東日本大震災と障害者

 「障害者が消えた」。2011年3月11日の東日本大震災発生後、東京の全国障害者ネットワークに衝撃的な情報が飛び込んでくる。支援者が避難所を回っても、障害者はどこにもいないと。こうした場面から映画のストーリーは大きく動きだす▲先月初旬、諫早市立たらみ図書館で上映された「星に語りて」(きょうされん製作)は、大混乱の中に置かれた障害者の過酷な現実を描いている▲知的障害がある福島県の青年は東京電力福島第1原発事故の直後、避難する家族の車に乗せてもらえず、療育手帳と共に自宅に一人置き去りにされた▲自閉症の青年は避難所で配給の順番が守れず、母親と姿を消した。トイレのたびに周囲の協力を得ることに気が引けた視覚障害者の女性は地震で半壊した自宅に戻った。ベッドでしか横になれない半身まひの患者は車いすに乗ったまま避難所で1週間過ごした▲遠慮、我慢、迷惑…。災害弱者には、そんな思いが常に付きまとっているのだろう。多くの障害者や家族が避難することをあきらめた▲「映画は事実。平時の課題が災害時に何倍にもなって跳ね返ってくる」。福島県で障害者支援に奔走した和田庄司さんが上映後の講演で警鐘を鳴らした。家族の絆、地域社会の絆とは何か。あらためて考える9年目の春にしたい。(真)

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