元レイズ岩村明憲氏が筒香嘉智に伝えたい三塁守備の“極意” 「大事なのは距離感」【後編】

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レイズ・筒香嘉智【写真:Getty Images】

岩村氏は芝の球場での三塁守備の難しさを説明「アンツーカーが気になる」

 レイズに加入した筒香嘉智外野手は24日(日本時間25日)に行われたオープン戦の本拠地レッドソックス戦に「5番・DH」で2試合連続出場し“メジャー初本塁打”を放った。26日(同27日)の本拠地ツインズ戦では三塁手デビューが決まっている。そんな和製大砲に熱視線を送るのが球団OBで現在はBCリーグ福島レッドホープスで監督を務める岩村明憲氏だ。41歳の岩村氏はポスティングシステムを利用して2006年オフにヤクルトからレイズに移籍。レイズでは07年から3年間プレーして、08年にはレイズの地区初Vに貢献し、ワールドシリーズに出場した。レイズの“レジェンド”はメジャーでの心構えなどを語ってくれた。

――三塁を守る際の難しさは

「守備に関しては凄く難しい。アンツーカーという芝の切れ目がありますよね? セカンドやショートはまだ比較的楽なんですよ。距離があるから。ですがサードって、例えばランナー、一、三塁、満塁でのダブルプレー態勢、もしくはランナー三塁で前進守備をする時にアンツーカーが凄く気になる。その距離感が分かるかどうか。サードは真っすぐだけではなくてベースのところが丸くなっていますよね? ですから縦のラインでそのカーブのところに入ることも想定をしておかないといけない。ランナー三塁の場面でそんな打球が来てこっちに跳ねてきた時に予測ができていなければ、反応なんか絶対できませんから。距離感は練習が必要でしょう。球場によって芝の長さも違う、人工芝もある、天然芝もある。天然芝でも芝の長さの違いがある」

――相当に難しい

「例えば、(ナイターで)6回以降の夜露を芝が含んだ時というのは打球がパーンとカットしてくるっていうのも、これもやっぱり、結構面倒くさいんです。サードとしてずっとやっているからそれが当たり前でしたけど。実際に自分がサードをやっていたころは、それを言葉にしたことは正直なかったですね。やって当たり前でしたので。ですが、僕が一番気を付けたというか、嫌だったのは面倒くさいなと思ったのは「距離」。ちょっと引くか前に行ってしまうかの違いです。もう少し下がってくれって言われてもここが中途半端で、ちょっと逃げたようになった瞬間にそれでもうボールが抜けてしまう。打球が速いから。抜けることがあるのであれば、速い打球は体で止めますよと僕は言っていた。ゲーリー・シェフィールドとかバリ怖でした。前に守る時、こんなんで無理やろ!って」

――そういう距離感は、試合前練習で頭に入れて

「いや、今ですね。キャンプ、オープン戦がすごく大事です、これは。ただ夜の練習がなかなかできないから、夜露っていうのはシーズンに入ってこないと難しいけれども、距離感に関しては今です。もう今やったほうがいい」

――今でしたらスタントンやジャッジらがいる

「ジャッジは上に打ってくれるからいいですね。スタントンは、こうえぐいですよね」

――トロピカーナフィールドでのアドバイスは? 左打者として

「今はボールも飛びますから(笑)、正直。本当に飛ぶと思いますよ。解説していても、詰まったような打球でも入ったりする。入ったどころではなく中段まで飛んでいる。引っ張らなくていい、本当に。センターから反対方向も、左中間でも全然OKですから。練習の最初なんかも特にそうでした。引っ張らないで打っている形が試合で出せればいいんじゃないかなと思いますけどね」

