職務経歴書は、社会人として歩んだキャリアを人事担当者にアピールする資料です。複数社に転職した場合、職務経歴書の書き方次第で就職活動が有利にも不利にもなります。当記事では、まずジョブホッパーとキャリアビルダーの違いと、人事担当者が転職回数の多さに対して抱くマイナスイメージを説明します。さらに、転職経験を強みに変える職務内容欄の書き方とその具体例をご紹介します。
転職する人のタイプ:ジョブホッパーとキャリアビルダー
転職をする人には、キャリア設計のない「ジョブホッパー」とキャリア設計のある「キャリアビルダー」の2タイプがいます。両者の特徴は次の通りです。
ジョブホッパー キャリアビルダー 2~3年のサイクルで転職を何度も繰り返す。転職回数が4回以上。転職歴に一貫性がなく、キャリアが浅い。 人生の目標があり、キャリア設計がある。転職後、年収や待遇が良くなる。
参考
【転職する前に要確認!】ジョブホッパーとキャリアビルダーの違いとは|アンドプラス
両者は同じ転職者ですが、キャリアビルダーは社会的評価が高く転職が成功しやすいのに対し、ジョブホッパーは社会的評価が低く転職が難しいと言われています。
転職回数が多いのは不利?人事担当者が持つマイナスイメージ
日本では転職回数が多いと就職活動に不利だと言われています。なぜなら、転職をリスクと考える時代ではなくなったものの、依然として終身雇用の意識が根強いためです。また、特にジョブホッパーとキャリアビルダーの定義があるわけではないため、職務経歴に係わらず転職回数が多いというだけでマイナスイメージを持つ人事担当者もいます。
では、転職回数の多い人に対して、人事担当者はどのようなマイナスイメージを持つのでしょうか。
採用しても早く辞めてしまうかも?
即戦力として期待して採用しても、気に入らないことがあるとすぐに辞めてしまうのではないか、と考えられてしまいます。
企業の経営資源の一つは人、つまり労働力です。そのため、企業は利益貢献をする人材を育て、将来性を考えてキャリアを積ませます。しかし、採用してもすぐに辞めてしまう人材は、企業にとって利益がないばかりか負担になってしまいます。
またチームで行動する業種の場合、すぐに辞めてしまうとチームメンバーの士気が下がってしまうという心配もあります。
ストレスへの耐性がないのかも?
転職が多いということは、仕事をする上で生じるストレスに耐えられないのではないか、と考えられてしまいます。
仕事はうまくいくことばかりではありません。相手のニーズに応えるために妥協案を模索したり、円滑に業務を進めるために手間を惜しまずに取り組まなければなりません。そのため、ストレスのまったくない仕事はないと言ってもいいでしょう。
しかし、これらのストレスを我慢できない人には仕事を頼むことができなくなります。すると、本来分担できたはずの仕事をほかの社員が負担しなければならず、企業にとっても不利益になってしまいます。
特定分野でプロとして即戦力になれないのでは?
転職歴に職種の一貫性がない場合、それぞれの分野でのキャリアが浅いため、即戦力とならないのではないか、と考えられてしまいます。
労働力を確保するための新卒採用とは異なり、ある程度職歴のある転職者に対しては、企業は特定分野のプロとして即戦力になることを求めて採用します。職歴が多岐の分野にわたっている場合は、特定の分野で極めたスキルや経験値が少ないため即戦力にならないと評価してしまいます。
2社以上の職務経験がある際の職務経歴書を書くコツ
キャリアビルダーである場合、転職回数が多いものの専門的スキルや経験値が豊富で、入社後は即戦力として働けることをアピールできます。このような転職者は中途採用市場で需要があるため、比較的就職先を選びやすく、また収入もアップする見込みがあります。
対して、ジョブホッパーの場合は、転職回数が多い理由を前向きに伝え、仕事に対して熱意や遂行力があることをアピールする必要があります。専門的なスキルや経験がない場合は、それを補う自己PRポイントを見つけておくと良いでしょう。
それでは、どのように書けば就職活動で転職回数が多いことを不利にせずに済むのか、見ていきましょう。
転職歴は正直にすべて書こう
2社以上の職務経験がある場合、必ず職務内容欄にすべての会社での職歴を記載しましょう。転職回数が多いことを不安視し、職歴を省略したりごまかすのは得策ではありません。
大手企業は入社後のトラブルを避けるため、採用試験の最終選考の際に前の職場に問い合わせる場合もありますので、転職歴は正直に書くことが大切です。
退職理由はポジティブに!転職理由と一貫性を持たせる
すべての転職者がキャリアアップを理由に前職を辞めたわけではありません。しかし、退職理由があまりにネガティブで自分勝手だと、人事担当者はまた同じ理由で退職するかもしれないと考え、採用を躊躇するかもしれません。
そのため、退職理由はできるだけキャリアアップを目的としたポジティブな言い回しにする必要があります。また、転職理由は退職理由と一貫性を持たせるよう、キャリア設計の一つであると印象づける表現を選ぶことが肝要です。
