新型コロナの影、横浜・野毛にも 客も店員もマスク…「でも席が埋まらぬ」

外出控えの影響が懸念される横浜屈指の飲食店街・野毛地区

 新型コロナウイルスの感染拡大が、横浜屈指の飲食店街・野毛地区にもじわりと影を落とし始めた。外出や飲み会を控える動きが広がっており、売上げや客足に影響が出ている店も。店主たちや、常連客らもマスク着用や消毒などで自衛の策を取るが、先行きの見通せない事態に困惑が広がる。

 「しょうがない事態だけど本当にお客が減っている。席が埋まらない」

 焼き鳥店の女性経営者が、眉をひそめた。20日ごろから客足の減少が目立つようになったといい、政府が感染症対策の基本方針を示した25日は「売上げが通常の5分の1まで落ちた」。

 政府は経済界に在宅勤務や時差出勤を要請しており、「在宅で働くように言われた人は仕事が終わってもなかなか外出できないだろう」と肩を落とし、こう続けた。「終息に向けた見通しが全く立たないことが心配。どうしたらいいのか。良案があったら教えてもらいたい」

 立ち飲み屋で働く女性はマスク姿で「確かに人の流れが変わった。何割とは言えないけど客足は明らかに減った」と打ち明けた。この店では少しでも安心して来店してもらおうと、従業員のマスク着用を伝える貼り紙を店頭に掲示し、女性は首からストラップ型の除菌剤を下げて接客に当たっていた。

 カウンター越しに接客するガールズバーを経営する40代女性は「常連さんがついているので、まだ影響は限定的。ついていない店はきついはず」と話す。開店前には店内に除菌スプレーをまき、従業員や来店客にはアルコールジェルで手を消毒してもらっているという。「とにかくできる対策で予防しかない。女の子にはマスク着用、お客さんには除菌スプレーをかけさせてもらっている」

 客側も野毛の“異変”を感じ取っており、会社員男性(57)は「明らかに客が少ない。1軒目は貸し切りのようだった」と困惑気味。別の会社員男性(57)も「客の入りで予測がつかないから、仕込みも大変でしょうね」と店側をおもんぱかる。別のグループの会社員男性(47)は「ずっと沈んでいても仕方ない。対策をした上で、こういう時こそ前向きに過ごしたい」と、上着から取り出したマスクを赤らんだ顔にかぶせていた。

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