――岩村さんがメジャー1年目に感じたことは

「今日の目標を、今日立てるのが一番大事だと僕は思います。僕なんかはマドンと話をした時に、最初はどこまで適応能力があるかわからないから、試合もレギュラーとして出て、出て休んで、出て休むの繰り返しで、後はずっと出る。それも、5回、7回が多くて最後は、9イニング出られますっていうのが。計画性があるんです、メジャーの場合は。何打席必要かなど、もしかしたら聞かれているかもしれない。でも日本のキャンプ自体が、何打席必要かという感覚がないので。考えたことないわけですよ。じゃ50打席欲しいですとか、そういうのが結構アメリカ人の好きなところで。だからこそメジャーの調整方法に、長い目で見れば1年でも早く慣れるっていう。今年は多分、ずっとやっていくと思うんですよ。来年は何打席必要? となると思うんです」

BCリーグ「福島レッドホープス」代表取締役兼監督の岩村明憲氏【写真:木崎英夫】

岩村氏が2008年を振り返る「ああいう経験ができたことは嬉しい」

――岩村さんもキャンプでは最初は苦労されたが、開幕にはバシッて合わせて

「まあ、ホッとしてたのは僕ですけどね(笑)」

――キャンプ終盤の調整はどのように

「監督もバッティングコーチもみんなが、アキのとにかくパフォーマンスを発揮するために自分がやりたい練習を教えてくれと。やりたい練習をどんどん手伝うからって言ってくれたことが、僕からしたら申し訳ないなと思いました。それは結果が出ていないから、そうやって言われるんだな? ちょっと気を使わせたな? というのがありました。だから、試合が終わってからでも打撃ケージに行って、通訳に投げてもらったりとか、他のスタッフにも投げてもらったりとかして、バッティング練習をこういう風に日本でやってたことをやりたいっていうことはありましたね。そういうことがあったから多分、開幕には合ったと思うんですけれども。ただ開幕もね、3打席目にヒットを打ったんですけど、3打席目っていうよりも、ヒット1本出るまでは、やっぱりどの選手も不安だと思います。あれが開幕戦に打てたというのは大きなポイントだったですね。それを引きずらなくってよかったので」

――筒香選手がレイズに入ると決まった時は?

「まさかと思いましたけどね。フロリダは田舎ですけど住めば都で、すごく良いところというのは、みんな知っているでしょうけど。ただ、多分レイズのスタッフもこれだけ日本メディアが来るのは、ゴジラ(松井秀喜)以来。2012年以来ですよね。久しぶりだから嬉しいんじゃないでしょうか。レイズとして日本選手が1人加入するだけでこれだけチーム名を言ってくれるというのは、嬉しいんじゃないですかね。本当にここに入ると思っていませんでしたけど、正直ね」

――日本人スラッガーが続いている。岩村さん松井さんから筒香さんへと

「本当に小規模の中でやりくりをしようとしているチームが、筒香くんに対してあれだけの金額を出すというのは、かなり期待があるので。よそのチームで20億円出すのと同じくらいの価値がここではあると思います。そういう部分は、多分筒香くんもやっているうちに分かってくる。メジャーリーガーになって、他のチーム事情も頭に入ってくるので。そういうことが、あの時こうだったんだっていうのは多分あると思いますけどね。そうしたらもっと粋に感じて。男だから粋に感じれば、もっとやりがいがね、もっとやってくれると思いますけど」

――オーナーが、2008年のリーグ優勝を決める試合で岩村さんが最後にゴロをさばいて。あの瞬間が最高だと、ある意味ではチームのレジェンドだと思いますが

「あのシーンがあったからこそ、ワールドシリーズもあったし。本当幸せだなと思うのは、ワールドシリーズの経験できたし、『ゲーム7』っていうのもね。負けたら終わりっていうところを経験できたのも大きいですね。プロ野球で、負けたら終わりってないでしょ。トーナメントがないから、負けても明日勝てばいいやとか取り返せばいいっていうのが結構口癖になるんですけど。本当に負けられないという『ゲーム7』はそうない。少ないのかな。だからああいう経験ができたことは、嬉しい。でも、ワールドシリーズは負けているので。筒香くんがここにいる間にね、今はプレーオフに行けそうなとこにはいると思うので。投打が噛み合えば、そこに行ってチャンピオンになって、ワールドシリーズに行って。そこでも勝てれば、一番すごい綺麗な筋書きになると思いますけどね。頑張って欲しいですね」(木崎英夫 / Hideo Kizaki)