よくあるネガティブな退職理由を、キャリアアップを目的としているように印象づける具体例が次の通りです。
【ネガティブな退職理由を前向きにする表現】
ネガティブな退職理由 退職理由を前向きにする表現 自分に向いている仕事ではなかったから。 仕事で(他業種)に触れる機会があり、その経験から(他業種)の仕事に興味を持ったから。 給料が少なかったから。 成果責任基準が明確な企業で、自分の能力を発揮したいと考えたから。 職場の風通しが悪かったから。 職場コミュニケーションが盛んな企業で、積極的に仕事に取り組みたいと考えたから。
このように、相手に与える印象がプラスになるような表現を意識することが大切です。
経験職種が多い場合は文字量にメリハリをつける
いくつかの職種を経験した場合は、応募企業に関連した職種内容を特に詳しく書きましょう。反対に、あまり関連のない職種内容は少なめに書きます。このように応募企業にとって即戦力となるスキルや経験があることをアピールするため、文字量を調整しましょう。
「生かせる能力」という項目を入れる
職務内容欄には、「会社概要」と「職歴詳細」を書きますが、「生かせる能力」という項目を追加するのがおすすめです。これにより、人事担当者に即戦力となりうるスキル・経験を積んできたことを伝えることができます。
職種が多岐にわたる場合は、実用的なスキルがあることや人脈が広いことをアピールすると良いでしょう。
応募企業のニーズに合わせてカスタマイズしよう
企業や業種によって求職者に求めるスキルや経験は異なります。そのため、即戦力として役に立つことをアピールする方法は、応募企業に合わせてカスタマイズする必要があります。
特に転職回数が多い人の職務経歴書は内容が多いため、人事担当者はどこを見ればほかの求職者よりも優れた人材と判断できるのか分かりづらいです。アピールする項目やその順序、分量などを工夫し、人事担当者が読みやすい職務経歴書を作成するよう心がけましょう。
また同じ表現を多用せず、言い回しを選ぶようにしましょう。同じ言葉を何度も使ったり、強調した表現を使いすぎると、常識がないという印象を人事担当者に与えてしまう可能性があります。
職務内容の形式の選び方:求職者の特徴・目的別に比較
職務経歴書で最も人事担当者が注目するのが職務内容欄です。これまで経験した職務や身についたスキル、経験、評価された実績などを詳細に書くことによって、企業の求める人材であることをアピールできる欄です。
職務内容欄には大きく分けて「キャリア式」と「編年体式」の2つの形式があります。編年体式には、時系列をさかのぼる「逆編年体式」という書き方もあります。
【職務経歴書の職務内容欄の形式】
キャリア式 編年体式 - 逆編年体式 職務内容や分野、プロジェクト別 勤務先ごとに古い職歴から新しい職歴へと、時系列に沿って記入 勤務先ごとに新しい職歴から古い職歴へと、時系列を遡って記入
職務内容の形式は、応募者のアピールしたいことに合わせて選ぶ必要があります。それぞれの形式はどんな応募者に向いているのでしょうか。特徴をまとめてみました。
キャリア式が向いている人の特徴
- 技術職などの高い専門性を必要とされる職種に就いていた
- 転職回数が多く、4社以上同業種で仕事をした経験がある
- キャリアチェンジを目指している
- 離職期間がある
- 若くて、職歴よりも実績・スキルを効果的にアピールしたい
編年体式が向いている人の特徴
- 離職期間がない
- 勤続年数が長く、転職回数が3回以内
- 専門性が低い職種に就いていた
- 前に勤めていた会社内での異動回数が少ない
- あまり若くはなく、長い経験で身についたスキルをアピールしたい
- 過去の転職や異動でキャリアアップに成功している
逆編年体式が向いている人の特徴
逆編年体式が向いている人は、編年体式が向いている人の特徴に加え、次の2つの特徴のいずれかを満たしている人におすすめです。
- 直近の職歴と応募職種が近い
- 直近の職歴でアピールできる実績を残した
【形式別】2社以上の職務経験がある際の職務経歴書の具体例
職務内容欄の3つの形式ごとに具体的な書き方例を見てみましょう。
キャリア式
営業系からIT技術関連にキャリア変更し、その後キャリアを積んでいる人の職務内容です。IT技術関連業種一本でキャリアアップした人に比べ、営業経験があることで顧客のニーズに応えるコミュニケーションやビジネスマナーが身についていることをアピールできます。
【キャリア式で書く職務内容欄の例】
【IT技術関連】
20××年××月~現在 〇〇 株式会社
事業内容:Webサイト制作
資本金:××百万円 売上高:××百万円(20××年) 従業員数:××名 非上場
業務内容 WEBディレクター
【業務内容】
- 顧客と直接対面し、制作内容をヒアリング
- 制作チームとの会議
- サイト完成後の運用チェックやアクセス解析
- クレーム対応
【活かせる能力】
- 営業で培ったコミュニケーション能力。
20××年××月~20××年××月 〇〇 株式会社
事業内容:広告制作
資本金:××百万円 売上高:××百万円(20××年) 従業員数:××名 上場
