専門学校生の就職事情について、どのようになっているのか、そして内定までの過程においてどのような段取りで展開されるのかなどの情報を知りたいという人もいることでしょう。こちらの記事では、専門学校生に就活関連の情報や、就職後の収入をメインに説明します。
専門学校卒の就職率
2019年5月に発表された厚生労働省から発表された『平成31年3月大学等卒業者の就職状況』によると、専門学校卒(※専門課程も含む)の就職率は、96.6%という結果でした。
この数年は、労働人口が減少し、人手不足という現象となっていることもあってか、専門学校卒の就職率も高い水準をキープしている傾向です。
参考
平成31年3月大学等卒業者の就職状況を公表します|厚生労働省
専門学校生の就職事情の特徴と傾向
専門学校生の就職事情については、自分で企業への戦略を考えて行動する開拓型の大学生の就活事情とは違いがあります。
では、専門学校生の就活事情の特徴や傾向についてどのようなものがあるのでしょうか。こちらの章では、詳細について紹介していきましょう。
専門性を強みにできる
「専門学校卒」として就活する際に強みとなるのは、何と言っても「専門性」です。専門学校は、カリキュラムに実習時間が多いこともあり、車の整備や製菓などといった専門的なスキルを高められる環境が万全。その実習で身につけたスキルにまつわることを面接やエントリーシートでアピールをすれば、採用担当者の心を揺さぶるかもしれません。
企業からスカウトが入る場合がある
専門学校の場合、企業から直々にスカウトが入ることもあり、その後の面接や試験についてもスムーズに進むこともあります。そのため、大学生の就活よりも負担が少ないともいわれています。
学校や担任から手厚いサポートが受けられる
専門学校の場合、大学と違い、クラス編成が中学や高校のようなクラス担任制をとっていることもあり、学生と担任との距離感が近いことが大きな特徴です。そのメリットを生かし、学校やクラスでも学生一人ひとりの特性を生かした就活指導がなされます。学生が就活で悩んでいる場合も、親身に学校や担任が対応するのも専門学校の特徴といえるでしょう。
業界内の転職がしやすい
専門学校生は、在学中に高いスキルを習得し、就職しています。もし、第二新卒や既卒で新たな職場を探している場合でも、これまでの実績が高く評価され、即戦力として転職しやすい傾向があります。
学校側が学生の就職先を探し、求人枠を確保
就職後に学生が学校で習得したスキルを生かせるよう、学校側が企業へ働きかけ、求人枠を確保するという専門学校も存在します。専門学校を選ぶ際には、学校が企業側にどのようなアクションをしているかチェックしておくといいかもしれません。
キャリアカウンセラーが学生のフォローをしている
専門学校では学生たちの就活がスムーズに行えるよう、キャリアカウンセラーを常駐させていることも。そのため、学生が就活で悩みがあるという場合でも、キャリアカウンセラーが的確なアドバイスをするといった環境が整っています。
専門学校卒の給与事情
専門学校卒の就職で気になるのが、給与に関連したことかもしれません。こちらの章では、専門学校卒の給与事情について説明していきましょう。
初任給の推移
参考までに東京労働局が公表した2014年から2019年の専門学校卒の初任給については、以下の表にまとめました。
専門学校卒の初任給推移
初任給(千円) 2014年3月卒 186.4 2015年3月卒 188.0 2016年3月卒 187.5 2017年3月卒 190.0 2018年3月卒 190.0 2019年3月卒 193.4
(学卒者の初任賃金 平成31年3月 新規学校卒業者の求人初任給調査結果|東京都労働局,P5 より筆者作成)
こちらの表でもわかるように専門学校卒の初任給が右肩上がりなのが把握できます。今後の動向にも注目です。
企業規模別の初任給
東京労働局が公表した2019年の企業規模別の初任給については、以下の表のとおり。
専門学校卒:2019年企業規模別の初任給
企業規模 初任給(万円) 1,000人~ 205.6 500~999人 186.0 100~499人 190.8 30~99人 194.9 ~29人 190.0
(学卒者の初任賃金 平成31年3月 新規学校卒業者の求人初任給調査結果|東京都労働局,P9 より筆者作成)
生涯賃金について
少子高齢化の加速化による労働人口に減少によって、気になるのが生涯賃金のことかもしれません。
参考までに『ユースフル労働統計2019』の資料内の「 同一企業型の生涯賃金」の内容をもとに、専門学校卒の生涯賃金について下記のとおりまとめています。なお、以下の賃金については、退職金を含めない60歳までの賃金を表記しています。
専門学校卒:男女別ならびに企業別の生涯賃金
生涯賃金 男子 女子 大企業 約2億8千万円 約2億2千万円 中企業 約2億3千万円 約1億9千万円 小企業 約2億1千万円 約1億7千万円
(ユースフル労働統計 2019 労働統計加工指標集|労働政策研究・研修機構(JILPT),P319 より筆者作成)
専門学校生が就活に不利なケース
最終学歴によって就活が左右されることもよく聞く話であり、大卒の方が専門学校卒よりも就職に有利という声も上がっています。
実際は、大学では社会に活用できる多くの知識を学ぶことに注力していますが、専門学校はプログラミング・会計・デザインといった「学ぶ分野」をかなり絞り、スキルを磨いています。そのため、専門学校生は、学びと直結した分野での職場では早い段階から即戦力となる人材となる可能性もあります。
ただし、専門学校で学んだこと以外の分野での就活となるとハードルが高いため、不利になる場合も。「どうして専門外の就職先や業界を選ぶのか」と理由については、採用担当者に納得してもらえるよう対策を練らなくてはなりません。
専門学校生が就職するためにやっておきたいこと
専門学校生が就職するためには、マナーを身につけるなど……と、いくつかやっておくことがあります。その中でも専門学校で学んだことのほかにも、力を注いだ活動についても今一度振り返ってみることをおすすめします。
そして、振り返った内容を手書きでメモにまとめたり、スマートフォンのメモアプリなどで記録したりすると、就活での面接やエントリーシートの記載などで役に立つこともあります。
さらに、お目当ての企業の研究(例:概要・歴史・競合他社など)を行うと、面接のときに聞かれても有利です。
まとめ
専門学校卒の就職は、専門的なスキルを学生時代にマスターをしていることもあり、就職率も高く、即戦力となる人材として重宝されます。
専門学校の就活に関しては、大学と違う場合もあります。例えば、学校や担任から手厚いサポートを受けながら、安心して就活に臨めたり、業界内の転職もしやすくなっているなどが特徴として挙げられます。ほかにも企業から専門学校へスカウトがある場合も。
このように、専門学校生の就活は学生が内定を取りやすいよう、学校側も全力で取り組んでいます。専門学校生でこれから就活を始める場合は、こちらの記事を参考に最適な就職先を探してみてはいかがでしょうか。
参考
平成31年3月大学等卒業者の就職状況を公表します|厚生労働省
専修学校とは|文部科学省
専修学校専門課程と特徴・職業実践専門課程|文部科学省
専修学校の教育内容|文部科学省
平成30年賃金構造基本統計調査(初任給)の概況 |厚生労働省
「学歴なんて関係ない」の真実 生涯賃金これだけ違う|マネーコラム|NIKKEI STYLE