【解説】可能性残すも高い壁 原爆症認定訴訟

 原告側の敗訴となった最高裁判決は、要医療性の判断について“厳格さ”を求めた。最高裁の示した「特別な事情」を満たせば経過観察中でも要医療性が認められる可能性は残したが、救済を求める被爆者にとっては高い壁となる。
 二つの認定要件のうち放射線起因性は、2000年の松谷訴訟判決などで被爆者勝訴が続き、段階的に緩和されてきた。だが、要医療性は疾病の状況に基づく個別判断とされ、あいまいだった。今回の最高裁判決は要医療性に関する初の統一見解として注目されたが、「特別な事情」という言葉もまた「非常に抽象的」(原告弁護団)といえる。行政側の運用に委ねられる部分が大きい。
 約10年前から要医療性を理由に申請が却下される事例が増え、14年以降はいったん原爆症認定を受けても、更新時に要医療性が認められないことも増えている。原告団は「被爆者の切り捨て」と懸念する。
 国の主張がほぼ認められた判決を受け、行政側の裁量はより大きくなるとみられる。被爆から75年。救済を求める被爆者はいまだ多い。病状変化など個別の事情に目を配り、“血の通った”こまやかな運用が求められる。

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