横浜、鎌倉、箱根… 客足遠のく観光地 新型コロナ 地元経済に打撃 神奈川

中華街の大通り。観光客の姿はまばらで、普段のにぎわいとは程遠かった=29日午後0時50分ごろ、横浜市中区

 新型コロナウイルスの感染拡大で、県内の観光地も国内外からの客足が激減し、地元経済への打撃が深刻化している。施設の休館に踏み切り、そもそもの観光資源が縮小する行楽地も。安倍晋三首相が「いまから2週間が瀬戸際」と呼び掛けた週末の29日、各地で閑古鳥が鳴いた。

 昼食時の横浜中華街(横浜市中区)。同市保土ケ谷区から訪れた夫婦は、まばらな人影に驚いた。「いつもの土日は、まっすぐ歩けないくらいなのに」。店先にアルコールの消毒液が備え付けられ、すれ違えば皆マスク姿。「きょうは食事する気がしない」と立ち去った。

 横浜中華街発展会協同組合の専務理事、石河陽一郎さん(48)の体感では客足は「3割減」だ。集団感染が確認されたクルーズ船の帰港先が「横浜」で、ウイルス発生源が「中国」であったことが、風評にもつながっているとみる。

 横浜商工会議所の企業調査によると、中華街の客足は26日時点で通常の3分の1から半分にまで減った。上野孝会頭は27日の定例会見で「想像以上に客足が減っている」と危機感をあらわにした。市内のホテル業界も予約のキャンセルが目立つという。

 年間延べ約2千万人が訪れる古都・鎌倉。鎌倉駅から鶴岡八幡宮に続く「小町通り」も29日、普段のにぎわいはなかった。通り沿いの玩具店元店主、今雅史さん(72)は「2月の売り上げは例年の半分」と嘆く。

 鎌倉市内は拡大防止策で、観光資源が縮小されている。鎌倉国宝館や鎌倉文学館を含む市関連の文化施設が、3月15日まで休館中だ。商店会副会長でもある今さんは「感染拡大防止のためにも、めげずに終息を待つしかない」ともどかしそうだった。

 箱根町は災難続きだ。箱根山の噴火警戒レベルが5カ月ぶりに引き下げられた昨年10月、台風19号で千ミリを超える全国最多の記録的大雨に見舞われた。箱根登山鉄道は一部区間で運休が続く。

 「台風で鉄道が運休しても、お客さんは来てくれた。今回の影響は深刻」。同町強羅にある喫茶店の女性従業員は、ため息をつく。1月下旬から欧米の観光客が急減したという。別の飲食店も、この日の客足は平日並みだった。男性店長は「いつまで耐えればいいのか」と不安がった。

 友人と訪れた女子大学生(20)は「にぎやかなときに、また来たい」と話した。

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