閉校

 3月に入った。例年なら小中学校では、卒業式に向けて準備に追われているころだ。今年は新型コロナウイルスの影響で臨時休校することになり、卒業式がどうなるのか気をもんでいる方も多いだろう▲毎年この時期になると、閉校のニュースを耳にする。少子化で児童、生徒が少なくなり、学校も減り続けている▲この5年間に県内では小中学校合わせて40校以上が閉校している。この春も、小中4校が歴史に幕を下ろす▲閉校になる中学校出身の同僚がいることを思い出し、話を聞いてみた。漁港に面した地域にある学校で、「地域の活性化の源だった。明かりがなくなる」と残念がっていた。今月中旬の閉校式に出席すると話していたが、式の開催は当面見送りになったという▲筆者が通っていた中学校も来年春で終わりを迎える。山の中腹にあり、学校にたどり着く最後の坂道は特にこう配が急だった。雪の日には地域の人たちが縄を張ってくれていて、それを握りながら数珠つなぎになって坂道を上った▲暖冬の今季、坂道に縄が張られることはなかっただろうが、あのころ地域の人たちに見守られていたんだとしみじみ思う。来年は母校でも閉校式が開かれるだろうか。少子化が進む中で仕方のないことかもしれないが、母校がなくなるのはなんとも寂しい。(豊)

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