業務内容 WEBデザイナー
【業務内容】
- プロジェクトチームとの会議
- 企画内容や商品のコンセプトに合わせたデザインの考案
【活かせる能力】
- 使用言語:HTML、CSS、javaScript、PHP
20××年××月~20××年××月 〇〇 株式会社
事業内容:スマートフォンアプリ開発
資本金:××百万円 売上高:××百万円(20××年) 従業員数:××名 非上場
業務内容 WEBアプリ
【業務内容】
- プロジェクトチームとの会議
- iPhoneアプリとAndroidのアプリの開発
【活かせる能力】
- 使用言語:Swift、Kotlin
【営業関連】
20××年××月~20××年××月 〇〇 株式会社
事業内容:家電販売
資本金:××百万円 売上高:××百万円(20××年) 従業員数:××名 上場
業務内容 〇〇店 フロアスタッフ(売り場スタッフ××名)
【業務内容】
- 接客・販売
- レジ業務、会員登録業務
- 品出し、商品在庫管理
- クレーム対応
- スタッフ教育
【実績】
- 担当店舗年間売上××万円
【活かせる能力】
- 最新OA機器やパソコンの技術革新に対する知識が豊富。
- 顧客の使用に合わせた商品の紹介が評価され、店内売上に貢献。
編年体式
事務系職種でキャリアアップをはかる人の職務内容です。職種に一貫性があるため、時系列でキャリアアップしていることをアピールしましょう。
【編年体式で書く職務内容欄の例】
【19××年4月~20××年8月 株式会社〇〇】
事業内容:〇〇
資本金:××百万円 売上高:××百万円(20××年) 従業員数:××名 非上場
期間 業務内容 19××年4月
~
20××年8月
【業務内容】
- 電話・FAX・メール・来客対応
- 備品購入・管理
- 顧客管理・クレーム対応
- 社内レクリエーションの企画・実行の補助
【活かせる能力】
- マイクロソフトオフィススペシャリスト
【20××年9月~現在 〇〇株式会社】
事業内容:〇〇
資本金:××百万円 売上高:××百万円(20××年) 従業員数:××名 上場
期間 業務内容 20××年9月
~
20××3月
【業務内容】
- 電話・FAX・メール・来客対応
- 会議資料・研修会資料作成
- 社報作成・管理
- 新人育成
【活かせる能力】
- 日商簿記2級取得
- TOEIC650点
~
現在
【業務内容】
- 伝票入力・整理
- 請求書作成・発行
- 仕訳及び伝票起票 (総勘定元帳・補助簿等)
- 現金・小切手・手形取扱(現金出納帳・手形帳)
- 売掛業務(売上帳・入金消込・残高管理)
- 買掛業務(支払手続・仕入帳・残高管理)
【活かせる能力】
- 現在TOEIC800点目指して勉強中。
逆編年体式
販売系職種でキャリアアップをはかる人の職務内容です。前職で店長として従業員を管理した経験をアピールしたいので、逆編年体式で書くのがおすすめです。
【逆編年体式で書く職務内容欄の例】
【20××年7月~現在 株式会社〇〇】
事業内容:服飾用品の企画・販売
資本金:××百万円 売上高:××百万円(20××年) 従業員数:××名 上場
期間 業務内容 20××年11月
~
現在
【業務内容】
予算実績管理、勤務シフト作成、クレーム対応、店頭プロモーションなどのSP業務、円滑な店舗運営のための従業員研修や面談実施
【実績】
20××年:担当店舗年間売上××万円
予算比100%/対前年比106%
【活かせる能力】
- リピーターを増やすために月に1度DM送付、新商品入荷時に電話勧誘などの定期的アプローチに努める。
- 20××年に首都圏10店舗中、売上1位にて表彰。
- 職場コミュニケーションを活発にするため、従業員研修や面談を行い、問題意識を共有する。
~
20××年10月
【業務内容】
接客・販売、商品在庫管理、販売促進(店舗VMD、店内BGM選曲)、スタッフ教育
【実績】
20××年:担当店舗年間売上××万円
【活かせる能力】
- 美容部員の経験を活かし、従業員の身だしなみチェックシステムを提案。顧客満足度上昇に貢献。
- ホスピタリティ検定試験2級
【19××年4月~20××年6月 〇〇 株式会社】
事業内容:化粧品販売
資本金:××百万円 売上高:××百万円(20××年) 従業員数:××名 上場
期間 業務内容 19××年4月
~
20××年6月
【業務内容】
接客・販売、商品在庫管理、スタッフ教育
【実績】
20××年:担当店舗年間売上××万円
【活かせる能力】
- カスタマーファーストを心がけた接客で固定客を獲得。
- 店内クリンネスを徹底する。
まとめ
職務経歴が複数社ある場合、ほかの求職者と比べて転職経験が強みになることをアピールする職務経歴書を書きましょう。
キャリア設計を目的に転職を行っていると人事担当者に印象づけることができれば、就職活動に有利です。ご自身の経歴の棚卸しを行い、応募企業の求める能力を選んでアピールしましょう。
参考
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