地域の絆共助で 海老名、自治会が市と協定

 発生からまもなく21年となる阪神大震災や、5年の節目を迎える東日本大震災で教訓とされた「地域の絆」の大切さ。それを風化させない取り組みを海老名市の自治会がスタートさせた。災害時、マンションの集会所などを開放、身近な避難者を受け入れる。災害時に共助を担う自治会活動への関心を高め、低下する加入率の向上にもつなげたい考えだ。

 市自治会連絡協議会(山本准会長)と市は昨年10月、「災害時などにおける共同住宅の地域連携・共助に関する協定」を締結した。共同住宅に関しては、東日本大震災を受けて海沿いの自治体が津波避難ビルに指定する動きはあったが、住民側が主導する形で協定に至るのは珍しいという。

 協定では、例えば大規模地震発生時に、自治会と管理組合が協議し、耐震強度が弱く損壊した木造住宅の住民のためにマンションの集会所などの共用スペースを開放、食事も提供する。

 こうした近隣の避難者の受け入れ期間は7日間以内、被災状況によって延長を認める。利用は無料とし、市側が水道光熱費を負担、開放中に損壊があった場合、原状回復をする責任も明記された。

 マンションを含む自治会は10あり、うち8自治会がそれぞれの管理組合と参加する方向で事前協議を済ませた。市は今年1月から防災倉庫を設置、備蓄食料の配備を順次実施していくという。

 市危機管理課によると、小学校など32カ所ある避難所の収容総数は約3万4千人。関東大震災クラスの被害想定では市内で最大約6万5千人の避難者が発生するとされ、受け入れ先の確保が課題になっている。マンションにより収容人数は異なるが、協定の運用で多くて数十人の受け入れが見込まれている。

 東日本大震災では共助の重要性が指摘されたが、それを担うべき市内自治会の加入率は73・1%(昨年4月現在)で低下傾向が続いている。

 山本会長(36)は「自治会の未加入問題は、価値観の多様化が背景にあるとされている。時代とともに求められる役割も変わるけれど、防災は変わらない活動。共助の形を具体的に示すことで、未加入者が多い若い世代にアピールしたい」と話している。

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