く)となっている[価格は全て消費税込、以下同]。

日本で生産されるイタリア車!?

アバルト 124スパイダー

さて、冒頭にも書いたように、4代目マツダ ロードスターでは新たに海外ブランドの共同開発モデルが誕生した。フィアット 124スパイダー/アバルト 124スパイダーだ。

4代目開発時の2012年、当時のフィアット(現FCA)がアルファロメオブランド向けにFRライトウェイトオープン2シータースポーツカーの共同開発を発表。のちにブランドを変更し、2015年から2016年にかけてフィアット版、アバルト版が相次いで発表された。

基本骨格や内装部品などをマツダ ロードスターと共通化しながらも外形デザインは完全に別の仕立てとし、内装も差別化。エンジンもFCA独自のユニットをイタリアから輸入し搭載している。

日本ではフィアット版は販売されず、アバルト版の124スパイダーのみが販売される。もちろん日本でオーダーした場合、広島から直接国内各地へデリバリーされる流れとなる。そう、アバルト 124スパイダーはイタリア車銘柄なのに“国産車”という、日本で唯一の存在なのだ。

寸法差以上に見た目が差別化されたアバルト 124スパイダー

アバルト 124スパイダー
アバルト 124スパイダー

アバルト 124スパイダーのボディサイズは、全長×全幅×全高が4,060×1,740×1,240mm。マツダ ロードスターと比較すると全長で145mm長いほかは、車幅や車高はあまり違いがない。ホイールベースもロードスターと共通の2,310mmだ。

しかし2台を並べて見比べてみると、随分印象が異なる。軽快さの表現をデザインにも持ち込んだコンパクトさが際立つマツダ ロードスターに対し、アバルト 124スパイダーはヘッドライトのユニットも大きく、ボディは前後ともグンと“立派”に見える。これはもともと1960年代に発表され、20年近く生産されたオリジナルのフィアット 124スパイダーのデザインモチーフを用いたことも影響した。当時の丸目2灯ヘッドライトと、とんがったノーズやトランク回りのデザインを現代風に表現しているのだ。

インテリアは、見やすい位置に配置されるナビディスプレイなどはマツダと共通。ロゴマークのほか上質なアルカンターラとレザーを使用するシート表皮などで差別化している。

ターボが加わったパワフルなエンジンがマツダ版との大きな違い

アバルト 124スパイダー

そしてエンジンを全く別物としたことが、軽量なこのクルマの場合は特に効果的だった。

アバルト 124スパイダーは1.4リッターマルチエア16Vエンジンにインタークーラー付ターボチャージャーが加わる。1.5リッターで132馬力/152N・mのNA(ノンターボ)エンジンが積まれるマツダ ロードスターに対し、アバルト 124スパイダーは170馬力/250N・mと、スペック上はダントツにパワフルだ。車重についてはマツダ版が990kg~1,060kgに対し、アバルト版は1,130~1,150kgと、100kg前後の少なくない差があるものの、ターボエンジン特有のパワフルな吹け上りは格別だ。マツダ版はピュアだが、ちょっと物足りない…そうした刺激を求めるユーザーには特におすすめしたい。

まさか! アバルト 124スパイダーが気になるなら今がラストチャンス!?

アバルト 124スパイダー

しかし残念ながら2019年末、欧州向け124スパイダーシリーズを販売終了するとの衝撃ニュースが海外から伝わってきた。日本仕様に関しては、FCAジャパンからの公式アナウンスは今のところなく、販売店では通常通りに購入可能だから安心して欲しい。

価格は6速MT版が406万円、6速AT版が416万9,000円。パワフルなターボエンジンを搭載し、上質な内装の仕立てとしながら、マツダ ロードスターの上級仕様との価格差はおよそ80万円程度。アバルト124スパイダーのデザインやパワフルな走りが気になっているなら…とにかく急いだほうがいい!

[筆者:トクダ トオル(MOTA)/撮影:MOTA編集部

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